「ServersMan@iPhone 4.0β」は起動しっぱなし可能、アップローダー機能も


 フリービット株式会社は10日、iPhoneをサーバー化するアプリの新バージョン「ServersMan@iPhone 4.0β」をApp Storeに申請したと発表した。承認されしだい、世界90カ国のApp Storeから無料でダウンロードできるようになる。

 バックグラウンドで常時起動しておくことが可能になるとともに、省電力化も図られた。また、Appleが10日に提供を開始したiOS 4.3にも完全対応したとしており、AirPlayやAirPrintにも対応した。

 ServersMan@iPhone 4.0βは、iPhone 4/3GS/3およびiPod touch(iOS 3.1.3以降)に対応する。ただし、バックグラウンド機能はiPhone 4/3GSおよびiPod touch第3世代以降(iOS 4以降)のみ。

ServersManを起動したままで、48時間バッテリー稼動

 フリービットの石田宏樹代表取締役社長によると、ServersMan@iPhone 4.0βでアップデートしたポイントは、コアモジュール、ファンクション(機能)、ユーザーインターフェイス(UI)の3点。

フリービットの石田宏樹代表取締役社長

 コアモジュールについては、もともと同アプリはTCP/IPスタックから独自に開発しており、アプリ自体がIPアドレスを持つ独特な仮想化構造をしているという。これを今回、時間をかけて改良し、高速化と安定化、バックグラウンド動作および省電力化を実現したとしている。

 具体的には、バージョン3.8.4.3と比較して、通信処理速度を約50%高速化。また、ネットワークがいったん切断されても再接続する「粘り強い接続力」により、再接続率を同じく約2倍に向上させたという。

 さらに、iOS 4のバックグラウンドプロセスに「徹底的に対応」。同時に約50%の省電力化を実現したとしており、iPhone 4でServersMan@iPhoneを起動したまま持ち歩いたテストでは、約48時間のバッテリー稼動を実現したという。

 石田社長は「ServersMan@iPhoneは従来はフロントエンドのアプリとして動作しており、アプリを閉じればサーバー機能が終了してしまった。ServersMan@iPhone 4.0βではバックグラウンド機能により、iPhoneのほかの機能を使っている時でもサーバーとして機能し、バックグラウンドでファイルをやりとりすることも可能になる」と説明。本当のクラウドを持ち歩けるという意味で「"True" Croud Server in a Pocket」というキャッチフレーズを紹介した。

 なお、このコアモジュールについてはServersManのすべてのプラットフォーム向け製品で共通のものだとしており、他のプラットフォーム向け製品にも順次適用していくという。

ファイル単位で友人との共有設定も可能

 ファンクションとしては、既存ユーザーからのニーズに応える複数の機能追加・機能強化を行った。これには、シェルアプリケーションの搭載、ファイル共有機能の拡張、APIの公開などが含まれる。

 シェルアプリケーションの「ServersMan Sell@iPhone」では、ユーザーが同一ServersManアカウントで運用している複数のServersManノードにシームレスにアクセスできる。例えば、自宅のNAS「ServersMan@CAS」や、ドリーム・トレイン・インターネットが提供する仮想専用サーバーサービス「ServersMan@VPS」に保存してあるファイルをiPhoneから閲覧したり、iPhoneで撮影したばかりの動画をそれらのストレージ領域に保存するといった使い方が可能になる。

 アクセスできるノードは、フリービットのアカウントデータベースに基づき瞬時に検索され、その中でオンラインになっているノードを選択するだけでアクセスできる。

 ServersMan SellはすでにWindows版が提供されていたが、これをiPhoneにも移植したかたちだ。なお、ServersMan Sell@iPhoneからアクセスできるのは、当初はPC向けの「ServersMan@DeskTop」と、ServersMan@VPSのみ。追って、ServersMan@CASや、Android向けの「ServersMan@Android」でもアップデートにより対応する予定だ。

 ファイル共有機能については、ServersMan@iPhoneの“Croud Server”としての機能を大幅に強化したものだとしており、「Upload」機能と「アクセスチケット」機能を搭載した。

ServersMan@iPhoneがオフライン時の通知機能

 Uploadは、ServersMan@iPhoneのストレージにインターネット経由で直接ファイルをアップロードできる機能だ。アップロードできるのは、あらかじめIDとパスワードを発行した友人などで、最大10人まで登録しておくことが可能だ。アップロード操作は、ウェブブラウザーからServersMan.Comにログインした上で行う仕組み。

