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児童ポルノのブロッキング、ISPはやらなきゃダメ? 近く試験運用開始


警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の齋藤正憲氏

 ウェブ上の児童ポルノコンテンツへのアクセスを強制的に遮断する“ブロッキング”の試験運用が、警察庁の研究調査事業によりスタートする。遮断対象のアドレスリストを作成し、ISPなどに提供するまでを試験的に運用。正式導入を見据え、問題点の洗い出しや業務マニュアルの作成などを進める。

 社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の行政法律部会の主催により、「インターネット上のブロッキングを考える緊急公開勉強会」が10日に都内で開催され、警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の齋藤正憲氏が、同庁の事業「官民連携した児童ポルノ流通防止に係る調査研究」について説明した。

 児童ポルノのブロッキングでは、アドレスリスト作成管理団体というものが設置され、インターネット上の違法情報の通報窓口であるインターネット・ホットラインセンター(IHC)や警察庁から提供される情報をもとに、児童ポルノと判断したものをリスト化。そのリストの提供を受けたISPや検索エンジン事業者、フィルタリング事業者がブロッキングを行う仕組みだ。

 今回の調査研究事業は、9月から2011年3月までの期間で予定されており、委託先は財団法人インターネット協会。

 ブロッキングの導入を検討しているISPなどが試験運用へ参加できる。アドレスリストの提供を受けるための規定などは追って発表される見込みだが、やはりリストの性質上、厳格な管理が求められる。ただし、各事業者は実際にブロッキングまで行う必要はなく、システム実装や運用面での検証のために用いることができる。事業者からのフィードバックを得て、リスト提供方法なども詰める。

 試験運用と並行し、アドレスリスト作成管理団体を管理・監督する専門委員会の立ち上げに向けた準備が進められ、その専門委員会が3月、正式なアドレスリスト作成管理団体を選定する予定。2011年4月以降は、民間の取り組みとしてが運用されていくかたちが想定されている。


 勉強会では、財団法人日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏も出席。児童ポルノという言葉だとイメージしにくいが、児童虐待犯罪の現場写真が、一定の隠語で検索すれば容易に閲覧できてしまう状況にあると説明。ブロッキングは被害者のケアのためにも有効な手段だとし、導入に期待を寄せた。

 一方、多摩大学講師で一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)の研究員である中川譲氏は、児童ポルノではないコンテンツまで遮断してしまうオーバーブロッキングの懸念などもあるため、児童ポルノ対策としては、ホスティング事業者が規約に基づいて削除するなど、問題の少ない方法をまずは徹底すべきと訴えた。

 なお、警察庁の齋藤氏は、ブロッキングについて「削除依頼をせずにブロッキングするのではないか」という誤解があるとし、IHCから削除要請は行うものの、削除されるまでには数週間かかること、警察による捜査も数カ月要することを説明。その間の流通を防ぐためにブロッキングの導入へ向けて省庁間で合意されたものだとし、ブロッキングが導入されたからといって捜査の手を抜くわけではないと説明した。


日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏 (右から)安心ネット作り促進協議会・児童ポルノ対策部会主査の森亮二弁護士、同部会ISP技術者サブワーキングリーダーの北村和広氏、日本インターネットプロバイダー協会行政法律部会副部会長の野口尚志氏

 勉強会には主にISPを中心としたインターネット関連事業者から約150人が参加した。ブロッキングはISPにとって負担を強いるほか、オーバーブロッキングや法的リスクの懸念もあるため、会場からは「ブロッキングは、ISPとしてやらなければいけないものなのか?」といった質問も上がり、法的義務はなく、導入するかどうかはあくまでも事業者の自主的判断によるものであることが説明された。

 また、遮断する対象を決定するのはあくまでもアドレスリスト作成管理団体であり、ISPが個々に児童ポルノかどうかを判断するのではないが、実際にユーザーに対してブロッキングを行うのはISPである。「ある意味、責任をISPに押し付けられているような気がする」といった声もあった。

 齋藤氏は、「インターネットの世界は民間の役割が大きい。関係者全員で取り組んでいただきたい」と訴えた。


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(永沢 茂)

2010/9/13 13:19