第223回:大容量、手軽、そして何より安心感が違うRAID5対応のNAS
アイ・オー・データ機器「LANDISK Tera HDL-GT1.0」



 RAID5対応、カートリッジ式HDDの採用、ホットスワップ対応などなど、容量だけでなく高い安全性を実現したアイ・オー・データ機器のNAS「HDL-GT1.0」。その実力を検証した。





導入から数年が経過したNAS環境をリニューアル

LANDISK Tera HDL-GT1.0。メーカー参考価格は111,615円

 筆者は、これまで2台のNASを併用してきた。1台は文書やデジタルカメラで撮影した写真、ビデオカメラから取り込んだ映像など、どのPCからでもアクセスする必要がある共有データの保存用。もう1台は、前述したメインのNASのデータ、およびPCのデータをバックアップするための専用NASだ。

 NASを利用し始めて久しいが、かつて1台のNASだけを利用していたとき、長年連続稼働させてきたことが仇となって故障でデータが失われたことがあった。このとき以来、2台のNASを併用し、データを常にバックアップするようになったというわけだ。

 現状の構成もそろそろ数年を経過し、HDDの耐久性などを考えると、そろそろNASのリニューアルが必要になってきたのだが、その選択がなかなか難しい。今まで通り、NASを2台利用してバックアップで運用するというのも1つの方法なのだが、最近になってRAID対応のNASが多数登場しつつある。容量の大きさも魅力だが、RAID以外にもさまざまな耐障害性を備えており、データを失う恐ろしさを体験してしまった身としては非常に魅力的というわけだ。

 というわけで新しいNASの購入にあたり、手軽さや安心感といった観点で悩んだ結果、、最終的に選んだのが、今回紹介するアイ・オー・データ機器の「HDL-GT1.0」だ。


本体前面本体背面




RAID5、ホットスワップ、アクティブリペアと多彩な機能

 HDL-GT1.0の特徴は、安全性、信頼性、メンテナンス性と、大切なデータを保護するための機能が多数搭載されている点だ。

 まずはRAIDだが、HDL-GT1.0には250GBのハードディスクが4台搭載されており、これによってRAID 0(ストライピング)、RAID 1+0(ミラーストライピング)、RAID 5(パリティ付きストライピング)を構成できる。

 標準ではRAID 5の構成となっており、パリティでハードディスク1台分の容量を消費するため、合計750GBの容量を利用可能となっている。安全性を考えると、最大2台のハードディスクの故障に耐えうるRAID 1+0(500GB)の選択も悪くはないが、容量を考えるとRAID 5のバランスがもっとも良いだろう。


RAID 0/RAID 1+0/RAID 5に対応したHDL-GT1.0。標準ではRAID 5として構成されており、実質的に使える容量は750GB

 通常のNASの場合、長年使い続けると、どうしても故障したときの惨劇が頭をよぎる。これに対して、RAID 5のHDL-GT1.0の場合、万が一、1台のハードディスクが故障しても、そのまま運用を続けられる。この安心感はかなり大きい。これまで、なくしたら困るデータは、PCのローカルとNASの両方に保存することが多かったが、最近では安心感からか、すっかりNASにしか保存しなくなった。

 しかも、HDL-GT1.0の場合、万が一ハードディスクが故障した場合でも素早く復旧させることが可能となっている。内蔵のハードディスクはカートリッジ式で、ロックを解除して手前に引くだけで簡単に取り外しが可能。ホットスワップに対応しており、NASの運用中でもハードディスクを取り外して、交換できる。


カートリッジ式のハードディスクはホットスワップ対応で起動中でも取り外しが可能となっている

 試しに、正常な状態で稼働しているHDL-GT1.0のハードディスクを電源ONのまま抜いてみたが、何の問題もなくPCから共有フォルダにアクセスし、ファイルを参照できた。引き抜いたハードディスクも、電源ONのまま戻すことが可能で、装着後、RAIDのリビルドが自動的に開始される(ただし、これには時間がかかるので、緊急時以外、試しにやるのはあまりおすすめしない)。

 このほかにもアクティブリペア機能により、バックグラウンドでディスク全体のスキャンを実行。万が一、ディスクにエラーセクタを発見した場合は、正常なディスクのデータを利用してエラーセクタ部分を局所的に自動修復できる。


通常のRAID 5の場合、局所的なディスクエラーでも、ハードディスク全体の修復が必要になる場合があるが、HDL-GT1.0ならアクティブリペア機能によって、短時間かつ自動的にエラーも修復できてしまうというわけだ。もちろん、eSATAやUSBで増設したハードディスクへのバックアップも自動でできる。


