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人気のiPhoneアプリ「写真バックアップ」はなぜできた? 「無料」「超簡単」にこだわったバッファローの中の人に聞いた
- 提供:
- 株式会社バッファロー
2025年2月28日 06:05
バッファローが提供している無料アプリ、その名も「写真バックアップ」をご存知だろうか。シンプルで分かりやすい名前のこのアプリだが、その価値は実際に使い始めないとなかなか分かりにくいかもしれない。
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iPhoneに接続したストレージデバイスに、iPhoneで撮影した写真やビデオが完全な形でバックアップされるというもの。この“完全な形”というところが極めて重要だ。
iPhoneで撮影される写真やビデオには、さまざまな情報が付与されている。Live Photoはその代表的な要素だが、他にもたくさんある。
最近のiPhoneであれば空間ビデオや空間写真を撮影することが可能だし、ビデオ撮影時には通常のステレオ音声以外にも、サラウンド音声を含んだ音声トラックを記録することができる。さらに何気なく使っているポートレート写真。この機能は以前から存在しているが、ポートレートモードで撮影した写真データには画素ごとに距離情報が記録されている。それによって後からぼかし加減をコントロールすることができるのだ。
iPhoneの写真をバックアップする手段はこれまでにもいろいろとあったが、多くの場合、そうしたiPhoneならではの情報が欠落した形で、写真及び動画として最低限の機能を有する状態でしかバックアップされていない。
こうしたことが問題にならない理由は、バックアップから復元する状況、すなわち大切な写真が失われた経験があまりないからと言うこともあるだろう。しかし、いざバックアップから復元を行わなければならないとなったときに、多くの人はその事実に気がつくはずだ。
そして重要なことは、バッファローの「写真バックアップ」には、そうした情報の欠落がない。
本物のバックアップ
導入部がとても長くなってしまったが、言い換えるならば、これまでのiPhone写真のバックアップソリューションは、どれもバックアップではなく“写真のエクスポート”だったということだ。
「標準的な写真データとしての書き出し」と言ってもいい。
これに対してバッファローが開発したアプリ「写真バックアップ」は、正しく元通りに情報を復元できる。しかも繰り返すが、このアプリは無料だ。
機能紹介や使い方などは、ケータイ Watchの記事で紹介しているので、そちらを参照していただきたい。ここではなぜそのようなアプリが実現できたのか、またなぜこのアプリが無料で配布されているのかについて、話を進めることにしよう。
USB Type-C端子の装備が完全なバックアップを可能に
スマートフォンの進化で誰もが美しい写真や動画を簡単に撮影できるようになった一方、撮影枚数はうなぎのぼりに増えていき、その膨大な写真をどこに保存するかという問題を多くの方が抱えているのではないだろうか。
iPhoneの場合、iCloudを用いれば完全なバックアップを取ることができる。情報の欠落は一切なく、Apple製品の間で写真は完全にシームレスに連携される。どこにその写真を置いているかさえ意識をする事は無い。
しかし、1つだけ意識することがある。それは写真が増えていくに従い、より高価な月額料金のプランに乗り換えていかなければならないことだ。さらにAppleのサービスは、円ドルレートの変化によって価格が改定されることもある。
いつまでも、月額料金が上がることも懸念しながら払い続けなければ、大切な思い出を維持していくことができない。このストレスは決して小さなものとは言えない。
もちろんiPhoneユーザーが写真をバックアップする選択肢はあった。
しかし、それはクラウドストレージを提供しているサービス事業者が無料で提供しているもので、いずれにせよ、クラウド上のストレージ容量を購入しておかなければバックアップもできなければ、支払いを続けなければ維持することもできない。
Lightning端子を通じたバックアップ製品はデータ転送の速度も遅く、その上に完全なバックアップにならない。これではバックアップを取れないも同然だ。
株式会社バッファローのデータストレージ開発部でソフトウェアの開発課長を務める石井 俊氏によれば、LightningコネクターからUSB Type-Cに変わったiPhone 15が出たとき、iPhoneがUSB Type-Cになれば、「クラウドバックアップが主流だったiPhoneの写真が、物理ストレージに簡単にバックアップできるようになるかも?」というアイデアが持ち上がったという。
USB Type-Cポートを持ったiPhoneであれば、USBストレージを直接iPhoneに接続することで、アプリが取得可能なiPhoneのストレージ内の完全な情報を、シンプルに外部記憶媒体に収めることができそうだ。そして、実際にテストしてみると、情報を完全に維持したままのデータの保存が可能だった。
より多くの人にこの価値を届けたい
