光の道“ソフトバンクただ乗り論”に孫社長が奮起、「やりましょう」呼び掛け


 ソフトバンク株式会社は25日、「光の道」構想に関して記者会見を開催し、同社グループ代表の孫正義氏が、構想を実現するための新しい提案を披露した。

ソフトバンクグループ代表の孫正義氏

 「光の道」構想は、2015年をめどに国内の全世帯に光回線を整備するというもので、総務省のタスクフォースで検討されている。孫氏はかねてより、NTT東西地域会社からアクセス回線部門を分離し、全国で一気に光化を推し進めることで、税金を投入することなく同構想を実現でき、しかも従来のメタル回線と同じ月額1400円程度で光回線を提供できると主張している。

 今回の新提案も方向性は全く同じだが、アクセス回線部門をNTTから会社分離した上で、政府やNTT持ち株会社、KDDI、ソフトバンクなどによる共同出資会社として設立・運営していくかたちに変更した。

 孫氏が毎日見ているというTwitterで、従来の提案について「ソフトバンクはNTTの作ったインフラにただ乗りして何を偉そうなことを言っているのか」といった“ソフトバンクただ乗り論”の指摘を受けたことが胸にぐさりと突き刺さったという。孫氏はこれを反省、「NTTを批判するだけでなく、自ら腹をくくってやりましょう」と決意し、ソフトバンクも「相応の負担」をするスタンスを示した。

 孫氏によれば、アクセス回線会社は、NTT東西地域会社が抱える約2兆円の負債のうち1兆円を引き継ぐことになるほか、当面の資金として5000億円程度が必要になる。この5000億円については、現在、NTT株式の40%・2兆円分を保有している政府が、アクセス回線会社についてもこの比率を保ったまま2000億円を現物出資。残り60%についてNTT、KDDI、ソフトバンクが20%・1000億円ずつ出資する例を示した。

 一方で、NTTやKDDIが出資しないのであれば3000億円を、さらに政府も出資しないというのであればソフトバンクが5000億円全額を、1兆円の負債とともに引き受けてもいいと言い切る。1社だけでもやる覚悟だが、逆に我田引水と言われかねないため、より中立的な3社で20%ずつ出資する例を示したという。ただし、これはあくまでも例であり、イー・アクセスなどの他の通信事業者や投資会社の参加も歓迎だとしている。

 このほか孫氏は今回、光回線への全面移行にかかるコストやアクセス回線会社の収支についての試算結果を一部修正した。コストを過小評価しているなどとNTTから反論があったことを受け、ソフトバンク側が間違っていた項目について追加計上など行ったほか、現状の回線の光化率についてNTTが新たに公表した数値に基づき試算し直した。孫氏によると、従来NTTが公表していたデータでは、配線の90%がすでに光化されているとしていたが、実際はき線点までであり、架空配線区間はまだ50%にとどまるという。これを受け、光回線の100%整備コストを従来の2.5兆円から3.1兆円に修正した。

 また、アクセス回線会社の営業利益についても従来の3500億円から2300億円に下方修正している。とはいえ、税金ゼロで100%光化を行い、従来のメタル回線料金と同じ月額1400円で提供できるという結論はいっさい変わらないとした。

 孫氏は、今回NTTが反論というかたちで具体的な数字を出してきたことでソフトバンクの提案内容の検証が進んだことを歓迎する一方で、すでにアクセス回線会社の構造分離を行い、共同出資会社化したシンガポールなどの事例を紹介。「これ以上、まったりとした議論はいかん。議論の堂々巡りになるより、我々が腹をくくってやってみせるべき」と強調。「光の道」構想を実現に向け、通信事業者が協力していくことを呼び掛けた。


関連情報

(永沢 茂)

2010/10/26 06:00