本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわるニュースやトレンドを、政府が絡む堅い話から三面記事まで幅広くレポートしていきます。
■弁護士が著作権侵害でアップルを提訴~販売製品に海賊版動画
雲南省の法律事務所で働く張宏雷氏は、雲南省昆明市のアップル代理店が扱う同社製品に、海賊版の中国韓国のドラマや映画が多数入っていることを突き止めた。これにより、張宏雷氏は4月9日、総額50万元(約730万円)の損害賠償を各コンテンツホルダーに支払うようアップルを提訴。張宏雷氏は「4月26日に世界知的所有権の日が来るのを控え、著作権保護をアピールすべく調査を行い、提訴に踏み切った」とコメントしている。
なお、アップル製品に限らず、販売される携帯音楽プレーヤーやパソコン本体は、販売者がサービスとして音楽や映像をあらかじめ入れて売るという著作権侵害行為が、中国では常態化している。
■中国ネット利用者、3億1600万人に
CNNIC(China Internet Network Information Center)によれば、中国のインターネット利用者が、2009年第一四半期の期間に1620万人増加し、3月末の時点で3億1600万人となった。
■海外の未許可動画コンテンツが禁止に?
メディアをコントロールする国家機関である「中国国家広播電影電視総局」(略称「広電総局」)は、動画コンテンツの配信の禁止令「関于加強互聯網視听節目内容管理的通知(ネット動画コンテンツ管理強化に関する通知)」を発表した。
中国のメディアは、日本アニメやハリウッド映画や韓流ドラマなど、中国で人気の非正規流通版が管理の対象になると解釈。消費者の視点から「中国で最も視聴されている人気コンテンツの危機」「今年最大の動画関連の禁止令」と報道した。
同通知では、「国家統一や、国家の安全や栄誉や利益の危害となる動画、国家の秘密を漏らす動画」「邪教や迷信に関する動画」「暴力的ないし、道徳的でない不健康な動画」「プライバシーを侵害するものや他人を辱める動画」「国家広播電影電視総局が禁止する動画」「その他国家法律で禁止する動画」などを禁止対象として規定。
中国メディアでは外国のコンテンツが視聴できなくなると解釈していたが、5月5日現在、動画共有サイトのYOUKU(優酷網)では、正規版と海賊版の別を問わず、引き続き日本アニメなどを配信していることが確認できる。
中国国内で外国のビデオゲームの販売禁止ルール「44号文書」というものがあるが、日本のゲーム機が販売されるゲームショップや、日本のゲームが並ぶゲームセンターが当たり前にあり黙認される一方で、日系メーカーなどは中国に正規版ゲームを輸入できないという状況となっている。
外国の動画コンテンツがいまでも視聴できる現状から、同通知も44号文書(GAME Watchの記事、こちらとこちらを参照)と同様に、実際のところは外国メーカーの中国市場進出を法規制する一方で、中国の消費者に甘いルールとなっている可能性はある。
■金融危機で広がるオンラインショッピング
金融危機により、欲しいモノがあってもすぐ飛びつくのではなく、冷静に比較して少しでも安く買おうとする消費者が急増、オンラインショッピング市場は拡大した。
中国のリサーチ会社、易観国際(Analysys International)によれば、2009年第1四半期のB2Cオンラインショッピング市場は、前年同期比173%増、前期比24.1%増となる34億9600万元(約510億円)と大きく成長。同四半期のC2Cオンラインショッピング市場も好調で、前年同期比115%増、前期比19%増となる440億7100万元(約6400億円)を記録した。
中国のオンラインショッピングはSARS大流行時、家から出たくない大都市部のインターネット利用者により開花した。新型インフルエンザが中国国内でも蔓延することが中国国内で明らかになれば、中国全土の都市部を中心に、オンラインショッピングを利用し、オンラインショッピング市場はさらに急激に拡大するだろう。
一方でオンライン人材サービス市場は、同社のレポートによると、前期比2.7%減となる2億8700万元(約41億5000万元)に。2期連続で前期比減となる結果となった。同レポートでは、節約志向でオンラインショッピングが伸びた背景に、国際的な金融危機があると分析している。
■ディズニー、オンラインショッピングサイトに参入
中国のオンラインショッピングサイトに日本企業が続々と参加する中、今度はウォルトディズニーがディズニーグッズ販売でオンラインショッピングサイト参入を発表した。中国全土の300都市での配送に対応するほか、また中国最大の第三者支払いサービス「支付宝(アリペイ)」の対応で、顧客を呼び込もうとしている。
■中国でもネット普及で紙媒体市場に影響
ネットメディアを研究する、北京ネットメディア(網絡媒体)協会会長の閔大洪氏は、ポータルサイト「網易(NetEase)」のインタビューに対し、「既にネットメディアが紙媒体市場に影響を与えている」という旨のコメントをした。
これまで中国では、ネットメディアの普及が新聞雑誌など紙メディアの市場に影響を及ぼしているという意見を報道で目にすることはほとんどなかった。しかし、今後は大都市部を中心に、ネット先進国と同様な紙媒体市場の縮小やメディアの淘汰が進んでいくと思われる。
■人気ネット小説家、最新作は5日で50万アクセス
