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米Amazon、独自スマートフォン「Fire」発表

~Kinectに似たカメラセンサーや看板から音楽まで認識できるボタンまで搭載

 米Amazonは18日、初めてのスマートフォン「Fire」を発表。発表と同時に米国限定で予約受付が開始された。携帯キャリアはAT&T限定となっており、7月25日に出荷開始予定。価格は2年契約でFire 32GB版が199ドル、64GB版が299ドルとなっている。

 「Fire」は、独自開発技術であるダイナミックパースペクティブとFireflyが特徴。Amazonコンテンツが
存分に利用できる。Fire OS向けアプリ開発者が新技術を利用できるようにSDKも公開した。重さは160グラム、4.7インチ、315ppiのHD液晶を搭載する。

 Amazonが独自開発した新技術「ダイナミックパースペクティブ」は、スマートフォンに搭載したカメラによるセンサーテクノロジーだ。「Dynamic Perspective」という名称が表しているように、スマートフォンを持っている角度やユーザーの頭の位置やユーザー視線などを認識することで、ジェスチャーなどこれまでになかったスマートフォンの操作方法を可能にする。加えて、画面に表示されている物体の裏側をのぞきこむような、いわゆる3D表示も可能にした。

 「Fire」に関しては、事前リーク報道などで3D画面に注目が集まっていた。しかし、発表された情報によれば、3Dテレビのように物体が浮かび上がってくるのではなく、奥行きがあったり、のぞき込むような立体感覚と言えそうだ。3Dを前面に押し出さない名称からも分かるように、3Dはむしろ新しいセンサー技術の1つの応用に過ぎない。いわばAmazon版のMicrosoft Kinectであり、それをスマートフォンに搭載したと考えれば分かりやすいかもしれない。

 ダイナミックパースペクティブを実現するため、ハードウェアとして4つの超低消費電力のカメラと4つの赤外線LEDが前面に搭載されている。この情報をリアルタイム処理するための専用カスタムプロセッサも搭載され、リアルタイムのコンピュータービジョンアルゴリズムやグラフィック技術によって様々なアプリケーションを実現する。

 具体的には、Fireを片手で持ったままのジェスチャー操作が可能だ。長いWebページや書籍を、Fireを傾けるだけで自動スクロールさせたり、メニューを表示するのにFireを左に傾けたり、といったようにアプリ操作や書籍、音楽、映画の操作が簡単なジェスチャーでできる。

 Amazonショッピングアプリはダイナミックパースペクティブを利用することで、服飾ドレスの裏側を覗き込むことを可能にした。さらに搭載ゲームでは、キャラクターの視点をユーザーが頭を動かすことで回転させるなど、いわゆるイマーシブな体験を提供できるという。

 ダイナミックパースペクティブを利用したアプリケーションを開発できるようにするため、SDKも公開された。

 もう1つの独自技術はFireflyテクノロジーだ。これは、街角で目にするものをFireflyボタン1つで認識し、Amazonで購入したり、情報を得られるという技術だ。

 対応するのは印刷された電話番号、メールアドレス、Webアドレス、QRコードやバーコード、映画、テレビ番組、テレビチャンネル、音楽、書籍、DVD、CD、テレビゲーム等で、現在Amazonデータベースにある1億以上の商品に対応する。

 認識にはカメラによる視覚情報、マイクからの背景音を参考にする。ボタンを押すと数秒以内に何らかの情報を得ることが可能だとしている。このFireflyテクノロジーのSDKも公開され、開発者が利用できる。

 Amazonでは今年後半にもアートワーク認識、外国語翻訳、またVivino社によるワインラベル認識も可能にするとしている。

 「Fire」はKindle Fireの流れをくみ、Amazonコンテンツにアクセスできる。特に米国で充実しているAmazon Prime会員サービスでは、映画とテレビの無制限ストリーミング、Kindleオーナーレンディングライブラリでは50万冊のレンタルが可能。今週新たに発表されたPrime Musicサービスでは100万曲以上の音楽の無制限ストリーミングとダウンロードが追加費用なしで利用できる。

 さらに、テレビ電話による年中無休サポートサービス「MayDay」も搭載。これはすでに米国のKindle Fireに搭載されて人気となっている、人間によるユーザーサポートサービスだ。ボタンを押すだけでサポートセンターの係員がテレビ電話で現れ、機能の使い方などを助け、様々な説明をしてくれる。年中無休24時間無料で利用可能だ。実際の人間が対応してくれるところが人気で、Amazonが最近発表した統計によれば、平均的レスポンスタイムはボタンを押してから9.75秒だったという。Fireでは3G/4G回線、またWi-FiでMayDayを利用できる。

 その他にKindleで利用できる予測ストリーミングである「ASAP」、X-Ray、Second Screen等といった機能も利用可能。また、Fireで撮影した写真はAmazonクラウドに無制限にアップロードして保存できる。

 Amazon Fireの仕様は、本体サイズ139.2×66.5×8.9mm、重さ160g。プロセッサは2.2GHzのクアッドコアSnapdragon 800 CPU、Adreno 330 GPUを採用。2GBのRAMを搭載した。OSはFire OS 3.5.0で、ストレージ容量は32GBまたは64GBから選択可能。

 ディスプレイは4.7インチHD液晶ディスプレイ(315ppi、解像度1280×720ドット、明るさは590 cd/m2、コントラスト比1000:1)、カメラは13メガピクセルの背面カメラと2.1メガピクセルの前面カメラを搭載。

 センサーとして赤外線照明、ジャイロスコープ、加速度計、磁力計、気圧計、近接センサー、周辺光センサー、GPS、アシスト型GPS、GLONASS、Wi-Fi/基地局による位置測定、デジタルコンパスを搭載。チャネルボンディングにより最大300Mbpsのスループット可能な802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth3.0、NFCに対応する。

(青木 大我 taiga@scientist.com)