特別企画

電子書籍ストアサービスを徹底比較(前編)

 電子書籍業界において2012年という年は、楽天がkoboを買収して電子書籍市場に参入、海外ではすでにサービスを展開していたKindleがついに日本展開を開始するなど、大きな変化があった1年だった。

 こうした新サービスの登場に加えて、電子ペーパー搭載の電子書籍端末が拡充されたことも2012年におけるトピックの1つ。楽天koboは「kobo Touch」を皮切りに「kobo glo」「kobo mini」と3種類の端末を展開し、Kindleは「Kindle Paperwhite」「Kindle Paperwhite 3G」の2モデルを投入。電子ペーパー搭載端末で先行するソニーの「Reader Store」も新モデル「PRS-T2」の発売や過去モデルの価格改定を実施し、凸版印刷グループのBookLive!も「Lideo」を発売。サービスと端末両方の面から電子書籍を読むための環境が急速に充実した年といえる。

kobo Touch
Kindle Paperwhite
Sony Reader PRS-T2
BookLive! Lideo

 今回は独自の電子書籍端末を展開するBookLive!、Reader Store、Kindle、楽天koboを中心に端末や電子書籍のラインアップ、サービスの使い勝手などを比較する。

電子書籍のラインアップはBookLive!、Reader Storeの2強体制

 電子書籍サービスを選ぶ際に最も気になる点は「自分の欲しい本が買えるか」だろう。今回取り上げる4つのサービスが公表している数値を下記にまとめた。なお、Kindleストアに関しては最新の数値が公表されていないため、電子書籍のカテゴリを合計した数値を暫定値として算出。複数のカテゴリに登録されている書籍も多いため、あくまで目安として捉えて欲しい。

【各サービスの書籍数比較(2012年12月28日現在)】
サービス名 BookLive!! Reader Store Kindleストア 楽天kobo
冊数 約11万8000冊 約7万8000冊 約7万4000冊 約11万冊
備考 タイトル数約8万冊 無料約2000冊 うちコミック約2万1000冊 有料書籍は約6万6000冊

※Kindleストアはカテゴリごとの数値を合計したため実数とは異なる
※楽天koboは青空文庫約1万冊、楽譜約3万冊、歴史的古文書約3,600冊、Wikipedia作家情報約500冊を含む

 楽天の場合は青空文庫や楽譜などの冊数が多く、これらの数値を引いた有料の書籍としての実数は2012年12月28日時点で約6万6,000冊程度と見られる。Kindleストアがカテゴリから算出した概数のために正確な数値が把握できないものの、公表されている数値ではBookLive!、Reader Store、Kindleストア、楽天koboという順番のようだ。

 しかし、全体の冊数だけでは実際にどれだけ書籍がそろっているのかをつかみにくいため、次に実際に書籍を検索してその結果を比較。書籍に関しては人気作家を5人ピックアップし、その検索結果を比較した。

【人気作家名での書籍検索結果比較(2012年12月28日現在)】
作家 代表作 BookLive! Reader Store Kindle kobo
伊坂幸太郎 「アヒルと鴨のコインロッカー」など 21 21 14 10
貴志祐介 「悪の教典」「新世界より」など 13 13 12 10
横山秀夫 「半落ち」「臨場」など 18 18 16 13
山田悠介 「リアル鬼ごっこ」など 18 18 13 11
誉田哲也 「ストロベリーナイト」など 32 32 24 9

※コミック化された作品は除外

 いずれも多少の差はあるものの、BookLive!とReader Storeの2強にKindleストアが続き、間を空けて楽天koboという順序になっている。もちろんこれはあくまで一例であり、対象となる作家を変えれば順位にも変化は生じるものの、日頃から電子書籍を利用しているユーザーの体感としてはかなり近い感覚だ。

