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「駅すぱあと」のAPIを活用したハッカソンを実施、学生も交えて短期決戦で開発された“使われる”サービスとは
2016年11月28日 17:41
乗り換え案内サービス「駅すぱあと」のAPIを活用したハッカソン「駅すぱあと×ASTERIA WARP Core」をインフォテリア株式会社、株式会社ヴァル研究所、学校法人電子学園日本電子専門学校が11月25日に開催した。マーケティング会社やSIerなどの社員、日本電子専門学校などの学生ら約30人が参加。ヴァル研究所が提供するウェブAPI「駅すぱあとWebサービス」「駅すぱあとアダプタ(ベータ版)」やインフォテリアのデータ連携製品「ASTERIA WARP Core」「ASTERIA WARPフローデザイナー」を用いて、鉄道情報・料金データから新サービスの提案、実装を行った。
今回の開発で主に使用されるASTERIA WARP Coreは、基幹システムなどのデータ連携をノンプログラミングで実現できるツールで、10月に新たにラインアップされたもの。事務所レベルや業務単位など、より小規模なシーンでの利用に向け、ASTERIA WARPの基本的な機能に限定しており、主に中小企業での利用を想定している。
ハッカソンの審査員はIncrements株式会社プロダクトマネージャの及川卓也氏、ヴァル研究所代表取締役の太田信夫氏、インフォテリア代表取締役/CEOの平野洋一郎氏、東京R&Dセンター長の田村健氏が務めた。
インフォテリアのカスタマーインティマシー推進部長兼AUG運営事務局長である穴沢悦子氏によると、このイベントでは既存のウェブサービス、開発サービスなどの活用方法、アイデアを出せる人材育成を目指しているという。「まずはユーザーにどういった価値を届けたいか意識してもらうことが重要だ」としている。
短い開発時間の中でもユーザーに“使われる製品”を明確に
イベント冒頭では、Windows Vista日本語・韓国語版やGoogle Chromeなどの開発に携わったことで知られる及川氏が講演。ハッカソンで求められる基本的なスキルについて語った。
同氏は、ハッカソンは短期間で実際のソフトウェア開発プロセスをシミューレションできる役目を持っていると説明。“良い製品は使われる製品”ということを意識し、現状抱える問題の解決策になるもの、あるいは新しい価値を創造するものなのか、まずは作る製品のユーザーを想定して取り組むことが重要だという。
「昔は1人の天才が誰とも話をせずにひたすら寝食忘れて打ち込んで素晴らしいソフトウェアを作ることができたが、今は違う。大規模なシステムが要求されるようになり、チームでの開発が必要になった。本当に必要とされているものが何かをヒアリングするといったソフトスキルも技術力と同じように重要になる。」
ハッカソンでは開発途中の段階で審査されるケースが多い。そのため、ユーザー体験が試せるデモを行うことを念頭に置き、目に見えないロジック部分の開発は後回しにすることが重要だとアドバイスを送った。
及川氏はハッカソンを「大人のインターン」と捉える。「就活生は企業に出向いてさまざまな職場を体験できる。大人になってからはこういった機会はないが、ソフトウェア開発の場ではハッカソンを大人のインターンとして活用できる。普段の自分とは違うことが体験できるかたちで楽しんでいただければ」と参加者へエールを送った。
それぞれのアイデアが光る実用的な3つのサービスが受賞
その後、参加者は5つのチームに分かれて開発に取り組んだ。その中から駅すぱあと賞を受賞したのは「駅すとりいむ 究極の全自動探索アプリ」で、これは普段使うルートの乗り換え情報のみを自動表示させるサービスになっている。
太田氏は「決まったルートを使う人だけに特化するという、既存のサービスから機能を減らす発想が面白い。AIやデータを活用した機能は、駅すぱあとでも取り組んでいきたいと考えている」とコメント。
インフォテリア賞は「集まりやすく、帰りやすい」が受賞。複数人が集まる際に、全員にとって集まりやすい中間の集合駅を表示させるもの。
平野氏は「通常は“FROM”と“TO”を設定することで乗り換え情報を表示させるが、この場合は“TO”があらかじめ決まっていないのでシステム的に苦労したのではないか。そこを範囲検索を使うという方法で突破したことを評価した。こちらも学生同士の利用のみならず、ビジネスなどで応用できると考えられる」とコメント。
最優秀賞を受賞したのは「飲み会“帰り”タイマー」。飲み会の参加メンバーそれぞれの自宅の最寄り駅と出発駅、帰りたい時間をインプットすることで、参加者全員の終電時間に合わせて、店に滞在できる残り時間を表示するサービス。
及川氏は「Googleなどさまざまな追加サービスを検討しているが、ユーザーをグループ化して時間管理をするという発想はこれまでになかった。最も“使いたい”と思えたことに加え、飲み会に限らず、打ち合わせなどビジネスの現場での汎用性が考えられる」とコメント。
そのほかにも、電車の乗車中にトイレに行きたくなった際に最寄り駅のトイレ情報を伝えてくれるサービスなどの発表もあった。
ASTERIA WARP Core、駅すぱあとAPIを使って2時間限定で行われた開発については、最初は苦戦するチームもあったが、インフォテリアのASTERIA事業部のメンバーや、駅すぱあとの開発メンバーのサポートにより、最終的にはすべてのチームが一連の簡易フローを再現できた。