3月11日に家族・知人の安否確認で試みた方法、Twitterは5.5~6.6%

「インターネット白書2011」で見る最新動向(1)

 インターネットの最新動向についてとりまとめた「インターネット白書2011」(監修:財団法人インターネット協会、発行:株式会社インプレスジャパン)が7月29日に発売された。統計データなどを中心に、収録内容の一部を抜粋して紹介していく。

 「インターネット白書2011」は、A4変形判・240ページで、価格は7140円。付録CD-ROMにアンケート調査結果のグラフ画像データを収録しているのは例年どおり。さらに今年はインターネット白書初の試みとして、全編をPDF化した電子書籍版を同CD-ROMに収録。タブレット端末などで読めるようにした。

付録CD-ROMに収録の「インターネット白書2011」電子書籍版(巻頭カラーページ「3.11が突きつけたインターネットの課題」より)

東日本大震災でインターネットが果たした役割と課題を分析

 2011年版白書は、東日本大震災について大きく取り上げた点が特徴だ。

「インターネット白書2011」の表紙。3月11日に家族・知人の安否確認で試みた方法についてのアンケート調査結果をあしらった

 インターネット白書では従来、巻頭カラーページを、その年のインターネットに関する10大キーワードの解説に充てていた。これに対して今回は「3.11が突きつけたインターネットの課題」と題して、「通信ネットワーク」「エネルギー」「メディア」「デジタルデバイド」「コミュニティー」というキーワードで東日本大震災を振り返るパートとした。

 また、同じく従来はインターネットに関する1年間の主な出来事を月ごとの表にまとめていたカラーページも、3月11日から6月までの動向に絞ったかたちに変更している(1年間の主な出来事は、巻末のモノクロページに掲載)。

 続く本編の第1部も「震災とインターネット」がテーマ。2011年版白書の中で最多の60ページ以上をこのパートに割き、災害関連の各種情報を集約したYahoo! JAPANの災害プロジェクトやGoogleが立ち上げた安否確認サイト「パーソンファインダー」、オープンソースソフトウェアを活用して災害支援情報を地図上にマッピングした「sinsai.info」の取り組みをはじめ、携帯電話キャリアを中心に通信各社の復旧対応などを取材・レポートしている。

 Amazon.co.jpの「ほしい物リスト(ウィッシュリスト)」機能を活用して、支援物資における被災地ニーズと支援者のマッチングサービスを実現している事例も紹介。「義援金に比べて、自分の思い入れのある場所に、自分の決めたものを贈ることで、受け手と送り手の距離が近くなる効果がある」と指摘する。

 インターネットが大きな効果を発揮した反面、インターネットを利用していない人々や、インターネットを活用できる人がいない避難所では、情報入手や必要としている物資について情報発信が行えなず格差が生じたのも事実だという。白書では、インターネットの普及・活用面における東北エリアのデジタルデバイド問題を挙げ、「デジタルデバイドの解消が、災害発生時に生命・安全を保つ減災対策、あるいは復旧・復興の重要な鍵になる」としている。

 さらに、震災時のメディアの役割と課題に言及。3月11日当日の安否確認方法についてインターネットユーザーにアンケート調査した結果を紹介するとともに、Twitterの果たした役割や課題についても分析している。

震災当日の安否確認方法、最多は携帯電話、Twitterは少数

 アンケート調査は、インターネット白書で毎年実施している個人のインターネット利用動向調査とあわせて行ったもの。自宅からインターネットを利用する13歳以上の男女3321人が対象で、5月にウェブ調査で実施した。ただし、被害の特に大きかった岩手、宮城、福島の3県のユーザーについては調査を見合わせたため、これを除く44都道府県のユーザーの利用動向ということになる。

 調査では、震災当日に家族や知人の安否を確認しようとした方法をたずねた結果について、確認相手の居住地別に、1)震災を受け、現在も日常生活が著しく困難な地域に家族や知人がいる人(181人)、2)震災を受け、一時的に日常生活が困難だった地域に家族や知人がいる人(778人)、3)地震は発生したが日常生活にはほとんど影響がなかった地域に家族や知人がいる人(1221人)――という3グループを抽出して集計した。

