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国会図書館のアーカイブを電子書籍化して配信、文化庁が実験プロジェクト

 文化庁は29日、国立国会図書館が保有するデジタルアーカイブ(デジタル化資料)を電子書籍にして配信する実験「文化庁eBooks プロジェクト」を実施すると発表した。2月1日から3月3日まで13作品を配信する。配信には株式会社紀伊國屋書店が協力し、「紀伊國屋書店BookWeb」内に特設サイトを設ける。

 同プロジェクトは「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する実証実験」の一環。国会図書館のデジタル化資料を電子書籍化して配信するに際して必要となる権利者の捜索や著作権処理を擬似的に行い、電子書籍を制作。実際の電子書籍書店を通じて配信することで、課題や有効策を明らかにすることが目的だ。今後、民間事業者がデジタル化資料を活用した新たなビジネスモデルを展開する際に役立てるため、著作権処理の契約に関するガイドラインなども作成する。

 実験で配信する作品は、福井健策弁護士を主査とするワーキンググループが選定した。国会図書館のデジタル化資料のアクセス数や館内閲覧実績などを考慮した8作品と、文化庁で実施する「現代日本文学の翻訳・普及事業」の翻訳対象作品の5作品がある。

 具体的には、2013年に没後50年を迎え、著作権保護期間が満了となった柳田國男の「遠野物語」(1910年、自費出版)、“日本ではじめての天然色写真の絵本”だという「トツパンの写真絵本」の1つ「きしゃでんしゃ」(1953年、株式会社トツパン)、戦前の発禁本で、デジタル化資料におけるアクセス数ランキングで2012年に5カ月連続で1位を記録した酒井潔「エロエロ草紙」(1930年、竹酔書房)などがある。また、芥川龍之介「河童」(1927年、直筆原稿)では、直筆原稿と青空文庫のテキストを併載。竹久夢二「コドモのスケッチ帖 動物園にて」(1912年、洛陽堂)では、デジタル化資料の挿絵と青空文庫からのテキスト部分を組み込むハイブリッド型とした。いずれも内容は、執筆年代および執筆された状況などを考慮し、国会図書館所蔵のデジタル化資料をもとに出版当時のままで掲載する。

(永沢 茂)