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イベントレポート

EPUB採用の電子書籍サービス「Yahoo!ブックストア」年内開始へ


 ヤフー株式会社は7日、自社の最新サービスを紹介するカンファレンス「Yahoo! JAPAN Day」を「CEATEC JAPAN 2011」の会場で開催した。その中で、電子書籍配信サービス「Yahoo!ブックストア」を2011年中にもスタートさせることが表明された。フォーマットとしてEPUBを全面的に採用。2012年4月には、オンラインストレージサービス「Yahoo!ボックス」を活用したクラウド型の書庫機能も提供する計画。

「Yahoo!コミック」を総合電子書籍販売ストアへリニューアル

ヤフー株式会社の高田正行氏

 電子書籍配信サービスについて講演を行ったのは、ヤフー株式会社の高田正行氏(R&D統括本部 フロントエンド開発2本部 開発1部 部長)。現在の電子書籍市場については「昨年ごろから『電子書籍元年』と言われ続けているが、現在もリクープ(費用回収)しきれていないというか、大成功している事業者は少ない」と分析する。

 その理由については、作品の品揃え、サービスの仕様などが一般に課題として挙げられるが、電子書籍を閲覧するために必要なスマートフォンやタブレットの市場規模が現時点で2000万台に達していない点が重要ではないかと高田氏らは分析する。「2000万」という数字は、関連する商品の市場が成立するために必要な「マジックナンバー」なのだという。

 高田氏は「スマートフォンやタブレットが1000万台を超えはしたものの、PCの普及の実績を鑑みると、やはり2000万台がリクープラインになると思う」と解説。今年末から来春にかけて2000万台達成が見込まれることから、事業展開上でのスケールメリットは拡大するとした。

 また、ヤフーでは、紙製の書籍を電子化した「電子書籍」だけでなく、各種のコンテンツ配信サービスを「電子出版」と捉えている。マスコミから提供を受けたニュースをウェブに最適化した上で配信する「Yahoo!ニュース」、著名雑誌の記事が一部読める「X BRAND」なども、ある意味において「ブラウザーで閲覧する電子書籍」と定義。さらに、いわゆる電子書籍型の漫画配信サービスである「Yahoo!コミック」や、「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」での紙版書籍の流通も電子出版の一形態とすることで、各サービス間の相乗効果を高める方針を従来から示している。


スマートフォン、タブレットの2000万台到達が電子書籍サービス普及のカギだと分析 電子書籍を「電子出版の一形態」と位置付け、より多面的にサービスを展開

 Yahoo!ブックストアは、この既存電子出版サービスの1つであるYahoo!コミックをリニューアルする形式でスタートさせる。これまでは漫画のインターネット配信専門だったが、その他のカテゴリーの取り扱いを開始。総合電子書籍販売ストアへと発展させる。当初はスマートフォン、タブレット、PCからの閲覧を想定する。

 リニューアルは年内にも実施する予定という。なお、Yahoo!コミックはすでに約8年に渡って運営。累積利用者数は約300万人としている。

EPUBを全面採用、端末も参入企業もオープン志向で

Yahoo!ブックストアは年内にもオープン予定

 Yahoo!ブックストアの開設にあたっては、サービスの基本理念にあたる「電子書籍3原則」を消費者向け・出版社向けにそれぞれ制定した。

 まず消費者向けには「すべての本を探せる、買える」「マルチデバイスで読める、所有できる」「ソーシャル連携で感動が深まる、繋がる」の3つを標榜。高田氏は「“オープン”を第一にするということ。端末も、フォーマットもオープンにしていく」と、そのオープン性を特に強調した。

 対して、Yahoo!ブックストアで電子書籍を販売する業者、つまり出版社向けには「販売価格や期間を自由に設定できる」「課金のみならず、広告モデルも選択できる」「国内外を問わず同じプラットフォームで販売できる」の3つを示した。