 これによると、いずれのグループでも最も多かったのは「携帯電話」だった。1)のグループで73.5%、2)で70.8%、3)で58.5%となっている。2番目に多かった「携帯電話のメール」は、1)で66.3%、2)で67.1%、3)で51.6%。次いで「固定電話」が、1)で44.8%、2)で34.1%、3)で31.4%となっている。

 このほかの方法は比率が大きく下がり、例えば1)のグループでは、「パソコンのメール」が19.3%、mixiやFacebookなどの「SNS」が14.4%、「公衆電話」が9.9%、「Twitter」「災害用伝言ダイヤル」がともに6.6%、「災害用伝言板サービス(携帯電話)」が4.4%、「災害用伝言板サービス(PC)」が2.8%と続く。

震災当日に安否確認しようとした方法(家族/知人の居住地別)

 なお、1)のグループの人ほど、安否情報を入手できるまで多くの方法を試みたとしており、同グループでは平均2.7の方法を試みていたという。2)では2.4、3)では2.2.だった。

安否確認の“達成率”では、TwitterとSNSが上位に

 試みた方法で実際に安否を確認できた“達成率”についても算出している。地震当日は携帯電話がつながりにくい状況だったこともあり、達成率が最も高かった方法が「携帯電話」ではなかったことも数字に現れた。

 平均では、「Twitter」の80.5%、「SNS」の78.6%、「携帯電話のメール」の77.1%、「公衆電話」の67.8%、「パソコンのメール」の64.6%と続き、「携帯電話」は57.8%にとどまる。

 白書では「Twitter」と「SNS」について、「利用した人は必ずしも多くはなかったが、一度に多くの人に対して情報を伝えることができるといった特徴もあり、その達成率は高いことがわかる」としている。なお、同じアンケート調査によれば、調査対象全体3321人の平時における「Twitter」の利用者率は16.2%。

 地震の翌日以降の達成率をみると、「SNS」の91.5%をはじめ、「携帯電話のメール」が89.0%、「パソコンのメール」が84.7%、「Twitter」が84.1%、「携帯電話」が77.2%、「固定電話」が76.6%など、一部の方法を除き軒並み達成率が改善されていたこともわかった。

安否確認の方法別達成率(当日/翌日以降)

 なお、「Twitter」の当日の達成率についてはグループによって大きな差があり、2)のグループが76.7%、3)が86.1%と高かったのに対し、1)のグループでは50.0%にとどまっている。一方、「SNS」ではグループによる大きな差はなく、いずれも達成率は高い。1)で73.1%、2)で80.6%、3)で81.0%となっている。

震災当日に安否確認の方法別達成率(家族/知人の居住地別)

東日本大震災でのTwitterの使われ方、「ツイナビ」編集長がまとめ

 Twitterについては、Twitter公式ナビゲーションサイト「ツイナビ」の編集長である山本裕介氏(株式会社CGMマーケティング)の話をもとに、地震発生後の使用状況について解説。帰宅困難者の受け入れ先施設の情報の発信・共有に使われたツイートの事例をはじめ、その後の自治体や東京電力による公式アカウントの新規開設・情報提供、支援物資の提供呼び掛けなど、使用目的が変化していった経緯をまとめている。

 山本氏はまた、誤った情報がリツイートされることでデマが拡散してしまったケースにも言及。“非公式RT”の問題点、情報源を確認してからRTするといったルール/リテラシーを定着させることの重要性、デバイスによって使われ方が異なることを考慮する必要性などを指摘している。携帯電話ユーザーが「ツイートの中のリンク先まで確認せず、ツイート内の文字そのものを情報として取得する傾向がある」のだという。

 さらに本来はユーザー主体のハッシュタグについて、今回の震災では情報を整理する目的で、サービス運営側が公式ハッシュタグを用意したことも説明。今後もハッシュタグを運営側でコントロールする予定はないとしながらも、緊急時において拡散する情報を整理する手段を検討する必要性もあると述べるなど、今後の課題も提示している。


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(永沢 茂)

2011/8/3 11:00