 コミックについてはタイトルごとに検索を行なったものの、集英社や小学館、講談社の人気タイトルについてはほぼ横並び状態で、一部のタイトルはKindleストアや楽天koboでは取り扱われてないなど細かな差がある程度だった。

【コミック名での検索結果比較(2012年12月28日現在)】
タイトル 出版社 BookLive! Reader Store Kindle kobo
鋼の錬金術師 スクウェア・エニックス ×
ジョジョの奇妙な冒険 集英社 △※
ちはやふる 講談社
帯をギュッとね! 小学館 × ×
進撃の巨人 講談社

※モノクロ版のみでカラー版は非対応

 ただし、コミックに関しては完結していない作品の場合最新タイトルまで取り扱われていないケースがほとんど。「進撃の巨人」は最新巻が9巻に対して7巻まで、「ちはやふる」は最新巻19巻に対して13巻までと、最新コミックを楽しめる環境とは言いがたい。現状の電子コミックは、すでに完結した作品を楽しむ程度というのが現状だ。

 BookLive!とReader Storeは書籍とコミック以外に雑誌コンテンツも展開。ラインアップは2サービスともほぼ同等で、写真週刊誌や情報誌、経済誌などが中心に取りそろえられている。

端末の対応状況はBookLive!が充実。Reader Storeと楽天koboはiOS非対応

 電子書籍を読むための端末対応状況も比較。電子書籍ならではのメリットである、複数の端末で同じ書籍を読む際の機能や利用制限についても比較した。また、細かなスペックの比較は「6インチ電子ペーパー搭載の電子書籍端末、どれを選ぶ? 4社・4機種まとめ http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20121210_577036.html」も参照して欲しい。

【各サービスの対応端末状況】
端末 BookLive! Reader Store Kindleストア 楽天kobo
Windows × × ×
iPhone/iPad × ×
Android
電子書籍端末
その他 Windows Phone PlayStation Vita Kindle Fire
同時利用端末 5台 5台 無制限 非公表(※)

※楽天koboは、少なくとも10台は同一IDで利用可能であることが実際に試して確認済み。利用制限がない可能性もあるが、コンテンツにより違う可能性もある。

 端末の対応状況ではBookLive!がWindows PhoneとPCにも対応しておりもっとも充実。Reader StoreはPlayStation Vitaにも対応しているが、現状ではVitaで利用できるのはコミックのみで書籍は利用できない。

 スマートフォンとしてはいずれのサービスもAndroidをサポートし、しおりの同期機能も備えているため、Androidユーザーであれば集中して読むときは電子書籍リーダー、移動中など手軽に読む時はAndroidといった使い分けが可能だ。一方でReader Storeと楽天koboはスマートフォンの主流と言えるiOSに対応していないのが難点。楽天koboのiOSアプリは近日公開を予定すると11月に発表があったが現時点でまだ公開されておらず、ユーザーの利便性を考えると一刻も早いリリースを望みたいところだ。

 電子書籍リーダーの基本スペックはどのサービスも6インチサイズの電子ペーパー搭載モデルを展開。さらに楽天は5インチの小型モデル「kobo mini」とフロントライト搭載の「kobo glo」、KindleはAndroidベースの「Kindle Fire」「Kindle Fire HD」をラインアップしている。

 電子ペーパー搭載モデルの読みやすさはフロントライト搭載モデルのほうが上だが、現在のところBookLive!とReader Storeではフロントライト搭載モデルがラインアップに存在せず、Kindleの場合はフロントライト搭載の「Kindle Paperwhite 3G」「Kindle Paperwhite」のみ。フロントライトの搭載有無で選択できるのは楽天koboだけという状況のため、現状では端末の選択に影響を与える要素ではないと言っていいだろう。