 高田氏は「Yahoo!ブックストアは、ヤフー自らが本を編集したり独自に値付けして販売するサービスではない。本が購入しやすい場所を提供するが、あくまでも(販売の)主体となるのは出版社や、コンテンツの権利を保持する会社。形態としては、Yahoo!ショッピングやYahoo!オークションを思い浮かべていただくとわかりやすいだろう」と説明。販売業者と消費者を取り持つプラットフォーム役に徹する方向性を示した。さらに、単なる書籍の販売だけに止めず、ヤフーの強みである検索、広告との連動はもちろん、海外市場への展開なども模索していく。


消費者向けの「電子書籍3原則」 同じく出版社向けにも3原則を掲げている

 Yahoo!ブックストアはオープン性の高さを標榜することから、書籍のフォーマットにはEPUBを全面的に採用する。「(オープンな仕様である)HTMLを使ってウェブでサービスを展開してきた我々としては、HTMLにより近しい(EPUBという)フォーマットでやっていきたい」と説明する。

 その技術仕様が完全には確定していないEPUBだが、Yahoo!コミックではすでに相当の利用実績があるという。「実は今年3月から、部分的にEPUBを導入している。国内の商用運用実績はナンバーワンだろう」と、高田氏は胸を張る。

 具体的な例としては、東日本大震災発生直後、集英社が実施した「週刊少年ジャンプ」のネット向け無料配信がある。このフォーマットにEPUBが採用されており、アクセスの集中を踏まえた運用実績もすでに積んだ。また、EPUBによる有料配信作品もすでに600点程度ラインナップ。EPUBビューアー自体の提供も行っている。

 出版社向けには、EPUBによるコンテンツ作成のコンサルティングも計画。高田氏は「EPUB 3.0が先般策定され、縦書きやルビといった日本ならではの出版表現も再現できる可能性が高まってきた。ただ、我々が勝手にフォーマットを決めるのではなく、出版社とも十分協議し、最適な、一度作ればずっと使えるフォーマットを提案していきたい」とも説明。柔軟な対応方針を見せた。このほか、人気コンテンツの品揃えに注力する姿勢も示している。

1つのIDで複数端末に対応、「クラウド書庫」も

 国内最大手ポータルサイトを持つ強みを生かし、電子書籍販売サイト以外でのプロモーションがワンストップで行えるようにする。「Yahoo! JAPAN」トップページでの露出はもちろん、動画サイトの「GyaO!」で関連動画を配信したり、同様に「Yahoo!モバゲー」でゲームを配信するなど、多面的な販売促進策がとれると高田氏はアピールした。

 サービスの細かな仕様面では、まず「Yahoo! JAPAN ID」1つで複数の端末から閲覧できるようになる予定。割引プラン、ポイント、プレミアム会員向け特典なども制度として導入されるという。また、コンテンツの配信形態についても、ダウンロード型の買い切り(売り切り)だけでなく、ストリーミングによる期間限定提供なども可能。


電子書籍の販売だけでなく、「Yahoo! JAPAN」の規模を生かしたプロモーションも可能 決済手段、割引プランなども複数用意する

 Yahoo!ブックストア年内開始後のマイルストーンも示された。まず来年1月ごろに縦書き対応を予定している。高田氏は「現状でも縦書きは可能だが、クオリティ的に納得できていない。出版社とも協力して、何とか来年頭には実現させたい」と語る。同時に、外部サービスとの連携機能も追加する予定。外部電子書籍ストアの作品をYahoo!ブックストアで検索・購入できるようになる見込みという。

 続いて3月には、ソーシャル連携機能の追加、複雑な組版書籍への対応も実施。さらに4月には、近く開始予定のオンラインストレージサービス「Yahoo!ボックス」とも連動させた「クラウド書庫」の提供を計画している。

 壇上では、実機を使ったデモンストレーションこそ行われなかったが、高田氏は「リニューアルを正式発表できる段階で、また改めてサービスの詳細を説明したい」と予告。講演を締めくくった。


サービス開始1年後の目標 新サービスの具体的なスケジュールも示された




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(森田 秀一)

2011/10/7 19:00