テレワークグッズ・ミニレビュー
第134回
がんの手術で考えた「家族に残す、もしもの場合に備えたデータバックアップ」について
2025年7月4日 11:35
昨年、早期のがんが見つかり、手術をした。
幸いにも早い段階で発見でき、手術も成功し、今のところ経過も良好だ。それでも麻酔のリスクや10年後の生存率のような説明を受けたら、低い確率の方に行った場合にどうするか? といったことも考えずにはいられない。今回の手術にあたって、少々身辺整理的なこともした。
デジタル関係では、サブスクリプションを見直し、いくつか解約した。ガジェット類は居住空間確保のためかなり前に大量処分しており、ハードウェアで気にするべき物は、毎日使うPC関係とスマートフォン以外にはほぼない。
バックアップについて考えることを忘れて久しい
問題はデータだ。自分にもしもの事があった場合に備えて、バックアップしておくべきデータは何か? とあらためて考えてみる。仕事関係は、今どきの会社員の気楽なところで、全て会社のストレージにあり、特に考える必要はない。
個人的なデータの中でも、連絡先やらメールやらは、OSが自動でクラウドに保存してくれる。10年以上前には「スマホ/携帯電話が壊れて連絡先が全部消えてしまった」と嘆く人もいた気がしたが、今どきはもはや、完全に消す方が難しいぐらいかもしれない。
と、見ていくと、私たちが意識的に「バックアップ」という行為をしなければならない場面は、徐々に減ってきている。それに連れて、バックアップについて考える機会も失われつつあるのかもしれない。
あまりにもバックアップについて考えなかったため、自動的には行われない大切なデータのバックアップを、もう5年ほどアップデートしていなかったことに気付いた。撮り貯めた写真である。
写真はもともと趣味として時々撮っていたが、結婚する前後から、写真を撮る機会がさらに増えた。さらに、子どもが生まれてからは激増した。ただ、男の子はどの家庭でもそんな感じだと思うが、小学校高学年ぐらいになるとカメラを向けても“ 変顔”しかしてこなくなるし、中学校に入ったあたりからは、写真を撮る機会が激減した。
ちょうどその頃に自宅用のPCを買い替え、写真のバックアップを取り直したのが、5年ほど前だった。それ以降に撮った写真は少ないが、そういえばバックアップを更新するのを忘れてしまっていた。
写真は容量が大きいため、OSの標準のバックアップ機能を使うにしても容量が足りなくなり、何らかの方法で手間や費用をかけることになると思う。
私はこれまで、PCの内蔵HDDのほかに、内蔵用HDDをセットしてUSB接続できるHDDスタンド「裸族のお立ち台」を使って、内蔵用HDDにに写真を保存し、バックアップとしていた。が、それも押し入れの奥に押し込んで久しい……。
一般的な外付けHDDがそれなりに大きなサイズだった時代に、手軽さと省スペース性に惹かれて買った製品だが、今どきはコンパクトな外付けストレージが安く買えるし、これからも外部HDDを使うとしても、これを使い続ける必要はないだろう。
まず、バックアップのために必要になる容量を確認しておく。PCの内蔵HDDにある写真の容量を見てみると、500GBちょっとで、ファイル数は約10万8000点。RAW画像も一緒に保存している写真が多いので、撮影した点数としては約6~7万点といったところか。
写真のほかにバックアップしておきたい諸々のデータ(記念または記録として保存している文書、DVテープから持ってきた動画など)もある。こちらも合わせると、合計で約510GBになった。
「固定費不要」+「簡単」で、安定の外付けHDDを選択
これを、どのようにバックアップするのがいいか? 手軽さでいえばクラウドがいいが、固定費はかけたくない。私に何かあった後までサブスクリプションの支払いが続いてしまうのも心配だし、契約を継続するとしたら誰がどう引き継ぐか、やめるとしたらデータをどう引き上げるか、といった話になりそうだ。
なので、物理メディアにしよう。誰でも簡単に扱えるものがいい。結局はシンプルな外付けHDDがよさそうだ。説明するのを忘れてしまったとしても「PCにつなぐと中のデータが見られるヤツ」ぐらいは分かってくれるだろう。
USB Type-A接続のコンパクトな外付けHDDを使うことにして、バッファローの「HD-PCF2S2.0U3-BBA」(USB 3.1 Gen 1接続、容量2TB)を選んだ。容量的には1TBで足りるのだが、2000円ほどの差で倍の容量だったので、つい2TBを選んでしまった。
PCに接続して、データを一通りコピーして、特に問題はなくバックアップは完了。内蔵用HDDよりもコンパクトで、机の引き出しなどに入れておけるのがいい。何が入っているかが分かるようにラベルなど貼っておけばよりよいのだが、どうも「準備がよすぎる」のもなあ……という言い訳で、そこまではしていない(そのうちラベルシールを買ってこよう)。
1つで大丈夫か? 「3-2-1ルール」で考えてみる
これで1つバックアップはできたし、ひと安心、と思ったのが昨年の手術前のこと。だが、外付けHDD1台だけでは、いささか心もとない感もある。バックアップをどの程度用意すればヨシとするか? は悩ましい問題だ。
