未成年と保護者のスマホ事情、デジタルアーツが調査結果公表


写真右から、デジタルアーツの工藤氏、弘前大の大谷氏、小寺氏
デジタルアーツの吉田氏

 デジタルアーツは、未成年とその保護者を対象とした携帯電話やスマートフォンの調査結果を発表した。

 6月22日・23日にかけて、マクロミルのパネルを利用したインターネット調査の形で実施された。対象は全国の10~18歳の男女と、その子供を持つ保護者。有効回答数は1236件となる。

未成年のスマホ利用が拡大

 スマートフォンを利用している未成年の割合は、昨年11月では14.4%だったが、今回の調査で約2倍の30.6%にまで増加した。学校性別による利用率は、小学生が男子15.5%/女子13.6%、中学生が男女ともに26.2%、高校生が男子47.6%/女子54.4%となった。

 スマートフォン利用者のフィルタリングサービスの利用率はスマートフォンユーザーが21.1%、非スマートフォンユーザーが64.8%となり、フィルタリングを利用しないユーザーは、スマートフォンユーザーが35.6%、非スマートフォンユーザーが52.6%となった。

女子高生にYouTubeやLINEが人気

 また、スマートフォンで使っているアプリについては、女子高生が全体的にアクティブな印象で、YouTubeの利用率は83.5%(男子高校生は74.5%)、LINEは70.4%(男子高校生は57.4%)となっている。

 LINEやTwitter、mixi、ニコニコ動画といったコミュニティ系のサービスについては、未成年の利用が高い一方、Facebookは保護者23.1%に対して、未成年は19.1%となっている。このほか、ニュース関連や料理・食べ物などは保護者の方の割合が高い。

 LINEについては、母親27.3%に対して男性は15.6%となった。調査の説明を行ったデジタルアーツの広報・コーポレートマーケティング担当の吉田明子氏は、母娘で「LINEを通じてコミュニケーションを図っている可能性もある」と語っている。

携帯やネットのルールは家族から得る

 携帯電話やネットのルール・マナーについては、情報取得が家族からとの回答が多く、高校生になると激減する傾向が見られた。

 それでは、子供の携帯購入時に店頭でフィルタリングの説明を受けたか? この設問に、「説明を受けた」が38.9%、「受けなかった」が33.7%となった。スマートフォンの利用者では、説明を受けたユーザーが46.6%、受けてないユーザーが22.8%で、「覚えていない」の回答は30.7%だった。

 このほか、スマートフォンに対して必要な対策については、高校生が「パソコンと同様のウィルス対策」と回答している。

大谷教授「子供にとってスマホはパソコン」

大谷氏

 発表会では、子供のネット被害とスマートフォンの関係について、弘前大学教育学部教授の大谷良光氏による講演が行われた。大谷氏はネットと携帯電話に関する研究プロジェクトを行っている。

 携帯電話を使ったネットの問題については大谷氏は、誹謗中傷などのいわゆるネットいじめと、アダルトサイトや詐欺サイトなど有害情報やセキュリティ関連の問題、そしてネット依存による健康被害の問題があるとした。

 大谷氏は、スマートフォンの普及により、もっとも懸念されるのが有害情報とセキュリティの問題とする。スマートフォンによるWi-Fi利用の拡大により、3G回線向けのフィルタリングが適用されないとし、またこうした説明が店頭でなされないことを危惧した。「子供にとってスマホはパソコン。自由度が高まる。動画利用者が急増する」などと話した。

 スマートフォン向けゲームの課金被害や悪質な架空請求などの事例が紹介されたほか、アダルト動画について「アダルトショップ並で、時にはモザイクがない。フィルタリングが設定されていなければ男子中高生がのぞいてみたくなるのは当然」などとされた。

 なお、大谷氏が教鞭をとる青森県ではフィルタリングの設定率が高いという。これは教員免許の更新講習の中に携帯やネットリスクに関する講義があるためとした。しかし、大谷氏はこうした取り組みはまだまだ不足しており、「ネットインストラクターの養成が課題だ」とした。

リテラシー向上に向けて

 発表会では、コラムニストでインターネットユーザー協会の代表理事である小寺信良氏などを交えてディスカッションなどが行われた。

 LINEアプリについて問われた小寺氏は、「インストールするとユーザーの了解は取るが、電話帳データをサーバーにあげる。子供が理解できるようかみ砕かれているのか」と問題点を指摘。コミュニケーションアプリ「カカオトーク」については、了承も得ておらずさらにひどいとした。さらに、アプリのレビュー欄を介して、出会い系サイトのような状況になっていることも指摘した。

 このほか、家庭内のしつけとして、人と話す際や食事中に携帯電話をいじらない、といった主にしつけをメインとしたルールがあるとした。小寺氏は、テレビを見ながら食事をすることとメディアとの接触という面では同じであるとし、子供との食事中の会話において、タブレット端末を使って学習効果の高いコミュニケーションが図れると紹介。「闇雲に携帯いじるな、というところから次のステップに行く必要がある」と話した。

 さらに、「ユーザーのリテラシーを上げ、自分で判断しリスクを回避できるようになる、フィルタリングがなくてもいい世界を目指す。フィルタリングは自転車を乗るまでの補助輪のようなもの。ステップがあり失敗して、プロセスを積む必要がある」などと語った。

 デジタルアーツでは、フィルタリングサービスとして「i-フィルター」を提供している。現在、NTTドコモ、au、ソフトバンクのキャリアショップでは、ツールを使って勧めており、店舗側にはリアルアフィリエイトの形で導入促進を図っている。auのiPhoneでは冊子などでも紹介されているという。


関連情報


(津田 啓夢)

2012/7/13 06:00