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災害時に無料で使える公衆無線LAN「00000JAPAN」を統一SSIDとして提供

東京オリンピックに向けた取り組みも

 無線LANビジネス推進連絡会は27日、大規模災害時における公衆無線LANの無料開放および訪日外国人向けの公衆無線LANの取り組みについての説明会を実施した。説明会では、大規模災害時には、契約している通信キャリアにとらわれずに、公衆無線LANを無料開放する取り組みで、統一SSID「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)を発表、ガイドライン策定の報告が行われた。統一SSID「00000JAPAN」は、来年春に仙台市で開かれる国連防災世界会議までに実装される予定。

 無線LANビジネス推進連絡会は、総務省が取り組む「無線LANビジネス研究会」の報告書を受けて、公衆無線LANの利活用を促進する団体として、2013年3月に発足された。NTTブロードバンドプラットフォームをはじめとした通信事業者や携帯電話事業者、コンテンツプロバイダー、ベンダー、メーカーなど合計93の企業や団体が参画している。

公衆無線LANをとりまく現状

 日本国内では、スマートフォンの急速な普及に伴い、混み合う回線をオフロードする目的で各通信事業者による公衆無線LANの環境整備が行われている。また、観光事業の発展と利便性向上を目的に、成田空港や東京のお台場、福岡市などがフリーWi-Fiに対応、スターバックスコーヒーでも全店舗で提供するなど、各事業社や自治体が独自に取り組んでいる。4人に1人の割合で、公衆無線LANを活用しているのだという。また、2011年の東日本大震災時には、各社独自の公衆無線LANを無料開放し提供した。

 一方、公衆無線LANの環境は整い始めてきているものの、うまく利活用がされていないという現状や、事業者や自治体が連携していないことによる諸問題がある。こうした課題について総務省からの提言を受け、検討が進められてきた。

 大規模災害時における無線LANの無料開放は、統一SSIDの提供を想定した実証実験が、昨年9月に釜石市で実施された。実験結果から浮かび上がった問題点についてさまざまな検討が行われ、今回無料公衆Wi-Fiの提供に向けたガイドラインが策定された。また、2020年に開催される東京オリンピックに向けて、訪日外国人のための環境整備についても方針がまとめられた。

災害発生から72時間以内に統一SSID「00000JAPAN」を無料開放

 大規模災害時に、ユーザーが契約している通信キャリアにとらわれず、フリーで利用できる共通の統一SSIDが提供される。これに関してガイドラインがまとめられたが、その一部について、運用構築委員会委員長の大内良久氏から説明があった。

 まず無料開放する“大規模災害”の定義としては、「携帯インフラが広範囲に被害を受け、携帯電話やスマートフォンが利用できない状態が長時間継続する恐れがある場合」とした。その無料開放が発動する目安としては「72時間以内」。災害時において救援者が通信手段を確保することを想定して定められた。

 合わせて提供される災害用のポータルサイトは、被災者の避難・救助において有益な情報を発信するもの。サイト内には、インターネット検索エンジン(Yahoo!、Google)の検索窓、主要SNS(Facebook、Twitter、mixi)との連携を設けることを定めた。

 統一のSSIDは「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)。これは端末のWi-Fi設定をオンにした際に一番上に表示されるようになるため、ゼロを5つ並べたのだという。釜石市の実証実験においては「JAPAN」と仮設定したが、画面に表示されるSSIDの候補を探しにくかったという経緯がある。また、東京オリンピックの“五輪”にかけて、ゼロを5つ並べたとしている。

 “災害用の統一SSID”は、今回発表された「00000JAPAN」が世界初だという。無線LANビジネス推進連絡会では、利便性とセキュリティの共存や、地方公共団体との連携については課題が残る中、来春の実装に向けて詳細を詰めていく方針。東京オリンピック・パラリンピック開催時のICT環境実現に向けても、訪日外国人に利便性の高い公衆無線LAN環境を提供するべく整備を進めていくとしている。

(川崎 絵美)