アクティブリペアやセルフバックアップなど、データの安全性を確保するための機能がいくつも搭載されている




必要十分な速度を実現

 気になる速度だが、HDBENCH、およびFTPにるテストを実施してみたが、FTPによる結果は文句なく高いものの、HDBENCHの結果が若干ふるわない結果となった。

製品名GETPUT
HDL-GT1.0340.28Mbps184.72Mbps
HS-D250GL117.49Mbps80.21Mbps
※クライアントにはAthlon64 X2 3800+/RAM1GB/HDD250GB/Windows XP SP2を使用
※JumboFrameはオフ(標準:1500)のままテスト
※20MBのZIPファイルを転送した際の平均速度を計測


 FTPではGETで340Mbps、PUTで184Mbpsと、ギガビットイーサネットの実力が十分に発揮されている。今回はJumbo Frameを無効のままテストしたが、Jumbo Frameを使えば転送するファイルによってはもう少しパフォーマンスが向上するだろう。

 一方、HDBENCHの結だが、さすがにUSB接続の外付けハードディスクにはかなわないものの、読み込みはかなり良好な結果が得られた。ただし、書き込みが若干遅く、おそらくRAID 5のパリティ作成が足を引っ張っていると考えられる。

 とはいえ、実際に利用している限り、ファイルの読み書きでストレスを感じることは一切ない。体感的には、必要十分なパフォーマンスと考えて良いだろう。





お気に入りは起動スケジュール機能

 このほか、eSATA、USBを含めて合計4台の外付けハートディスクを増設可能な点、DLNAガイドラインに対応している点など、かなり多機能な製品となっている。印象としては、企業向けのNAS、個人向けのNASの両方の機能の良いところ取りをした製品というところだ。

 中でも個人的に気に入っているのは省電力系の機能で、特に起動スケジュール機能は家庭での利用にお勧めだ。たとえば、筆者宅では、朝の7:30にNASを起動させ、夜の10:30に終了させる設定にしている。これ以外の時間も仕事をすることもあるのだが、主にNASのデータを利用するのは昼間の時間帯に限られているため、夜間はシャットダウンさせているわけだ。


起動スケジュール機能によって、起動時間と停止時間を指定できる。夜間などNASを使わない時間の電力を節約できる

 この機能を使う主な目的は省電力だが、実は音の問題も少なくない。HDL-GT1.0はファンの音などにも気が配られており、NASとしてはかなり静かな製品なのだが、さすがにハードディスクが4台搭載されているおかげで、その振動と音が気になる場合がある。

 振動に関しては、地震対策用のジェルシートなどを使うだけでもかなり解消させるが、ハードディスクのうなるような音はわずかながら聞こえてきてしまう。昼間は仕事をしているのでさほど気にならないが、夜は若干気になるので、シャットダウンさせているわけだ。

 もちろん、通常の省電力機能も併用しており、一定時間アクセスがないと自動的にハードディスクの回転を停止できる(標準では10分)。ただし、HDL-GT1.0では、電源への負荷を考慮して、起動時にハードディスクを1台ずつスピンアップさせていく。このため、4台のハードディスクが再度稼働し、アクセス可能になるまで若干の時間がかかる。これは、ほんの数秒ほどなのだが、急いでいる場合などに気になるので、筆者は無効にしている。


省電力設定でディスクの回転を停止することも可能。ただし、1台ずつスピンアップしていくため、起動に若干タイムラグが発生する




長期的に考えればお買い得

 以上、アイ・オー・データ機器のHDL-GT1.0を検証してみたが、NASにとって安心感は何者にも代え難い重要な要素だと考えると、個人的にはかなりお勧めできる製品と言える。特にSOHOや小規模オフィスなど、なくなっては困る大切なデータがある場合、そしてダウンタイムを少しでも短くする必要があるケースでは、非常に力強い味方となりそうだ。

 ネックは価格だが、容量に加えてハードディスクを交換しながら長期間利用できることを考えると、トータルのコストはさほど高くないと言える。この価格帯だとPCサーバーも検討の余地があるが、管理の手間などを考えるとNASの方が有利だろう。SOHO、小規模オフィスでの導入を検討する価値は非常に高いと感じた。

 Macからも文字化けなどなく利用でき、Windows Vistaからも問題なくアクセスできた。Windows Vistaではネットワーク認証のセキュリティ制限が厳しくなっているため(標準ではNTMLv2認証しか通さない)、古いNASなどではアクセスが拒否されることがあるのだが、こういった問題も発生しなかったことを付け加えておく。


関連情報

2006/12/5 10:54


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。