清水理史の「イニシャルB」
USBストレージをWi-Fi化してスマホから活用
アクト・ツー「iUSBport Hyper Drive」
(2013/7/2 06:00)
アクト・ツーから発売された「iUSBport Hyper Drive」は、USBメモリやUSB HDDなどを無線LAN経由でアクセス可能にするバッテリー内蔵のポータブルデバイスサーバーだ。HTTP/SMB/FTP/DLNAをサポートし、スマートフォンやPCから使えるポータブルNASとしても使える製品となっている。
外出先でのデータ共有に
USBメモリに保存した写真やプレゼン資料をミーティングの場で、複数の人と共有したい……。
そんな用途に便利な製品が、アクト・ツーから発売された「iUSBport Hyper Drive(以下iUSBport)」だ。
最近、ちらほらと見かけるようになってきたポータブルタイプのデバイスサーバーで、USBメモリやUSBハードディスクなど、USBマスストレージに対応したデバイスを接続することで、無線LAN経由でPCやスマートフォン、タブレットからデータを参照することができる。
同様の製品はいろいろなメーカーから発売されているが、SDカードスロットなどは搭載せず、USB機器のみの対応となっている点、価格が通常価格で1万2800円(現在は特別価格で9800円)と同ジャンルの製品に比べて若干高い点が気になるが、専用アプリ不要で利用できる点、汎用的なFTPやSMBをサポートしている点などが特徴の製品だ。
もう少しダイエットできそう
まずは、外観からチェックしていこう。本体サイズは、幅75×奥行き58×高さ22mmとなっており、重量は109gとなっている。サイズとしては、手のひらサイズと言っても差し支えないが、実物を見ると、やはり22mmという厚さが若干気になるところだ。
本製品は、2600mAhのバッテリーが内蔵されているため、放熱性などを考えても、これくらいのサイズであれば十分に実用的ではあるが、競合製品の中には同程度のサイズで倍近いバッテリーを内蔵した製品も存在する。持ち運ぶのに何の苦も無いので、実用性を考えれば十分ではあるが、半分とは言わないまでも、もう5mmほど厚さがダイエットしてほしかった印象だ。
デザインも、若干、くどい印象がある。Hyperjuiceなど、Mac用の外部バッテリーで有名な同社の「Hyper」シリーズとなるものの、表面には液晶ディスプレイに重なるようにUSBポートのマークがプリントされ、Wi-Fi接続であることを表す電波を模したアイコンも大きく表示される。
幅広いユーザー層に、どのような製品であるかをわかりやすく訴求したいと思われるが、正直、あまりスタイリッシュとは言えない。特に、Apple製品を主に所有しているユーザー層には、受け入れられにくいデザインなのではないかと感じてしまう。
もちろん、好みの問題なので、一概には言えないが、サイズとデザインは、もう少し、工夫しても良さそうだ。
インターフェイスは、3つの側面に、それぞれ電源ポート(USB給電ケーブル付属)、ストレージ接続用のUSBポート、電源ボタンが配置されており、正面には起動プロセスや稼働中のIPアドレスなどを表示する小型のディスプレイが表示されている。
冒頭で触れた通り、SDカードなどのメディアを装着するためのスロットは用意されていないが、USBポートにアダプタなどを装着すれば読み書きは可能となる。基本的にはUSBメモリやUSB HDD用と割り切った使い方が必要だろう。
接続するストレージに注意
使い方は、非常に簡単だ。初回のみ、ファームウェアを最新版にアップデートする必要があるものの(USBストレージにファームウェアファイルを保存して起動時にアップデートを実行)、次回以降は電源ボタンを押して本体を起動し、USBメモリやUSBハードディスクを接続すればいい。
標準では、iUSBportそのものがアクセスポイントとして動作するアドホックモードで動作する。このため、PCやスマートフォンから、「iUSBport」というSSIDを指定して無線LANで接続、端末からウェブブラウザーを起動して、「http://usb」にアクセスすれば、接続したストレージにアクセスできる。
ウェブブラウザー経由の場合、ファイルの参照(表示できない場合はダウンロード)しかできないが、ウェブブラウザーのみでアクセスできるため非常に手軽だ。
これなら、会議やプレゼンの場で、その場の参加者にSSIDとアクセス方法を公開し、資料を提供することも気軽にできる。まさに、専用アプリを使わない方式の最大のメリットと言えるだろう。
ただし、利用するにはいくつか注意点がある。
まず、前述したように標準では無線LANのセキュリティが無効になっている点だ。会議の席などでデータを共有するには都合が良いが、その一方で、誰でもアクセスすることができてしまうため、USBストレージのデータが無条件で公開されてしまうことになる。
ウェブブラウザーで「http://usb」にアクセス後、設定ボタンから暗号キーなどを設定できるので、個人的にはパスワードを設定して保護しておこう。
