800万DLの人気アプリ「Flipboard」ができるまで、創業者の「こだわり」とは


Flipboard創業者でCEOを務めるMike McCue(マイク・マッキュー氏)

 ネット上のコンテンツを雑誌のようにめくりながら閲覧できるiOS向けアプリ「Flipboard」が16日、日本語化された。世界で800万以上ダウンロードされ、Appleの「iPadアプリオブザイヤー」や、タイム誌の「ベスト発明50」にも選ばれた人気のアプリだ。

 日本語版アプリの公開にあわせて、FlipboardでCEOを務めるMike McCue(マイク・マッキュー氏)が来日。日本語で好きな言葉は「kodawari(こだわり)」という同氏が、創業に至るまでの道のりや、Flipboardのこだわりについて語った。

 マッキュー氏は自身最初の会社として、3Dブラウザーの先駆けとなる技術を提供したPaper Softwareを設立。この技術はNetscapeに取得され、自身も同社の技術担当副部長を務めた。

 その後、1999年にTellmee Networksを立ち上げ、開発した音声コミュニケーションネットワークをMicrosoftのインフラと統合させることに成功。Microsoftは2007年にこの技術を8億円で取得した。そして2010年、Flipboardを設立した。

 好きな言葉として「こだわり」を挙げるのは、細かい部分にも注意を払うという点が、自身の価値観と合致するためだ。「日本のデザインの美しさを高く評価している」といい、同社のデザインチームは日本でトレーニングや仕事を行った経験もあるという。

Flipboard誕生の背景に3つのキーワード

 そんなFlipboardが生まれた背景にはまず、「ソーシャルウェブの台頭」があった。初めてのウェブとの遭遇は、ネット初期のブラウザーの1つ「Mozaic」だったというマッキュー氏にとって、当時のウェブは「シンプルそのもの」。それに対してソーシャルウェブの時代では、各サービスを訪問しなければすべてを把握できず、「1つの場所でチェックできればいいと考えていた」。

 Flipboard誕生の背景には、「印刷媒体の美しさ」と「iPad」という2つの存在も欠かせなかったと語る。「印刷媒体といえば、美しい写真やレイアウト、タイポグラフィーなどが施されているが、これをネット上で再現するのが難しかった」。

 「例えば、写真付きの雑誌記事をブラウザー上で再現しようとすると、ツールバーやサイト自体のナビゲーションが表示される。収益のためにスカイスクレイパー広告も出る。これは読者にとっては不幸なこと。コンテンツは素晴らしいのに、雑誌で見るよりも劣るし、広告にも興味がなければなおさらだ。広告主が予算の85%をオフライン媒体にかけているというのも納得できる。」

 そう考えたマッキュー氏は、ウェブコンテンツを印刷媒体と同じように美しくすべきという結論に至った。当初はFlipboardをウェブサイトで展開しようと考えていたというが、そんな時に耳にしたのが、Appleがタブレット端末をリリースするという噂だ。「このデバイスがあればソーシャルマガジンが作れると思った」と振り返る。

写真付きの雑誌記事をブラウザー上で表示した例

美しさの追求が収益にもつながる

 印刷媒体のような美しさを追求することは、Flipboardの収益にもつながると考えている。同社は現在、世界で75以上の出版社や新聞社、ブログなどのパブリッシャーと連携し、Flipboardのアプリ上で印刷物のようなレイアウトを実現するための取り組みを行っている。出版社の中には、Flipboard上で全面広告を販売する企業もあり、出版社にとっても新たな収益獲得の場になっているという。

 日本ではまず日経BP社と連携したが、他の出版社とも話を進めていく。出版社に対しては、雑誌広告上で展開する広告枠をデジタルメディア上でも再現するためのツールを今年後半に提供する予定だ。

 「広告収益は出版社とレベニューシェアになる。その割合はどれだけ顧客を誘導できたかによっても変わる。Flipboardの成功はパブリッシャーの成功とともにある。」

世界で提携している出版社や新聞社、ブログなどのパブリッシャー

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(増田 覚)

2012/5/16 11:49