YouTube動画広告によくある3つの勘違い、それを覆した成功例


 一部で提供されていた「動画広告向けAdWords」が4月下旬、すべての広告主向けに公開された。「中小企業のビジネス拡大のきっかけになる」と語るのは、米Googleのアジア太平洋地域YouTube製品開発ディレクターを務めるアダム・スミス氏。動画広告向けAdWordsの狙いと、YouTubeの動画を活用したプロモーションの成功例について聞いた。

視聴者に広告の強制感を与えない「TrueView」

 動画広告向けAdWordsは、YouTubeのコンテンツパートナー企業の動画の前後などに動画広告が挿入される「インストリーム広告」、YouTubeの動画検索の上部に表示される「インサーチ広告」、Googleの広告ネットワークに配信する「インディスプレイ広告」などがある。

 広告主は検索連動型広告と同じように、見込み顧客へのリーチに適したキーワードやユーザー層、地域などを選択し、宣伝したい商品やサービスを検索したユーザーに的確にリーチできるという。視聴者が能動的に広告を見た時だけに広告費が発生する「TrueView」が設定できるのも特徴だ。

 例えば、YouTubeの動画が始まる前に広告を挿入するパターンでTrueViewを設定した場合、広告が5秒間表示された後に、ユーザーが広告をスキップして動画を再生するか、そのまま広告を見るかを選べる。このため、広告費が発生するケースでは、商品やサービスに関心のあるユーザーにリーチできることになる。

 「TrueViewは広告に興味のある人だけにアプローチできる」と語るスミス氏によれば、TrueViewを設定した動画広告向けAdWordsでは、広告主のサイトへのトラフィックが平均で20%上昇したという。また、「動画広告で面白いモノを見た」という口コミにより、広告主のキーワードの検索クエリが平均5%上がったとしている。

 「TrueViewはユーザーと広告主にメリットをもたらす仕組み。通常の動画広告と比べて、視聴を途中で停止する割合は40%も低い。TrueViewは『スキップできる』選択肢を与えているため、広告を選択的に見ている人がほとんどだ。反対に、スキップできない動画広告は強制感を与え、広告が流れていても画面から離れる人も少なくないだろう。」

動画でインパクトを与えた中小企業の成功事例

 従来の動画広告には「3つの大きな勘違いがある」と指摘するスミス氏。以下、それぞれを見てみよう。

1)プロが作成しなければダメだということ

 「高い予算をかけなくても、たくさんの人に見られている動画は数多くある。1つのすばらしい例が、舌の汚れを除去するクリーナーの『Orabrush』だ。この動画は大学院生が作ったもので、制作費はたったの500ドル。にもかかわらず、オンラインで100万本以上が売れた。」

◇Orabrushの動画
http://www.youtube.com/user/curebadbreath?feature=watch


2)バイラルでなければならないということ

 「動画は必ずしも万人ウケする必要はない。特定のターゲットに絞ってもうまくいく。その例が、組み立て式のオモチャを販売するRokenbok社の動画だ。昔であれば、オモチャは店頭で見られたが、最近は専門店がどんどん閉店している。そんな中でRokenbokは、YouTubeで動画でオモチャが動く様子を紹介し、その魅力をアピールすることに成功した。」

◇Rokenbokの動画
http://www.youtube.com/user/rokenbok?ob=4&feature=results_main


3)ユーモアがなければならないということ

 「視聴者は面白い動画だけを探しているわけではなく、参考になったり、役に立つ動画も求めている。その良い例がCeilumeというタイル会社だ。彼らは、タイルを天井に貼り付ける際のコツを動画広告で説明したところ、合計の再生回数は100万を超え、売り上げが15%アップした。」

◇Ceilumeの動画
http://www.youtube.com/watch?v=fnoi4WqNAo0&feature=youtu.be


 Googleは設立以来、検索連動型広告などで中小企業でも使える広告プラットフォームを展開してきたと、スミス氏は語る。今回、本格的に展開を開始した動画広告向けAdWordsもターゲットは同様だ。「無名のミュージシャンやコメディアンがYouTubeで成功したのと同じようなことが、中小企業でもできる」といい、大企業のみならず、個人や中小企業の新規顧客開拓やブランド構築につなげてほしいと話している。


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(増田 覚)

2012/5/28 11:00