イベントレポート

Interop Tokyo 2017

2020~2030年のITはどうなる――「デサイロ」とは? 世界で200万人のセキュリティ人材が不足?!

村井純教授・シスコ鈴木みゆき社長が語る

基調講演の模様

 「Interop Tokyo 2017」で7日、基調講演「2020に向けてのICTの役割」が開催された。慶應義塾大学環境情報学部学部長の村井純教授、シスコシステムズ合同会社代表執行役員社長の鈴木みゆき氏が登壇し、東京オリンピックが開催される2020年、そしてさらにその先の2030年を見据えたIT環境整備の重要性などを語り合った。モデレーターは株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEOの藤原洋氏。

村井教授がドイツで耳にした「De ‘SILO’」とは?

 講演では、藤原氏がさまざまなテーマを投げ掛け、鈴木氏と村井氏が所見を述べていった。その1つが、2015年9月に国連で採択された「Sustainable Development Goals(SDGs)」という開発目標について。国連加盟国全体が2030年までの実現に向けて動き出すことになる。

シスコシステムズ合同会社代表執行役員社長の鈴木みゆき氏(左)と慶應義塾大学環境情報学部学部長の村井純教授

 SDGsは、貧困の撲滅、ジェンダーの平等、水・衛生の確保など、人類全体にとって極めて根源的な課題を17の目標にまとめている。また、村井氏の解説によれば、2030年を最終的なゴールに設定したことも特徴。過去・未来の取り組みを積み上げた結果、2030年に成果がまとまるのではなく、あくまで2030年までの実現に向けて今できることから始めようと呼び掛けており、そのためには当然ITの力をフル活用する必要が出てくると村井氏は指摘する。

 また、村井氏は今年3月にドイツで開催された国際展示会「CeBIT」へ参加した際、関係者の間で「De ‘SILO’(デサイロ)」という耳慣れない言葉が流行語的に飛び交っていたエピソードを披露。既成の概念を壊すという意味で「サイロを壊す」「壁を破る」といった表現はなされるが、大仰で言いにくいため、「De ‘SILO’」なる言葉が生み出されたのではないか、と村井氏は分析する。サイロのない世界が実現すれば、異なるサービスがインターネットを使って結び付きやすくなり、想像しなかったような利便性も生まれてくるだろうと展望した。

株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEOの藤原洋氏がモデレーターを務めた

全世界で200万人のセキュリティ人材が不足?! シスコも育成に積極姿勢

 シスコは2020年の東京2020オリンピック・パラリンピックにおいて、ネットワーク製品部門のオフィシャルパートナー契約を大会組織委員会と締結している。鈴木氏は、大会を素晴らしいものにできるよう、さまざまな面で取り組んでいきたいという。

 中でもサイバーセキュリティについては、オリンピック以外の一般分野でも重要性が増している。シスコではウイルス対策ソフトやファイアウォールによるピンポイント型の対策だけでなく、ネットワーク全体を包括的に守るための方策を推進。その成果の例が、5月に大きな話題となったランサムウェア「WannaCry」への対応。シスコのセキュリティ製品を導入していた企業の間では1社もWannaCryの被害がなかったという。

 また、鈴木氏が喫緊の課題に挙げたのが人材不足の問題だ。2019年までにはセキュリティ関連の人材が全世界で200万人近く不足する見込みという。すでにシスコではスカラシップの制度などを設けているが、今後は女性はもちろん、障がいを抱えている人たちもセキュリティ分野で活躍できるよう、育成を進めるとしている。

 このほか、鈴木氏からは2012年のロンドンオリンピックと現地・英国の「働き方改革」の関係性が語られた。「ロンドンオリンピック開催期間の前後は、どうしても多くの関係者が集まります。公共交通機関も混むので、現地で普通に働く会社員たちにも影響が出てしまった。そこで在宅勤務、遠隔勤務、フレックスワークが真剣に検討され、実際には大会終了後もそれらの制度が根付いたんです。同様に東京でも、オリンピックをきっかけに働き方改革を進めてほしいですね」(鈴木氏)。