また、アドホックモードの場合、iUSBportが接続先となるため、当然、クライアントからインターネットに接続できなくなってしまう。本製品には、インフラストラクチャモードと呼ばれる既存の無線LANに接続するモードも搭載されているので、設定ページから、接続先のアクセスポイントを選び、iUSBportを既存の無線LANネットワークのクライアントの1つとして接続しておくといいだろう。
続いて注意したいのがウェブブラウザーだ。iOSやAndroidを搭載したスマートフォン、MacOS Xからは問題なくアクセスできるが、Windows用のウェブブラウザー(IE10、Chrome)などからは、ページを正常に表示することができなかった。詳しくは後述するが、PCからはSMBでもアクセスできるため、基本的には、ウェブブラウザーからのアクセスはスマートフォン、タブレット用と割り切った方がいいだろう。
また、これはレアケースだと思われるが、USB 3.0のバスパワーのHDDを接続した際、供給電力が不足してしまったためか、iUSBportの再起動が繰り返されるなどの現象が見られた。USBメモリはほぼ問題ないと思われるが、USBハードディスクの場合は、接続する機器に注意した方がよさそうだ。
このほか、PTPにも対応しており、デジタルカメラを接続することで、撮影した写真を同様にウェブブラウザーから参照することができるが、iOSを利用した場合は写真を表示後、左右のフリック操作で表示する写真を次々に切替えることができるが、Androidではフリック操作に対応しておらず、一覧に戻って写真を選び直す必要があった(表示も若干遅い印象がある)。
もともと、Apple製品向けの周辺機器に強いメーカーとなるため、本製品も基本的にiOSやMacOS Xからの利用に最適化されている印象だ。
SMBやFTPでアクセス可能
このように、ウェブブラウザーでの利用は、ファイルの参照に限られるうえ、機種によって使い勝手に差が出てしまう。このため、WindowsやAndroidでは、別の方法でアクセスした方が効率的だ。
本製品は、ウェブブラウザーからのHTTPアクセスに加えて、SMBとFTP、DLNA(UPnP)にも対応しているので、Windowsからであればエクスプローラーから「\\IPアドレス」と指定してアクセスすることで、共有フォルダ経由で、接続したUSBストレージにアクセスできる。
ウェブブラウザーでは参照とダウンロードしかできなかったが、SMBであればファイルのコピー(アップロード)やファイルのリネームなども自由自在となる。通常はこの方法を利用するといいだろう。
一方、Andoroidの場合は、FTPを利用するのが効率的だ。「ESファイルエクスプローラー」など、FTPに対応したアプリを利用し、匿名のAnonymousでアクセスすればファイルの読み書きが可能となる。もちろん、FTPはiOSからも利用可能なため、ファイルをアップロードしたい場合はFTPクライアントアプリを利用するといいだろう。
このほか、ネットワーク対応のテレビなどからは、DLNAクライアント機能を利用してアクセスすることができる。最新のファームウェアにアップデートされていれば、自動的にDLNAサーバー機能が有効になり、DLNAクライアントからストレージに保存された写真や音楽、映像などを再生することができる。当然、スマートフォンでもTwonky BeamなどのDLNAクライアントを利用すれば、同様にメディアにアクセス可能だ。
Dropbox連携もできるはずだが……
このように、複数のアクセス方法が提供されているiUSBportだが、海外の製品情報サイトなどを見ると、Dropboxとの連携機能も搭載されているとの記述があり、USBストレージ上に「Dropbox」フォルダーを作成後、インフラストラクチャモードでiUSBportを動作させ、設定画面からDropboxのアカウントを登録することで、自動的にファイルを同期することができるとされている。
しかしながら、今回使用した製品(ファームウェアv28)では、機能が実装されていないのか、設定用の「App」という表記がウェブブラウザー上に表示されず、この機能を試すことはできなかった。クラウドストレージとの連携ができれば、その使い方の幅も広がりそうなので、残念なところだ。
望むのはプライベートとパブリックの使い分け
以上、アクト・ツーから発売されたWi-Fiポータブルデバイスサーバー「iUSBport Hyper Drive」を実際に使ってみたが、ウェブブラウザーで気軽に使えるだけでなく、さまざまな接続方式に対応している点がメリットの製品と言えそうだ。
ただし、個人的に、この手の製品に望みたいのは、以前から主張している通り、「プライベートとパブリックの使い分けを可能にすること」だ。
USBメモリに、公開したいデータとそうでないプライベートなデータがフォルダごとに分けて保存されていたとしても、本製品ではすべてが公開されてしまう。
たとえば、フォルダーにパスワードを設定できるようにすることで、公開するフォルダーと個人的なデータを保存するフォルダーを使い分けられるようにすることは、さほど難しくないはずなので、より一層の工夫が欲しいところだ。今後の機能アップに期待することにしよう。