人気ネット小説家の血紅氏が最新ネット小説「逍行紀」を公開。公開から5日で50万アクセスを記録。感想の書き込みは2万3000に上った。「逍行紀」は中国で人気の「仙侠」と呼ばれる中国の中世世界が舞台のファンタジー小説だ。
作者の血紅氏は30歳の男性で、サラリーマンを辞めネット小説家に転身。現在までネット上で10数作の小説を発表。年収は300万元(約4500万円)とも言われている。
■工商総局「非合法ネットカフェを5年で13万件摘発」
国家工商総局は、2008年の同局の非合法ネットカフェ取り締まり結果を発表した。登記済みのネットカフェ12万2000店、非合法なネットカフェ5562店をチェック。1万3000店のネットカフェを取り締まったという。2004年からの取り締まり開始依頼、13万店に及ぶネットカフェを取り締まったという。特に農村や学校の周辺などに非合法なネットカフェは集中し、反乱していると同局は指摘。
易観国際によれば、ネットカフェを利用するインターネット利用者は2008年の1年間で5500万人増加したという。また2008年末にはネットカフェの数は14万7000店に達したという。となれば一店あたりの利用者数は非常に多く、同局が取り締まりを続けても、甘い汁を求め、非合法なネットカフェの開店ラッシュはまだ続くだろう。
■Facebook似のケータイ向けSNSサイト、1億PV/日を突破
FaceBookに非常に外見のよく似た中国のSNSサービス「校内網」のケータイ向けサイトが1億PV/日を突破を記録した。MMS(Multimedia Messaging Service)でのアップデート機能を付加、ゲーム拡充などサービスを強化したことで、強化前に比べPVが1.5倍に伸びたという。
2008年、校内網はソフトバンクが買収、同社の傘下となっている。4月から5月にかけ、W-CDMAとCDMA2000のサービスが中国で開始されたことで、ソフトバンクの3Gサービスの経験・ノウハウを校内網に投入していくことが予想される。
■百度、日本で携帯電話向け検索サービスを検討
百度(バイドゥ)CTOの李一男氏は、中国の携帯電話向けの検索サイト「掌上百度」を投入したことを発表。「世界で最も携帯電話インターネット市場が発達している」日本市場に向け、検索サービスを投入することも合わせて発表した。
■オンラインショッピングサイトが不良店舗や不良品対策
人気チャットソフトQQの騰訊(Tencent)が運営するオンラインショッピングサイト「拍拍網」が、食品、化粧品、医療機器などのチェックを厳しくすると発表した。
オンラインショッピングの利用拡大とともに、「拍拍網」に限らず、中国のあらゆるオンラインショッピングサイトで多数の悪質なニセモノや不良品が見られるようになった。このため、「拍拍網」では生活に密着する品目についてチェックを強化した。チェックではねられた不良品の中には、メラミン事件のきっかけとなった三鹿ブランドの粉ミルクの在庫処分品などもあったという。
またオンラインショッピングサイト最大手の「淘宝網」も、素行の悪い販売店に対して強制的な店舗閉鎖・永久的に登録不可能になるような対策を発表した。
今回実施された対処の背景として、3月15日に国家工商総局が発表した、消費者向け不良商品についての統計調査「2008年消費者申訴十大熱点」がある。オンラインショッピングで販売される不良品が急増したという調査結果が明らかになり、オンラインショッピングサイトにおける不良商品販売に注目が集まっていた。
■ノキア、動画共有サイト「YOUKU」上で発表会
ノキアは人気の動画共有サイト「YOUKU(優酷網)」上で同社の携帯電話最新モデル、「Nokia 5800」のキャンペーン活動をライブ配信した。ライブは4月19日の19時から22時まで3時間にわたって行われたが、ノキアからの一方的な配信ではなく、視聴者のリアルタイムなニーズを受け取り、それに合わせて進行するという双方向性が盛り込まれた。
ノキアとの関係が良好となった「優酷網」は、中国の3G時代突入を見据えて、ノキアとの携帯電話方面での提携を考えていると言われている。
■勤務中でもチャットできる偽装ソフトが人気
中国でのPC普及の牽引役に、インスタントメッセンジャー(チャットソフト)が挙げられる。その人気ぶりは、勤務中にもチャットで友人とコミュニケーションを絶やさないという人が多いと指摘されるほど。そうしたインスタントメッセンジャーをWordやExcelの画面に埋め込み、仕事中にも利用できるようにする偽装ソフト「JustChat」が4月に登場、大反響となった。
インスタントメッセンジャーの利用者数は、2008年末の時点で、アクティブチャットアカウントが前年同期比25%増の4億8882万と依然として伸びており、5億に迫る勢いだ。シェア内訳は、最大手の騰訊(Tencent)のQQが3億7850万で、飛信の2921万、MSNの2180万とつづく(易観国際調べ)。
■関連記事
山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国の「愛国行動」をネットから分析する
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/04/25/19367.html
(2009/05/13)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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