第246回:STB型映像配信サービスの新たな魅力となるか
テレビ画面でゲームが楽しめるオンデマンドTVの「ゲームサービス」



 Bフレッツ向けの多チャンネルサービスやビデオ配信サービスを提供するオンデマンドTVが、新たにゲームの配信サービスを開始した。ちょっとした合間に楽しめる手軽なゲームだが、双方向通信を活かしたランキング情報の提供など、なかなか面白い工夫がなされている。





差別化が難しくなってきた映像配信サービス

 IPTVといったキーワードの露出や、サービス契約件数の増加などといったニュースの配信などが目立つようになり、光ファイバを利用した映像配信サービスの認知度が高まってきた。

 これまでは光ファイバでテレビやビデオが見られるということをあまり理解してもらえないことが多かったのだが、最近では身近な親類、特に企業をリタイアした世代から、逆に「光ファイバにしてビデオも見られるようになった」などという話を自慢げに聞かされることがある。まだ一般的と言うほどではないが、FTTHの普及によって着実に映像配信サービスの認知度が向上しつつあると言えそうだ。

 しかしながら、その一方で、こんな質問もよくされるようになってきた。「OCNシアターとか、オンデマンドTVとか、スカパー!光とか、いろいろあるけど一体何が違うのか?」と。

 多チャンネル放送中心でビデオサービスが提供されない「スカパー!光」、逆にオンデマンドサービスのみの提供となる「OCNシアター」、さらにPC向けに無料配信サービスを提供している「ギャオプラス」くらいまでなら、その違いを説明してもわかってもらえるのだが、そのほかのサービスについては、正直なところあまり差がないため、説明する方もされる方もその違いが理解しにくい。

 サービスが開始された当初こそ、見られるビデオコンテンツに違いもあったのだが、最近ではどのサービスでもラインアップの拡充が進んでいる。同じような新作タイトルが同じようなタイミングで見られるようになってきており、その差があまりないという状況だ。





ハイビジョン対応、ゲームと次々に新サービスを展開するオンデマンドTV

 そんな中、オンデマンドTVから、他のサービスにはない独自サービスとして新たに提供が開始されたのが、今回取り上げる「ゲームサービス」だ。


オンデマンドTVのゲームサービス。テレビの画面で簡単なゲームを楽しめる

 オンデマンドTVでは、これまでにも使いやすさにこだわったユーザーインターフェイスの提供、H.264を利用したHD映像配信サービスのハイビジョンサービスの開始、さらにはスカパー!との提携によってリニューアルした「スカパー!SELECT チャンネルサービス」など、他の映像配信サービスとの差別化に積極的に取り組んできたが、今回のゲームサービスもその1つと言えるだろう。

 ゲームサービスは、文字通りゲームを提供するサービスだ。本来は配信された映像を受信するためのSTBとリモコンを利用して、家庭用のテレビの画面でゲームを楽しむことができる。多チャンネル(スカパー!)、ビデオオンデマンドに次ぐ、同社の3番目のサービスと言えるだろう。


オンデマンドTVのSTBとリモコン。ゲームサービスには専用のSTBなどは必要なく、既存のSTBとリモコンで楽しめる

 ゲームと言っても、テーブルゲームやパズルなどを中心としたカジュアルゲームで、いわゆる家庭用ゲーム機などで提供されるものとは方向性が大きく異なる。現状、提供されているのは、「リバーシ」、「ロジックパズル」、「ナンバープレイス」の3種類で、いずれもシンプルなゲームばかりだ。

 トップメニューから「ゲーム」を選ぶと、前述した3種類のゲームが表示される。そこからプレイしたいゲームを選択すれば、画面上にゲーム画面が表示され、リモコンを使ってゲームを楽しめる。