 また、kindle Paperwhite 3GはNTTドコモ、Reader Storeの「PRS-G1」はau、BookLive!の「Lideo」はUQ WiMAXの通信回線を内蔵しているが、Kindle Paperwhite 3GとLideoは購入時から通信回線を利用でき、料金も無料なのに対し、PRS-G1は初回1年が無料、2年目は電子書籍を購入すれば無料と無料期間は実質2年間のみなほか、利用にはPCを利用した開通手続きが必要なためやや煩雑だ。通信回線内蔵モデルは外出時でも単体で書籍が購入できるなどメリットが大きいが、こうした違いは把握しておくといいだろう。

端末の同時利用はKindleとkoboが自由度が高い

 同時利用端末の台数はBookLive!とReader Storeが最大5台までに制限。Kindleストアは端末数自体は無制限で、同じ書籍を読める端末の数が出版社によって異なる(基本は6台)と自由度が高い。楽天koboは同時利用端末数を「非公表」としているが、Impress Watch編集部に協力してもらって試したところ、10台のAndroidで同時に利用が可能だった。今回は10台までしか検証できていないが、実質的な制限はないという可能性もありそうだ(ただし、Kindleストア同様、出版社により制限がかかっている可能性もある)。

 端末数に制限をかけているBookLive!とReader Storeも細かな仕様が異なり、上限に達した際の端末交換回数はReader Storeの場合無制限であるのに対し、BookLive!では年間10台までと交換台数が決められており、上限に達してしまうと交換回数がリセットされる期間までは新たに端末を追加できない。上限5台と交換10台という数値は一般的な利用では十二分な数値だが、年に10台以上入れ替える可能性があるユーザーは、上限があることは覚えておいた方が良いだろう。

端末登録数や交換回数に上限のあるBookLive!

 一方、Reader Storeは端末交換回数に制限はないものの、上限に達した場合は解除したい端末からの解除処理が必要。手元に端末が存在しない、故障して動作しない、アプリをインストールしたスマートフォンを初期化してしまった――などの場合には、サポートに問い合わせて解除してもらう必要がある。この点、BookLive!はWebサイトの管理画面から任意の端末の解除が可能だ。どちらも一長一短ではあるものの、海外系の電子書籍サービスではそもそも存在しない悩みであり、国内サービスにおいてはヘビーユーザーほど制限が厳しくなるこの状況を改善して欲しいと感じる。

Reader Storeは交換回数の制限はないが、端末からの解除操作が必要

タイトルごと管理で目的の書籍が探しやすいBookLive!

 購入してすぐに読み始めることができる書籍と異なり、電子書籍は購入のためのフローが煩雑になりやすい。また、欲しい本を見つけたくても店員に聞くことはできず、自分で検索して探し出す必要がある。

 電子書籍の購入するまでの流れでは、作品検索や五十音順インデックスに加え、各ジャンルごとの定番書籍を紹介するコーナーなど特集が充実しているBookLive!が使いやすい。何よりBookLive!では冊数ではなくタイトル数で管理されているため、上下巻の大作やコミックなどのシリーズ作品の検索性が非常に高い。

BookLive!は作品をタイトルごと管理

 Reader Storeも書籍のジャンル別分類や著者名、出版社の五十音インデックス、新書や文庫のレーベル別分類などカテゴリは充実。一方、作品は書籍単位で表示されるため、タイトルが似たコミックなどを検索する際にはBookLive!のほうが使いやすい。

Reader Storeは書籍単位

 Kindleストア、楽天koboはランキングや特集などはあるものの、BookLive!とReader Storeに比べるとシンプルな構成。一方、Kindleストアについては検索キーワードと異なる書籍だけでなく、書籍ではない商品も検索結果に含まれるためわかりにくい。明らかに書籍でない商品であればともかく、作家名で検索しても別の作家の作品が検索結果に表われることもあり、注意していないと異なる書籍を買ってしまう可能性もある。

楽天koboも書籍単位
検索キーワードと関係ない書籍も表示されるKindleストア。画面は「進撃の巨人」で検索した結果

(明日の後編につづく)

(甲斐 祐樹)