よく言われるバックアップの考え方に、「3-2-1ルール」というものがある。
- 3つのデータをコピーする(元データを含めて3つという説も、コピーを3つという説もある。ここでは欲張って後者の計算にしておく)
- 2種類のメディアにコピーする
- 1つは物理的に離れた場所にコピーする。
今回、外付けHDDにコピーしただけでは「1-1-0」しかない。ではどうするか? 外付けHDDに加えて、クラウドストレージを、無料の範囲で利用するのが簡単ではある。アカウント情報を残しておけば、もしもの場合にも家族にアクセスしてもらえる。
iCloudの「共有アルバム」を第2のバックアップにしたい
どのクラウドストレージ/写真共有サービスも、無料では利用できる容量や保存される画質に制限があり、完全なバックアップはできない。だが、制限に収まる範囲の点数を厳選したうえで、完全なバックアップではなく「大事な写真が失われないように残しておく」のが目的だと考えれば、それは達成できる。3-2-1ルールの計算にあてはめて、「2-2-1」だと言い張れないこともない。写真を選ぶ手間はかかるが。
実は、これまでにもあちこちのクラウドストレージや写真共有サービスを使っていたのだが、仕様変更を受けて継続利用を考え直すことになったりして、どれも長く使い続けられなかった。頻繁に写真を見たり共有したりするのでなく、純粋なバックアップだとすると、クラウドストレージはどうしても割高に感じられてしまう、ということもある。
そうした中でも、過去にAmazon Prime Photosにはけっこう多くの写真を保存していた。どれくらいだったかな、と久しぶりに見てみたら、346GBも保存したままの状態だった……。こういう状態だと、あらためてアップロードするわけにもいかない。
というのも、私は現在Amazonプライムを解約している。そして、Amazon Photosは、ストレージの上限(無料アカウントは5GB)を超過した状態で180日が経過したら超過分に相当するファイルを新しい順に削除する、その際には事前通知を行う、と「ファイル保存ポリシー」で表明している。超過分を削除するときには連絡をいただけるということで、ひとまずはこのままにしておこう。
ここで1つ思い出したのが、iCloudの「共有アルバム」だ。選んだ写真を共有アルバムに保存して、家族と共有すれば、バックアップにもなる、というか、いつでも写真を見られるようにできる。
iCloudの共有アルバムは、1つの共有アルバムあたり5000点の写真を保存できる。1ユーザーあたり200の共有アルバムを持つことができ、容量はユーザーが契約しているiCloudのストレージ容量とは別となる(カウントされない)のが有難い。
なお、アップロードできる点数については1時間あたり1000点、1日あたり1万点という制限もある。画質面では、長辺最大2048ピクセルに制限される。動画は、720pで最大15分とされている。
ということで、写真を選んで共有アルバムに少しずつ保存していこう、と思ったら、過去のイベントなどの際に作ったきり更新していない共有アルバムが複数あって、苦笑してしまった。過去にも共有アルバムでまめに写真を共有しようと思って、すっかり忘れていたのだろう。
心を入れ替えて、まずは既存の共有アルバムに、セレクトした写真を保存していこう……と、思うのだが、やはり、なかなか時間がかかる作業で、週末にちょっとずつ進めている状態だ。写真はまとめて保存しておくだけでなく、まめな整理が大切だと実感している。
子どもの写真をクラウド保存するなら「みてね」が最良かもしれない
ストレージを売りにしたサービスではないし、私自身は現在使っていないのだが、子どもの写真を保存することを考えるなら、株式会社MIXIの家族アルバムアプリ「みてね」が、現在はベストの選択になるかもしれない。
同サービスは2015年スタートで、うちの子どもはすでに大きくなっていて、そのタイミングで利用しようと思うことはなかった。だが、無料アカウントでも容量無制限で写真をアップロードできるし(画質は多少低下する場合があるようだ。「若干リサイズしています」との説明がされている)、簡単に家族や親族間で共有できる。
スマートフォン中心のサービスであり、PCから写真をアップロードするには、有料の「みてねプレミアム」に契約する必要がある。プレミアムでは、このほか動画のアップロード制限(画質や長さ)が緩和されるなどのメリットもあるそうだ。
そして、家族での利用が想定されているためか、同じアルバムを共有している人たちの間で、簡単に支払者を変更できるシステムになっている。有料サービスを利用して「何かあった後が面倒くさそう」という心配も、それなら軽減される。
ただ、すでに子どもが大きいのに「みてね」を使っていいのか……? という感じも(サービスのコンセプト的に問題はないだろうと思いつつも)してしまう。本当に利用するかどうかは、家族とも話して検討したい。
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