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クレカ番号入力不要の「楽天ID決済」が提供範囲拡大、新たに4社のショッピングカートASPで導入
(2015/12/28 06:00)
楽天株式会社は25日、決済サービス「楽天ID決済」の提携事業者を拡大し、新たに4社のショッピングカートASPサービスで導入されることを発表した。GMOペパボ株式会社の「カラーミーショップ」、GMOメイクショップ株式会社の「MakeShop」、テモナ株式会社の「たまごリピート」、株式会社フューチャーショップの「FutureShop2」を利用している企業が、通販の決済時などに楽天ID決済を提供できるようになる。2016年以降、順次導入の予定。
クレジットカードの不便を緩和しながら簡単・お得に決済
楽天ID決済は、楽天の会員IDを利用して、外部の通販サイトなどで決済を行うためのサービス。商品の購入者であるエンドユーザーは、使い慣れた楽天会員IDとパスワードを提携サイトで入力するだけで決済を完了させられる。このため、クレジットカード番号を再入力する手間が緩和されるだけでなく、直接の取引相手にクレジットカード番号を知られる心配がない。また、商品の販売者側としては、決済手段を複数用意することで客の取りこぼしが少なくなるといった効果を期待できる。
ショッピングカートASPサービスは、主に中小企業が自社直営のネットショップを構築したい場合に利用される。ゼロからサイトを設計するのに比べて大幅にコストを抑えられる一方、月々の基本使用料、あるいは取引額の数%を手数料としてASP運営者側に支払うのが一般的。どんな決済手段を選択できるかはASPの対応状況に依存するが、ここにクレジットカードや代引きとともに楽天ID決済が並ぶ格好だ。
楽天ID決済の前身にあたるサービスは2008年にスタート。その後、提供範囲を順次拡大しており、現在は約3000社がに導入しているという。今回、4つの事業者と提携したことで、楽天ID決済全体では9社のショッピングカートASPが対応したことになる。
なお、楽天ID決済が行われた際、原則として取引金額の5%が販売業者から楽天へ支払われる。
楽天ID決済導入のメリットは?
25日には楽天が記者発表会を開催した。常務執行役員である高橋理人氏は、同社が提唱する「楽天経済圏」の理念を改めて説明。国内最大手のモール型ショッピングサイト「楽天市場」でのショッピング体験を同サイト内だけで留めることなく、オープン戦略のもとで外部にも波及させていく戦略を打ち出しており、楽天ID決済のサービス拡大もその一環という。
矢澤俊介氏(執行役員)と鈴木壮弥氏(チェックアウト事業副事業長)からは楽天ID決済の概要が説明された。楽天市場では原則として注文金額の1%が購入者にポイントバックされるが、これは外部サイトでの楽天ID決済にも適用される。このお得感が楽天ID決済の大きな強みだとしている。
一方、ショッピングサイト運営者側から見た場合、ドロップ率(かご落ち率)の抑制にも効果があるとアピールしている。一般にECサイトでは、ショッピングカートに商品を入れて購入手続きを開始したにもかかわらず、途中で買い物を止めてしまうユーザーが少なからずいる。住所などの個人情報入力が多すぎて途中でやめたり、決済途中に何らかのエラーやトラブルに遭遇するといったケースが多いとみられる。
楽天ID決済をユーザーが実際に選択した後のドロップ率について、楽天では全体平均で10%と説明している。クレジットカード決済時のドロップ率について定説はないが、30~40%にも達する場合があるとされ、売り逃しの抑止に一定の効果があるとしている。
このほか、ある総合通販サイトでは、クレジット決済利用者に比べて楽天ID決済利用者の方が購入単価で11%高く、年間注文件数が28%多いとの結果も出ているという。
ショッピングカートASPと楽天ID決済の相乗効果に期待
発表会には、ショッピングカートASP提供会社の関係者がゲストとして参加し、それぞれの立場から決済サービスの現状や課題を語った。株式会社Eストアーの「ショップサーブ」は約1万9000社に利用されているが、このうち1500社が楽天ID決済導入を決めた。同社執行役員の細野純子氏は「スマートフォンがこれだけ普及しているとはいえ、例えば電車の中で注文してクレジットカード番号まで入力するのは意外と大変。IDとパスワードだけで決済を完了させられる事の意義は大きいのでは」と述べた。
株式会社フューチャーショップの代表取締役である星野裕子氏からは、ショップの信頼性を高めるための手段について、楽天が積極的に音頭を取ってほしいという要望が寄せられた。中小の通販サイトの多くは、楽天市場などのモール型サイトに“支店”を設ける一方で、“本店”を独自ドメインの自社サイトに構築する例が多い。本店のほうが販売施策の自由度は高いが、消費者から見た場合、サービスへの信用度は楽天に比べれば相対的に劣る。そこで、「楽天ID決済を導入している店ならば安心して買い物ができる」といった保証制度を作れないか、と要望していた。
定期購入(頒布会)型ショッピングカートASPを提供するテモナ株式会社の佐川隼人氏(代表取締役社長)は、取り扱い商品ラインナップの拡充を課題とした。「定期購入型で販売されるものは、いまのところ健康食品やサプリメントが中心。その他の商品における展開事例がまだまだ(社会的に)共有されていない」とし、市場拡大の余地は十分にあるとの見解を示した。