第364回:コンバータとしても使える小型無線LANルータ
プラネックス「MZK-MF150」


 プラネックスコミュニケーションズから、付属ACアダプタを含めても手のひらに楽々収まってしまう、超小型の無線LANルータ「MZK-MF150」が登場した。出張などの持ち運びに便利な上、無線LANコンバータとしても利用できるその実力を検証してみた。

拠点から拠点へと移動する人に

 プラネックスの「MZK-MF150」は、本体サイズが約75×60×23mm(幅×奥行×高)、重量が約69gと小型筐体を採用し、持ち運びの利用も想定した無線LANルータだ。プラネックスでは、「無線LANポケットルータ」と本製品を位置づけている。


プラネックスの無線LANルータ「MZK-MF150」。直販サイトの価格は7980円。多機能ながら、コンパクトさも兼ね備えた製品だ

 持ち運びが可能なネットワーク機器としては、最近ではイー・モバイルやUQ WiMAXなどの通信アダプタを接続可能で、バッテリー駆動するモバイルルータが高い注目を集めている。一方、「MZK-MF150」はADSLやFTTHなどの固定回線をWAN側に利用するようになっている。また、電源もACアダプタを使った給電となり、前述のモバイルルータと異なり、あくまでも固定回線と無線LANを中継することを目的にした製品だ。

 「いまどき、3GやWiMAXで使えないのか……」と、落胆する人も少なくないかもしれないが、有線LANの無線化というニーズはまだまだ高い。代表的なのは、出張や旅行先の宿泊施設での利用シーンだろう。最近では、無線LANアクセスポイントを設置してインターネット接続環境を提供するホテルなどもあるが、まだまだインターネット接続は有線LANということが多い。

 また、地方の宿泊施設などの場合では、立地や建物の構造などによって、屋外とは逆に3Gデータ通信サービスやWiMAXなどによる通信ができない場所も少なくない。このため、確実に通信できる、有線LANの利用が便利なことも多い。このような環境で本製品を利用すれば、有線LANを無線化できるというわけだ。

 つまり、モバイルという屋外での利用というよりも、ホテルや出張先、遠隔地の事務所など、拠点から拠点へと移動することが多い場合、本製品のような小型の無線LANルータを重宝するわけだ。また、PCはもちろん、外出先でiPod touchやゲーム機などの通信機能を外出先でも使いたいという場合に便利だろう。


本体側面背面

ACアダプタも小型なので一緒に持ち運んでも苦にならない一般的な折りたたみ式携帯電話との比較。厚みと幅が若干あるが、コンパクトさではひけをとらない

機能も十分普段の利用にも便利

 小型の無線LANルータといっても、「MZK-MF150」は機能的に見てもなかなか高い性能をもった製品に仕上がっている。

 まずは対応する無線LAN規格だが、2.4GHz帯を使用したIEEE802.11b/gに準拠しており、IEEE802.11nが持つデュアルチャネル技術などを利用した最大150Mbps(理論値)での通信もサポートしている。最大54MbpsのIEEE 802.11b/gのみをサポートする無線LAN製品と比べて、高速な通信が可能な点に加え、比較的長距離での通信にも強い点は魅力と言えそうだ。

 無線LANの設定面では「WPS」をサポートしており、PINコードを使った設定はもちろん、本体背面に備えたボタンを使ったプッシュボタンによる設定も可能となっている。プラネックスのWebサイトによれば、「Windows 7」とのWPS設定にも対応するようなので、無線LAN対応PCとの接続設定も手軽にできるだろう。

 また、「マルチSSID」機能にも対応しており、異なるセキュリティレベルのSSIDを最大4つまで登録可能となっている。これにより、ニンテンドーDS/DS LiteのようにWEPのみをサポートする機器を混在利用することが可能だ。


無線LANは理論値で最大150Mbpsの通信に対応。異なるセキュリティレベルのSSIDを最大4つ登録できる「マルチSSID」機能も備える

 ただし、標準設定ではセキュリティレベルが異なるだけで、作成した複数のSSID同士は相互通信が許可されている点には注意が必要だ。例えば、出張先のホテルで同部屋になった同僚に無線LANアクセスポイントを開放するといった利用シーンの場合、できれば機器同士の通信は遮断したいと考えることもあるだろう。こういったケースでは、SSID間の通信を遮断して対応したいところだ。

 本製品の場合、設定画面の表記やヘルプなどの記載もないのでわかりにくいのだが、無線LANの設定画面に「APアイソレーション」という項目があるので、これを有効にすれば通信の遮断が可能になる。