一方で石井氏は「アイデアが生まれた瞬間はまだ漠然としたものでした。しかしどこまでニーズがあるのかまでは確信を持てなかった」とも振り返る。
技術的には大きな進歩でも、ユーザー価値としてどこまで訴求できるのか。
コンシューママーケティング部 ストレージマーケティング課の根本将幸氏によれば、バッファローのロングセラーのヒット商品「おもいでばこ」のユーザーの声がヒントになったという。
「おもいでばこ」とは、同じ家に集う家族がそれぞれに思い出をデバイスに詰め込むことで、みんなで思い出を共有することができる製品だ。それはとても大切なものだが、家族みんなが使う以上、可能な限りシンプルな製品にしない限り使ってもらうことが難しい。
また、バックアップをする過程で必要な情報が失われてしまっては、そこに納得感を与えるのは難しい。技術的に例えば難しかったとしても、元通りにならなければ、なぜ元通りにならなかったのだと悩むに違いない。
iPhoneアプリでもそれは同様で、できるだけシンプルに操作できるアプリにする必要があると考えた。
一部に有料の機能制限を設けることで収益化を図ることもできるが、それだと操作が複雑になってしまう。誰もが、より簡単で確実なバックアップ方法を求めている。無料にすることで操作をシンプルにしつつ、完全な形でのバックアップを実現できるアプリとして、ユーザーに届けるべきだ。
無料にすれば、より多くの人たちにアプリを使ってもらえる。その多くのユーザーからのフィードバックをアプリに反映させられれば、ライバルには真似できない、より良い優れたアプリに育てられる。それは、バッファローというブランドを育てる上でも重要なことだ。
安全にデータを守って欲しいからこそ、このアプリを無料で提供し、最終的にはUSBストレージを使ったバックアップの市場全体が成長する。その流れの中で、バッファローの製品も選ばれるなら、それでいいじゃないか、と決断した。
やるからには“最高品質”のバックアップを
ここでは、シンプルにバックアップと復元といったアングルで紹介をしているが、実はバックアップという言葉を使う場合は、もっと極めて高い信頼性を求められる。失ってはいけない。情報を二重化し、失われないようにすることこそが、バックアップの本質だからだ。
バッファローはHDDやNASなどのストレージ製品の開発を通じて、データが失われないようにするためのノウハウを積み重ねてきた。
例えばバックアップの最中にUSBコネクターを抜かれてしまっても、データが失われることがないよう配慮しなければならない。本誌読者であればそんなことはしないだろうが、どんな人が使っても大丈夫なようにという考えだ。いくらユーザーのエラーであろうとも、それが可能になっているのであれば、やってしまう事は避けられない。
バックアップそのものが、利用者のエラーによって壊れる事態は避けなければならない。そうしたノウハウを持つことが、ユーザーの困りごとを解決し、さらにその先にブランドのファンを呼び起こす。
アプリのインターフェースについても、かなりこだわっている。どんな人が触っても迷わないものにするためにだ。特に最初に設定するバックアップ先の選択では、iOS側の画面に遷移して行う必要があるため、アプリ側で管理ができない。そこで、遷移前の画面で詳しく説明を加えるとともに、もし分からなくなったら「キャンセル」をタップすれば、説明画面に戻るようにした。さらに明らかに間違えて設定してしまった場合にも、迷わず再設定できるように設計するなど工夫をしている。
リリース前はこの箇所でユーザーが引っかからないかが一番不安だったというが、彼らの作り込みが功を奏したのか、実際にはほとんど問い合わせが来ることもなかったと言う。
未来への投資
アプリがリリースされると、わずか3週間で1万DLを突破、さらに3カ月を待たずして3万DLを突破。アプリの評価も高く、多くのユーザーから感謝の声が寄せられたという。
「ユーザーは何に困っているのか?」
自分たち自身もスマホユーザー。そんな中で開発チーム自身が、本当に欲しいものを作り込んだ結果とも言えるが、視線はすでに未来へと向けられていた。
実はiPhone 15がUSB Type-Cに対応した後にも、あまりUSB Type-Cにメモリを接続して使うユーザーの動向は観測できなかったそうだ。
しかしこのアプリをリリースすると、同社のポータブルSSDの販売動向に変化が起きた。それまではPCで使うことを前提とした大容量モデルが主流だったのに対し、250GBといった小容量モデルの売れ方に変化が現われた。大切な写真をちょっと保存しておきたい。そんなニーズを満たす小容量のポータブルSSDが売れ始めたのだ。
さらに家電量販店などでも、このアプリをきっかけに同社のポータブルSSDへの引き合いが増えたという。確かにiPhoneの買い換えと同時にバックアップ環境を提案するというのは、販売店にとっても新しい市場になりそうだ。
バッファローは「iPhoneにUSBストレージを挿して使う」という新しい常識を根付かせることが、将来のバッファローのビジネスの下支えになると信じているという。
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