第52回:デスクトップPCもワイヤレス化したい!
エレコム LD-WL5411/PCIを試す
IEEE 802.11gを中心に新製品が続々と登場しつつある無線LAN市場。そんな中、デスクトップ向けとなるPCIバス用の無線LANアダプタ「LD-WL5411/PCI」がエレコムから登場した。デスクトップPCを無線化したいと考えているユーザーの注目が集まる製品だ。早速、テストしてみた。
●デスクトップ=有線 でいいのか?
LD-WL5411/PCI |
インテルから発表されたCentrinoテクノロジーに代表されるように、無線LANの主な市場はノートPCとされることが多い。実際、無線LAN機能を内蔵したノートPCは多数存在するのに、無線LAN機能を搭載したデスクトップPCというのはあまり見かけない。また、周辺機器メーカーから発売される無線LAN製品も、そのほとんどがPCカードタイプとなりつつあり、USB接続の無線LANアダプタやイーサネット接続型の無線LANアダプタもIEEE 802.11aやIEEE 802.11gに対応した高速タイプ製品が未だ登場しないなど、主流から外れた印象だ。
もちろん、最近のデスクトップPCは標準でPCカードスロットを搭載しているため、無線LANカードを装着することも不可能ではない。しかし、PCカードスロットが1つしか装備されないようなケースでは、ここを無線LANカードで占有されるのは困るというケースもあるだろう。
確かに、デスクトップPCの場合、一般的には有線でLANに参加させることの方が圧倒的に多い。しかし、家庭環境によってはデスクトップPCでもワイヤレス化したいというケースも存在するうえ、オフィスなどでもレイアウト変更時の手間やコストを抑えるためにデスクトップPCもワイヤレス化をしたいというニーズも少なくない。「デスクトップ=有線」というのは、多くのケースにあてはまる概念ではあるが、その例に含まれないケースも少なからず存在するわけだ。
このようなデスクトップPCのワイヤレス化のひとつの答えとして登場したのが、今回、エレコムから発売された「LD-WL5411/PCI」だ。IEEE 802.11aにも対応したPCIバス用の無線LANアダプタとなっており、デスクトップPCでも手軽に高速無線LAN化することができる。
PCIバスに装着することで、デスクトップPCも手軽にワイヤレス化することが可能 |
●デュアルバンドに対応
LD-WL5411/PCIのようなPCIバス用の無線LANアダプタは、これまでにもいくつか製品が存在した。しかし、この製品がこれまでの製品と決定的に異なるのは、デュアルバンドに対応している点だ。製品名からも分かるとおり、最大54Mbpsの通信が可能なIEEE 802.11aと最大11Mbpsの通信が可能なIEEE 802.11bの両方の規格に準拠している。
デュアルバンドと言っても、製品によっては切替え式になっており、ユーティリティなどであらかじめどちらか片方を選択しなければならないケースもあるが、この製品は2.4GHz帯と5.2GHz帯の両方をシームレスに動作させることが可能となっている(同時通信は不可能。あくまでも切替えがシームレスという意味)。実際、IEEE 802.11gとIEEE 802.11aの両方のアクセスポイントが存在する環境で利用してみたが、クライアントからは両方のアクセスポイントを同時に発見できた。
また、付属のユーティリティを利用することで、接続するアクセスポイントに優先順位を設定することも可能となっており、IEEE 802.11aとIEEE 802.11bのどちらに優先的に接続するかも設定可能だ。試しに、IEEE 802.11aのアクセスポイントの優先順位を高く、IEEE 802.11bのアクセスポイントの優先順位を低く設定し、動作を検証してみた。この設定の場合、普段は優先順位が高いIEEE 802.11aで接続されることになるが、この状態でIEEE 802.11aのアクセスポイントの電源をOFFにすると、自動的にIEEE 802.11bのアクセスポイントへと接続を切替えることができた。このあたりの動作のスムーズさには感心させられる。
付属のユーティリティを利用することで、アクセスポイントの優先順位などを設定可能。ただし、手動での接続切替えには未対応 |
しかしながら、この機能が実用的かというと疑問も多い。ノートPCのように持ち運ぶことが多ければ、アクセスポイントを選択できるメリットも活きてくるが、デスクトップPCを持ち運ぶことはほとんどない。つまり、事実上、一度アクセスポイントに接続してしまえば、そのまま接続し続けるという使い方が多いということになる。実際、複数のアクセスポイントを使い分けるという使い方をすることは、まずないだろう。どちらかというと、IEEE 802.11bで構築しているネットワークを、あとからIEEE 802.11aに変更した場合など、規格の移行時のメリットを享受できるにすぎない。