トップメニューに新たに追加された「ゲーム」という項目。ここをクリックするとゲームの選択画面が表示される




きちんとゲームとして楽しめる

 こういったカジュアルゲームは、実はネットワーク対応のテレビやケーブルテレビのSTBなどでも楽しめるのだが、オンデマンドTVのゲームサービスは完成度が高い。

 従来のテレビやSTB向けゲームは、HTMLで画面を描画し、ユーザーの入力によって画面を切り替えるという方法などもあり、レスポンスが悪かったり、描画が遅いといった欠点があった。

 これに対してオンデマンドTVのゲームサービスでは、リバーシでコマを置くと、はさまれた相手のコマがひっくり返るアニメーションが表示されるなど、凝っているとまでは言えないが、よりゲームらしい演出がなされている。レスポンスという点では、リモコンのボタンを押してから若干のタイムラグを感じるものの、HTMLベースのゲームほど遅くはない。


オンデマンドTVで提供されているナンバープレイス(左)とリバーシ(右)。リバーシではコマを置くと、はさまれたコマがアニメーションで反転する

 アクションゲームなどでは苦労するかもしれないが、現状提供されているようなテーブルゲームやパズルゲームの場合、次の一手を考えながらプレイするため、レスポンスとしては必要十分。きちんとゲームとして楽しめるレベルに仕上がっている印象だ。





通信サービスならではの工夫も

 もちろん、単にゲームをプレイできるだけではない。ネットワークで接続されている特徴を活かして、プレイしたゲームの結果がランキングとして表示されるようになっている。たとえば、リバーシであれば、これまでの勝ち数と負け数がサーバー側に記録されており、その勝ち数に応じて、同じオンデマンドTV利用者の間での週間、年間ランキングが表示される。これはなかなか面白いしかけだ。


プレイの履歴がセンター側に送られ、他の利用者も含めたランキングが表示される。リバーシでは勝ち数、ロジックパズルなどではクリアした問題数でランクが決まる

 ただし、勝ち数やクリアした問題数などの場合、どうしても早いタイミングでゲームを始めた人、ゲームができる時間が豊富な人しかランキングされない。このため、ランキングがゲームをプレイするためのモチベーションになるかと言われると微妙なところだ。

 個人的には、現状のランキングのほかにもリバーシでひっくり返したコマの数、ロジックパズルやナンバープレイスを解くのにかかった時間などのランキングも欲しいと感じた。そうすれば後から参加した人でもランキングに名を連ねられるようになり、参加意欲が増すのではないだろうか。

 ただし、今までのテレビやSTBのゲームがオマケ的なものだったことを考えると、そこから確実に一歩進んだサービスと言えそうだ。





ゲームの充実と対戦機能の提供を

 このようにオンデマンドTVで新たに開始されたゲームサービスを実際に使ってみたが、ちょっとした空き時間に楽しめるだけでなく、ランキングによってプレイする楽しみが高められているあたりは、高く評価したい。

 ただし、これによって他のサービスとの差別化に成功しているかというと、そこまでのレベルとは正直言いがたい。現状はやはりオマケ程度の位置づけと考えるのが妥当だろう。

 今後、ゲームサービスを他のサービスに対するアドバンテージとして位置付けていくのであれば、まずゲームタイトルの充実が必要だろう。たとえば、Windows Vistaのメディアオンラインなどでは、Gクラスタが3Dのゴルフゲームやアクションゲームなどを提供している。STBを利用する以上プログラム的な限界はあるだろうが、よりリッチなゲームを数多く揃えることが不可欠だろう。

 また、せっかくネットワークにつながっているのだから、ランキングだけでなく、対戦も可能になって欲しい。対戦によってほかのプレイヤーとリバーシを楽しめるようになれば、利用者同士のつながりへと発展させることもできる。そこから、コミュニティサービスのような新サービスに展開させることもできるだろう。

 現状、映像配信サービスの多くは、IPを利用しているメリット、なかでもサービスを利用している側が本当に便利だと感じられるようなメリットが少ない。今後は双方向通信というメリットを活かすようなサービスが登場してくれることを期待したいところだ。


関連情報

2007/5/29 10:58


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。