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帰宅困難者を救いたい――渋谷区とヤフーが協定、避難所情報など「Yahoo!防災速報」でプッシュ通知

渋谷区長の長谷部健氏(左)と、ヤフー株式会社副社長執行役員最高執行責任者の川邊健太郎氏(右)

 東京都渋谷区とヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)は23日、「災害に係る情報発信等に関する協定」を締結したと発表した。Yahoo! JAPANがAndroid/iOSアプリや携帯電話・PC向けメールで提供しているサービス「Yahoo!防災速報」のユーザーに対して、渋谷区が独自に提供する地震・台風接近などの緊急災害情報や、避難所の開設情報などをプッシュ通知する。

 Yahoo!防災速報では、情報が欲しい地域(自宅・実家・勤務先のある場所など)を3カ所まで登録しておくことで、該当する地域に関する情報が出た際に通知を受け取ることができるようになっている。渋谷区からの情報は、「地域の設定」から「渋谷区」を選択することで受け取れる。そのほか、「現在地連動通知の設定」をオンにすることで、登録してある地域にかかわらず、ユーザーの現在地が渋谷区周辺だった場合にも通知される。

 東京都防災会議が2012年4月に公表した「首都直下地震等による東京の被害想定」によれば、首都直下地震が発生した場合、渋谷区で死者は約250人、負傷者は約5000人、全壊棟数は約5800棟に上るという。また、渋谷区の人口は22万人ほどだが、昼間人口は50万人にも達し、鉄道などの交通機関が停止した場合、帰宅困難者が約22万人出るという。

 今回の協定締結により、渋谷区が独自に発信するライフラインについての情報、避難所の開設情報・満空情報などを、区民をはじめ、区内で働いている人や来訪者など帰宅困難者になりえる人にもいち早く届けられるとしている。Yahoo! JAPAN自体も「Yahoo!ニュース」などを含む災害情報を発信しているが、こうしたニュースではカバーできない「続報」についても、自治体から信頼できる情報が提供できるようになるとしている。

 また、自治体がそうした情報を発信するにしても、ユーザーが普段から使っているアプリでなければなかなか活用されないため、多くのユーザーがいるアプリで情報を発信していくことが重要だと指摘。全国ですでに約900万人が利用するYahoo!防災速報を自治体が活用することのメリットを強調した。

 協定では、情報のフォーマットや言語などにかかわらず、自治体が自由に利用できるYahoo!防災速報向けの情報配信システムを渋谷区に提供。同システムを利用するにあたってのガイドラインは規定しているものの、どのような情報をどのタイミングで発信するかは自治体の判断に委ねられており、自治体から直接、ユーザーに向けて情報を発信できるようになっている。実際に災害が発生したときだけでなく、自治体による避難訓練の際など、テスト配信などでの利用も定期的に行っていきたいという。

 Yahoo!防災速報の情報配信システムは、2016年8月に福岡県福岡市に提供を開始したのが最初。博多駅近くで11月に起きた陥没事故の際にも活用されたという。そのほか、福島県や東京都豊島区・中野区などにもすでに提供しており、渋谷区は59カ所目。Yahoo! JAPANでは、首都直下地震も見据え、東京の全23区への提供を目指すとしている。

 なお、渋谷区との協定では、Yahoo!防災速報への情報配信のほか、災害時にアクセスが集中して閲覧しにくくなる状況を回避するために、渋谷区の公式サイトや防災ポータルサイトのキャッシュサイトをヤフー側が提供する契約も含まれている。キャッシュサイトの契約については、東京23区のうち10区がすでに締結しているという。