スクリーンリーダーで電子書籍が聴ける「Adobe Digital Editions 1.8 Preview」


 米Adobe Systemsは20日、メジャーなスクリーンリーダーに対応した「Adobe Digital Editions 1.8 Preview」を公開した。現在、Adobe Labsのページからダウンロードできる。

 Windows 7/XP SP3とMac OS X 10.6以上に対応している英語版だ。プレビュー版であるため試用目的で提供されており、業務など重要な環境で使用すべきではないと警告している。また、1.8 Preview版は、1.7正式版に含まれている機能の一部(注釈、印刷、電子書籍リーダーのUSB接続サポートなど)を備えていないことにも注意が必要だ。そのため、1.7正式版に置き換わるものではない。

 1.8 Preview版に特徴的な機能は、スクリーンリーダーをサポートしたことで、WindowsのJAWSとMacのVoiceOverに対応している。視覚障害者向けのハイコントラスト機能も追加されている。

 将来的には1.8にも1.7の機能が追加されていく予定だが、今回のプレビュー版公開はアクセシビリティ機能を追加することが目的だとしている。

 電子書籍では、書籍がデジタルデータで提供されるため、ただ読むだけではなく、音声で読み上げるなどの新たな使用方法が考えられる。これは、これまで限られた点字版書籍やオーディオブックにしかアクセスできなかった視覚障害者が、膨大な一般書、専門書を読めるようなるという大きなメリットをもたらした。

 今回のAdobeの対応により、米国の図書館などで提供されているDRM付き電子書籍や、Barnes & NobleやGoogle eBook Storeなどで提供されているDRM電子書籍でも、音声読み上げによる読書が可能になったことになる。

 しかし一方では、米Amazon.comがKindle端末に音声読み上げ機能(Text-to-Speech)を付加して公開した際に、米国の出版業界が反発した経緯がある。印刷物に関する著作権と、音声読み上げに関する著作権を区別したためで、Amazon.comの行為が著作権を侵害していると訴えたからだ。その結果Kindleでは、出版社が音声読み上げを許可するかどうかを決定する仕組みに変更されたため、現在では一部のKindle書籍でしか音声読み上げ機能が提供されていない。

 音声読み上げ機能は、視覚障害者のみならず、健常者にとっても大きなメリットがある。車内や公共交通機関などで音楽やラジオ、ポットキャスト以外に、膨大な電子書籍を耳で楽しむことができる機会を提供することになるからだ。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2011/7/21 12:18