AP間の通信は標準では許可されている。「APアイソレーション」を有効にすると通信を禁止できるが、少々わかりにくい

 加えて、PPPoEマルチセッションやダイナミックDSNの利用などにも対応している。また、時間帯で無線LANの電波出力レベルを設定できる省電力機能も備えており、機能面で不足を感じることもない。これであれば、家庭で利用する無線LANルータとしても十分活用できるだろう。また、場合によっては、普段は家庭内でインターネット接続に利用し、出張などで家を離れるときに取り外して持ち出すという使い方もできそうだ。

 ただ、こうした利用をする場合は、自宅ではPPPoE接続、外出先ではDHCP接続と、WAN側の設定を使い分ける可能性もある。無線LAN側は、複数のSSIDによって利用シーンや接続機器を使い分けることができるが、WAN側は手動での設定変更が必要となるので、これらもボタンなどで簡単に切り替えるようになるとうれしいところだ。


スケジュール設定で電波レベルを調節できる省電力機能を搭載。家庭用として普段使うのにも十分な機能を備えている

無線LANコンバータとしても利用可能

側面のスイッチを切替えることで動作モードを変更可能。コンバータとしても利用できる

 このように豊富な機能も備えながら、持ち運びにも便利な本体サイズを持つ本製品だが、無線LANルータや無線LANアクセスポイントモードに加え、無線LANコンバータとしても利用できる特徴を持っている。これにより、有線LANポートのみを搭載するデジタル家電製品などに本製品を繋いで、無線LAN経由で既設の無線LANアクセスポイントへ接続することも可能になる。

 モードの切り替えも簡単で、本体側面にあるモード切替スイッチを「Converter」に切り替える(写真は評価機のため、製品版と表記が異なる)。すると、内蔵の無線LANが子機として動作するようになり、背面に備えた「Internet」と「LAN」の2つの有線インターフェイスが、LANポートとして利用可能になる。

 接続設定は、本製品に有線LANで接続したPCのWebブラウザから設定画面を開いて、接続したアクセスポイントを設定したも良いが、無線LANコンバータモードでもWPSによる設定に対応している。このため、無線LANアクセスポイント側もWPSに対応していれば、より手軽に無線LAN設定を完了させられる。


コンバータモードに変更した場合、背面の有線ポートは両方ともLANポートとして動作するアクセスポイントがWPSに対応していれば、本体ボタンまたは設定画面からWPSによる接続設定が可能。もちろん、手動でSSIDを検索して接続することもできる

 さすがに映像の録画やストリーミング再生用途で使用すると、通信速度がボトルネックになる可能性がある。通信環境が良好でなかったり、再生する映像のビットレートが高いと利用には少々厳しいかもしれないが、通常のインターネットアクセスや文字や静止画中心の情報サービスであれば問題なく利用できる。

 例えば、設置場所の関係でLANケーブルの配線が難しく、インターネット接続をできていないテレビやHDDレコーダなどがある場合は、本製品では単体で2台の有線LAN機器を無線LAN化できるので、無線LANコンバータとしての利用で購入を検討するのも良いだろう。

 なお、無線LANコンバータモードでいったん登録した無線LANアクセスポイントの情報は、動作モードを切り替えても設定情報が記憶されている。このため、無線LANルータ/コンバータ/アクセスポイントと、各モードの初期設定さえ済ませておけば、あとはスイッチを切り替えるだけで登録した設定情報を利用できるようになっている。

 従って、普段は無線LANコンバータとして利用し、外出先のホテルで使用するために持ち運ぶ際にも、スイッチを切り替えるだけ良いので手軽に利用できるだろう。

持ち歩き用に1台用意しておくと便利

 以上、プラネックスの「MZK-MF150」を実際に利用してみたが、ACアダプタも含め、持ち運びが非常に楽なコンパクトさは大きな魅力と言える。屋外や移動中に利用する必要がなく、ホテルや事務所などの拠点での利用が主な目的であれば、バッテリー式のモバイルルータよりも、こちらを選ぶメリットが高そうだ。

 もちろん、小型というメリットを活かして、設置場所が限られる場所で利用するのにも適している。例えば、リビングの目立たない場所に設置する、商店などの店先に設置する、事務所の邪魔にならないところに置くのにも最適だ。

 小型とは言え、多機能で速度的にも不満のないレベルになっている。持ち運び用に1台持っていると便利だが、家庭用の無線LANルータとしてそのまま使えるので、普段、眠らせておく必要がないのも大きなメリットと言え、サイズにこだわって製品を選ぶのであれば、購入を検討しても良い1台と言えそうだ。


関連情報

2009/10/20 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。