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若者をセキュリティトップガンに育てる合宿を地方でも、26社が実施協議会


 国内のIT関連大手企業など26社・団体が参加して22日、「セキュリティ・キャンプ実施協議会」が設立された。日本のIT社会を支える突出したセキュリティ人材“セキュリティトップガン”の発掘・育成を目的として、これまで経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が若年層を対象に実施してきた合宿「セキュリティ・キャンプ」のすそ野を広げるのが狙い。同様の合宿を全国各地で展開するほか、合宿の卒業生と企業との交流も促進していく。

「セキュリティ・キャンプ実施協議会」の会長に選任された株式会社ラック取締役最高技術責任者の西本逸郎氏 独立行政法人情報処理推進機構理事長の藤江一正氏

 セキュリティ・キャンプはIPAの主催により2004年度から計8回開催されており、これまでに360人が受講した。しかし、「官やIPAがやることには限界がある。中央で年に1回開催するのが精いっぱいだった」(IPA理事長の藤江一正氏)という。そこで民間企業にも協力を働きかけ、今回、セキュリティ・キャンプの「地方講座」を運営する協議会が設立されるに至った。

 協議会では2012年度、全国5〜6個所で地方講座の開催を目指す。運営の具体的な枠組みやカリキュラムなどは今後詰めるが、まずは民間企業や大学・専門学校、自治体などが開催しているキュリティセミナーや草の根勉強会とコラボレーションするかたちで実施する方針。地方講座には、協議会の会員企業からもセキュリティ専門家を講師として派遣する。

 一方、IPAが運営している従来からのセキュリティ・キャンプは「中央大会」として2012年度も継続。募集も例年通りの方法で行う予定だが、将来的には地方講座で選ばれた“尖った人材”を中央大会に集めて英才教育するような連携が理想だとしている。

今後の「セキュリティ・キャンプ」実施体制

将来の「セキュリティ・キャンプ」実施イメージ

 22日には協議会の設立総会が行われ、株式会社ラック取締役最高技術責任者の西本逸郎氏が会長に選任された。西本氏は、「(セキュリティ人材には)ただハッキングの腕があるというだけではなく、幅広い人脈や社会性、経験などさまざまなものが求められる。また、セキュリティの分野も、社会的なセキュリティから、例えばWindowsを突破できるかといった非常にプリミティブな、細かいところまで分野がある。そのあたりを総合的に学んでいただいて、しっかりやっていくのが重要」とコメントした。

 協議会の活動は、今まで狭き門だったというセキュリティ・キャンプのすそ野を拡大し、参加の入り口を広げるのと同時に、卒業生が活躍できるように出口を広げる狙いもある。「尖った人材を育てて世に問うても、それがきちんと世のため人のためになるのか、その人材の活躍の場を作るのが非常に大事」(藤江氏)。従来のセキュリティ・キャンプではその「出口」についての取り組みが不十分だったとして、藤江氏は参加26社をはじめとした産業界と卒業生との交流機会の創出に期待を寄せた。

 西本氏も、キャンプに子供・生徒を預ける保護者や学校側が「こういった合宿に参加すれば、将来の道筋が少し見えてくるのか」と安心できるよう、出口を整備していくことの重要性を強調。セキュリティ人材を個々の企業内で育成する難しさも指摘し、「どういったセキュリティ人材を受け入れるか、企業も考えなければならない。学生とも交流しながら、企業内のセキュリティの構築に生かしていただきたい」と訴えた。

 IPAの主催による2011年度の「セキュリティ&プログラミングキャンプ2011」は、昨年夏に大阪で4泊5日の日程で開催され、中学生5人を含む13〜22歳の60人が参加した。平均年齢は18.2歳だった。カリキュラムは、全員で受講する共通講義と、クラス別に分かれる講義・演習で構成されており、朝8時から夜10時まで缶詰めになって受講するという。主催者側は講師、チューター、委員など計57人が参加し、ほぼマンツーマンの体制がとられた。

 共通講義としては、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏、東京大学名誉教授の竹内郁雄氏の特別講義、情報セキュリティ基礎プログラミング入門のほか、特定テーマでディスカッションを行うBoF(Birds of Feather)や、セキュリティ/プログラミングに関するクイズを8チーム対抗で競い合うCTF(Capture The Flag)が行われた。クラス別講義は年齢や学年ではなくテーマによってコース分けしたもので、「ソフトウェアセキュリティ」「ウェブセキュリティ」「ネットワークセキュリティ」「セキュアなOSを作ろう」「プログラミング言語」というクラスが設けられた。

昨年夏に開催された「セキュリティ&プログラミングキャンプ2011」のカリキュラム

 セキュリティ・キャンプ実施協議会の会員企業・団体(2月22日現在)は、(ISC)2 Japan、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、株式会社インテリジェントウェイブ、SCSK株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社オービックビジネスコンサルタント、グーグル株式会社、CompTIA日本支局、株式会社サイバーエージェント、サイボウズ株式会社、株式会社シマンテック、ソニー株式会社、トレンドマイクロ株式会社、社団法人日本情報システム・ユーザー協会、日本電気株式会社、株式会社野村総合研究所、株式会社日立製作所、富士通エフ・アイ・ピー株式会社、フューチャーアーキテクト株式会社、マカフィー株式会社、株式会社ミクシィ、株式会社三菱総合研究所、三菱電機株式会社、楽天株式会社、株式会社ラック。このほか、特別会員としてIPAも参加する。


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(永沢 茂)

2012/2/22 17:39