また、ユーティリティに多少のクセがあり、接続するアクセスポイントを手動で選択できない仕様になっている。このため、両方のアクセスポイントが存在する環境で、IEEE 802.11aからIEEE 802.11bに切替えたり、逆にIEEE 802.11bからIEEE 802.11aに切替えるというように、能動的にアクセスポイントを切替えるような使い方はできない。あくまでもアクセスポイントが通信不能になるなどの受動的な要因により、自動的にアクセスポイントが切り替わるという機能でしかない点には注意が必要だろう。
個人的には、せっかくのデュアルバンドなのだから、電波状態の良い方を自動的に選択して接続するなどの工夫が欲しいと感じるころだが、このような切替えは技術的に難しいのかもしれない。将来的に、電波状態などを関知して接続を切替えるような製品の登場を望みたいところだ。
●有線並みのパフォーマンスは期待できない
パフォーマンスに関しては、一般的なIEEE 802.11aとほぼ同レベルだ。テストとして、有線LAN、PCカードタイプの無線LANカード(NECアクセステクニカ製)と速度を比較してみたが、以下の表のように20Mbpsを少し下回る程度のパフォーマンスを実現できた。速度的には、やはり有線LANには到底かなわないが、無線LANカードとの比較ではほぼ互角といったところと言えそうだ。
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※アクセスポイントにはNECアクセステクニカ製WL54APを使用 ※インターネット接続にはNTT-ME BA8000PROを使用 ※サーバーにはPentiumIII 733MHz RAM512MBのPCを、クライアントにはPentium4 1.8GHz RAM512MBのPCを利用 ※FTPでは、サーバー側にIISのFTPサーバー、クライアント側にコマンドプロンプトのFTPクライアントを利用 |
この結果を見る限りでは、有線LANからの置き換えは難しいと感じるかもしれないが、実際に利用してみると、それほどストレスは感じない。さすがに100MBクラスのファイルなどを転送すれば、通信速度の遅さが気になるが、インターネット接続や少量のファイル転送であれば、実質的な差は体感できない。有線LANの置き換えとして検討しても悪くはない印象だ。
なお、今回は、持ち運びが難しいデスクトップPCに装着したため、場所を変更しながら速度を計測することができず、電波の到達範囲についてはテストできなかったことをお断りしておく。ただし、本製品はアンテナが外付けとなるため、電波状態に関してはおおむね良好な印象であった。PCカードタイプの無線LANカードの場合、PCの設置場所(机の下など)によっては、電波が届きにくいことがあるが、本製品ではアンテナの場所を工夫することなどで、電波を届きやすくすることができる。環境によっては、PCカードタイプの無線LANカードを使うよりも、良好な電波状態で利用することが可能だろう。
外付けアンテナが利用可能なため、良好な電波状態で利用することが可能。ただし、アンテナはカードに直付けとなるため、スロットの隙間からアンテナを外に出すようにして装着する必要がある |
●デスクトップPC向け製品としては悪くない選択
このように、LD-WL5411/PCIは、デスクトップPC向けとしては数少ないデュアルバンド対応製品であり、パフォーマンスや使いやすさなども一定のレベルを備えた製品だと言うことができる。誰にでも必要な製品では決してないが、デスクトップPCをワイヤレス化したいという場合には、悪くはない選択肢と言えるだろう。
また、デュアルバンドという点を除いても、製品的な完成度は高いと言える。今回は電波状態のテストができなかったが、カード本体から独立したダイポールアンテナを採用し、電波状態が最良の状態にアンテナ角度や位置の調整ができるメリットは大きい。IEEE 802.11b、もしくはIEEE 802.11aのどちらかの環境でのみ使いたいという場合でも、この製品を選ぶメリットはありそうだ。
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2003/4/22 11:16
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