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マイクロソフト、サイバー犯罪対策センターの日本サテライトを開設

 日本マイクロソフト株式会社は18日、米国本社に設置しているサイバー犯罪対策の研究センター「サイバークライムセンター」の日本サテライトを開設し、政府機関や企業顧客に対する情報提供や技術支援を行っていくと発表した。

 2013年11月にマイクロソフトの米国本社に開設したサイバークライムセンターでは、サイバー犯罪対策部門「デジタルクライムユニット」の法律専門家や技術捜査員、データ分析専門家などが、マルウェアやボットネットの監視や情報収集を行っている。さらに、政府機関や企業などと連携して、法的措置などによりボットネットを崩壊させる「テイクダウン」にも取り組んでいる。

米国本社のサイバークライムセンター

 マイクロソフトでは、こうした活動から得た情報や知見を製品やクラウドサービスの技術開発に反映することで、ユーザーのより安全なIT環境の構築・維持に取り組んでいると説明。一方で、サイバー攻撃は多様化・激化の一途にあり、日本においても2020年にはオリンピック開催を控えているが、こうした国際的なイベントが開催されるたびに、開催国を狙った攻撃が急増する傾向にあることから、情報発信と関係団体との連携の拠点として日本サテライトを展開する。

 日本サテライトは、ワシントン、ベルリン、北京、シンガポールに続き、世界で5番目に開設されるサテライトとなる。マルウェアやボットネットの解析などは米国本社で行われ、サテライトには本社センターの最新データをリアルタイムに確認・分析できる環境を設置。こうしたデータをもとに、企業へのコンサルティングや、関係機関への情報提供などを行う。

 具体的な取り組みとしては、脅威情報の発信のほか、マイクロソフトが開発したサイバー犯罪対策技術の提供、政府機関へのソースコードの開示などの技術支援、ワークショップの開催などを挙げている。また、サイバー犯罪対策などで国際的な対応が必要となる場合には、日本サテライトが日本における窓口の役割を担い、政府機関と本社デジタルクライムユニットとの連携を橋渡しする。

5番目のサテライトとして日本サテライトを開設
政府機関や企業への情報提供、技術支援を行う

 日本マイクロソフトの樋口泰行代表取締役社長は、「日本は言語の壁などから、これまで攻撃対象になることが他の国に比べて少なかったが、最近では日本を標的にした攻撃も急増しており、オリンピックを控えて標的となる可能性はさらに高まってくる」と説明。マイクロソフトでも従来から日本政府の取り組みとの連携を行ってきたが、さらに詳細な情報提供や連携強化のため、サテライトを設置するとした。

マイクロソフトの樋口泰行社長
日本を標的としたサイバー攻撃も急増している

 米Microsoftデジタルクライムユニットのリチャード・ボスコビッチ氏は、これまでにも「Conficker」「Waledac」「Zeus」といった多数のボットネットのテイクダウンに取り組み、成果を上げてきたと説明。ボットネットの指令サーバーとして使われてきたドメイン名やIPアドレスなどを、Microsoftの管理下にある別のサーバーに置き換えることで情報を収集する「シンクホール」の取り組みでは、1日に5億件以上のトランザクションを処理しており、こうして得られたデータをマルウェアやボットネットの解析に利用している。

米Microsoftのリチャード・ボスコビッチ氏
これまで実施してきたボットネットのテイクダウン作戦
ボットネットの「シンクホール」では1日5億件のトランザクションを処理
世界中のボットネットや攻撃の状況をリアルタイムで分析できる

 また、デジタルクライムユニットの活動は、マルウェアとの戦いとともに、「ネット上の弱者の保護、被害者となりやすい人々の保護」も大きな柱となっているとして、マイクロソフトが開発した児童ポルノ画像検出技術「PhotoDNA」を紹介。一度出回った児童ポルノ画像が、加工などを施されてさらに拡散していくという状況に対抗するため、PhotoDNAでは画像から指紋のような個別のハッシュを作成し、加工された画像でも検出に対応する。PhotoDNAは、FacebookやTwitter、Googleといった世界50以上の組織に無料でライセンスしており、日本でも同様にオンラインサービス事業者や捜査機関などへの提供を進める。

児童ポルノ画像検出技術「PhotoDNA」を無料でライセンス提供

 樋口氏は、「日本の経済成長やイノベーションにはサイバー空間の成長が必要だが、そのためにはセキュリティの確保が不可欠」だとして、日本サテライトの開設により、日本のサイバーセキュリティの確保に貢献していくとした。

サイバー空間の成長のため、セキュリティの確保で貢献していくと説明

(三柳 英樹)