 一方のアクセスチケットは、ServersMan@iPhoneのストレージにある各ファイルに対して、URLとダウンロード用パスワードを発行できる機能。これを友人に教えれば、ファイル単位で共有を許可できる。アクセス履歴を確認することも可能だ。

 いずれも動画ファイルなどにも対応している。メールで送受信できないような大容量ファイルも、ファイル送受信サービスなどにいったんアップロードするといった手順なしに直接やりとりできるようになるわけだ。バックグラウンドで動作している状態でもアップロード/ダウンロードが可能だ。

 一方、ServersMan@iPhoneが起動していないiPhoneに対してアップロードしようとした際には、そのiPhoneに通知が届く仕組み。そこで起動してもうらうのを待ってアップロードする流れになる。

APIの公開で、ソーシャルアプリのプラットフォームにも

 公開されたServersMan APIとしては、iPhoneのフォルダー一覧取得、ファイルアップロード/ダウンロード、位置情報取得、メッセージ送信、再生曲情報取得、バイブレーション、仮想IPv6アドレス取得といったものがある。これらのAPIはすべてHTMLやJavaScriptで叩けるため、ServersMan@iPhoneと連携したウェブアプリケーションの開発が容易になるとしている。

 例えば、iPhoneの位置情報をServersMan API経由で取得してGoogle マップ上に表示するマッシュアップや、自分のブログサイトなどの「いいね!」ボタンがクリックされるたびにiPhoneをバイブレーションさせるといったことも可能という。

 石田社長は、APIを公開したことで「単なるサーバー化アプリでなく、プログラム環境としてServersManを使えるようになった。ゲームアプリベンダーなどが、ソーシャルアプリのプラットフォームとして利用することも可能。HTMLでアプリを書けるため、既存のウェブアプリもServersManに移植できる」としている。

AirPlayによる動画再生のデモ

 このほかの新機能としては、サーバーキャッシュ機能の「Intelligent CDN」がある。これは、ServersMan@iPhoneの公開領域である「public_html」のファイルを、フリービットのクラウド側でキャッシュしてくれるものだ。ServersMan@iPhoneがオフラインの時や、アクセスが集中した場合でもコンテンツが表示されるというわけだ。キャッシュを有効にするかどうかはユーザー側で設定可能だ。

 ただし、Intelligent CDNはあくまでpublic_html領域が対象だ。ファイル共有機能であるUploadおよびアクセスチケットについては、クラウド上に有料のストレージ領域を用意することで、オフライン時への対応手段を提供する考えだ。

 iOS 4.3への対応においては、AirPlayにより、ServersMan@iPhoneのストレージ領域あるいはServersMan Sell@iPhoneからアクセスできる他のServersManノードに保存してある動画や写真を、ワイヤレスでApple TV経由で大画面テレビに映し出すことができる。同様に、ドキュメントもAirPrintでワイヤレスでプリントアウト可能だ。また、アプリ同士の連携が可能になったことで、メールの添付ファイルや他のアプリ上のデータファイルをServersManに保存できるようになった。

Android版、iPad版もバージョンアップ予定

 UIについては、ユーザーからの「使いにくい」という声を受けてトップ画面を一新したという。従来は「MyStorage」と「public_html」という2フォルダー構成だったのに対し、ServersMan@iPhone 4.0βでは、ServersMan@iPhoneをファイルビューワーとして活用することも想定したデザインにしたという。

ServersMan@iPhone 4.0βのトップ画面

 具体的には、トップ画面中央にログインボタンを置き、その回りを囲むかたちで「MyStorage」「public_html」「exchange」「upload」の各ボタンを配置するデザインとした。このボタン配置について石田社長は「ログイン操作を中心に、すべて同じ距離で指が動く。データの触り心地のいい、ビットの手触りまで感じとれるようなUIだ」と説明している。このほか、画面最上部にServersMan Sell@iPhoneボタンを配置した。

 前述のように、ServersManのコアモジュールはiOS、Android、Linuxなどの各種プラットフォームで共通化されており、ServersMan@Androidの新バージョンもほぼ完成しているという。iOS 4の独自機能対応部分を除けば、ServersMan@iPhone 4.0βと同じ機能が搭載されるとしている。

 また、iPad向けの「ServersMan HD」も、iPad 2の日本発売に合わせてバージョンアップしたい考えだ。従来のiPadではどうしてもビューワー的な役割が大きかったが、iPad 2ではカメラが搭載されるため、ServersManの各種機能をより活用できるようになるとしている。


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(永沢 茂)

2011/3/11 06:00