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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
年末特集:2007年の中国インターネットを振り返る

 2007年も残りわずか。中国は旧正月のため、年越しまでにはまだ1~2カ月ばかり余裕があるが、2007年の中国インターネット事件をお先に振り返ろう。筆者の連載「マンスリー・チャイナネット事件簿」で書いていないこともあるので、同連載の読者も改めて当記事を読んでいただければ幸いだ。

 ちなみに、中国で2007年を通して、ネット上で最も多く話題となったキーワードの1つが「豚」だという(中国メディア「信息時報」より)。2007年は日本の干支で「猪年」だが、中国では「豚年」となる。また、2007年の中国では日本とは比較にならないほど物価が上昇したが、中でも豚肉は最も顕著な値上がりをした商品の1つだ。こうしたことから、株式投資に盛り上がる中国において、投資関連以外で最もネット上で話題となったキーワードが「豚」だったとのことだ。



中国のウイルス、「お祈りパンダ」が大ブレイク【1月】

 数あるウイルスの中で、今年中国で最も話題となったのが、日本のメディアでも「お祈りパンダ」として取り上げられたウイルスこと「熊猫焼香(Worm.whboy.h)」だ。

 「お祈りパンダ」に感染すると、全ファイルのアイコンが焼香するパンダのアイコンに変わる。中国国内では数百万台のPCが感染した。年初に最も話題となったが、このウイルス自身は2006年10月から存在していた。

 このウイルスの作者は2007年2月初旬に逮捕され、獄中でワクチンプログラムを開発。その後、懲役4年の実刑判決が下され、共謀者にも1年から2年6カ月の実刑判決が下った。一方で犯人の実力を買ってスカウトする会社が出現した、という唖然とする話も報道された。

 2007年の中国のウイルスといえば「お祈りパンダ」がすぐ浮かぶほど有名だが、そのほか変わったウイルスとしては、中国人による簡体字中国語OSには被害を与えず、それ以外の言語のOS搭載のPCに被害を与える「愛国ウイルス(Win32/KillDPT)」が10月に登場している。

 この愛国ウイルスは、簡体字中国語のOSであれば自ら消え、繁体字中国 語のOSであれば大陸の愛国者的メッセージを表示し、中国語以外の外国語OS(日本語版含む)であればハードディスク上のデータを破壊する。なお、中国ではこの類の愛国系ウイルスは数年前にも出現している。


中国最大の検索ポータル「百度」、日本進出【3月】

 中国では最大の検索ポータル「百度」が日本に3月に進出した。日本進出から3カ月経った6月には、前ソニー会長の出井伸之氏が社外取締役に就任したことでも話題となった。

 しかし、サービス開始当初は検索結果でポルノ画像がほとんどフィルタリングされない状態で表示されていた。このため、百度日本へのアクセスは中国本土からのアクセスがほとんどを占め、ついに中国当局により、百度日本へのアクセスが禁止されてしまう事態にまでなった。

 百度が進出した後も、日本の検索市場では相変わらずYahoo! JAPANやGoogleが強く、日本における百度の進化は動画検索サービスの追加程度に止まっている。

 一方、百度の本国である中国では、2007年も多数の新サービスが提供された。なかでも、中国で人気のオンラインショッピングに百度も参入するという発表は大きな話題となった。しかし、百度によれば、百度日本への投資額はオンラインショッピング事業への投資額よりも多いのだという。


シマンテックのセキュリティ製品で中文版Windows XPがフリーズ【5月】

 シマンテックのセキュリティ製品が、簡体字中文版Windows XPのシステムファイルの一部をウイルスと誤認識し消去した結果、システムが起動できなくなるというトラブルが5月に発生した。

 原因はシマンテック社が配信したアップデータで、これを適用するとWindows XPのシステムファイルの1部を消してしまうという問題があった。シマンテック社はすぐにこの問題に気づいいて当該アップデータの配信を止めたが、Windows Vistaへの移行が遅々として進まない中国において、ほとんどのPCユーザーのOSがWindows XPであったことから、数百万台ともいわれるPCが被害に遭ってしまった。

 また、問題が起こった後のシマンテックの対応について、中国国内では競合他社と比べて「反応が遅く大陸ユーザーをおろそかにした」という声が多く、この点についても非難が集中した。


“ドメイン取得費1元”でcnドメイン数急上昇【5月】

 中国ではCNNICが主体となって、5月31日より12月31日まで、cnドメインが1元で取得できるキャンペーンを実施した。その結果、2007年6月末時点で中国のドメイン総数は前年比211%増の918万となった。うち、CNドメインは前年比416%増の615万となり、キャンペーンを機にcnドメインが猛烈な伸びを見せた。

 ICCANのプレジデント兼CEOの豪Paul Twomey氏は「12月にcnドメインは1,000万を越え、ドメイン数で世界一になるのではないか」とコメントしている。


ハリー・ポッター、英語版発売から数日で中文の海賊版【7月】

 ハリー・ポッター第7巻が全世界で発売された。中国語版は英語版から遅れて発売されたのだが、英語版発売からわずか数日で海賊版の中国語翻訳がインターネット上にアップされた。

 この海賊版は、学生を主としたオンライン上の翻訳グループが翻訳したものだが、当然これは版権所有者の怒りを買った。しかし、学生らは「趣味でやっているだけ」とあくまで強気。さらには、海賊版に止まらず、「ハリー・ポッターと中華帝国」などのオリジナル(?)な偽作までが出回る騒ぎになった。

 正式版が発売された際には、中国の多くのメディアでは発売のニュースとともに「中国国内の海賊版問題をどうすればいいのか」「なぜ中国でハリー・ポッターは産まれないのか」といった問題を提起した。


中国ハッカーが独米英の政府システムに攻撃【9月】

 中国国内のハッカーが中国政府のサイトや著名サイトを攻撃するニュースは月に何度か見かけるようになり、もはや中国国内のハッカーによるサイト攻撃のニュースは珍しい話題ではなくなった。

 だが、そうした状況の中でも、9月に起きたハッカー事件は大きな話題となった。米国防総省をはじめ、ドイツやイギリスの政府機関への中国人民解放軍からと推察されるハッカー侵入事件だ。中国でも、インターネット上のメディアでは、通常ひとつのニュースに対して様々な論調が見られるのだが、このハッカー事件についてはどのメディアも一様に否定的な論調で報道した。


幻の「華南虎」写真公開にコラージュ疑惑の声【10月】

 古都西安のある陝西省の林業庁は10月12日、1人の猟人が幻の華南虎を発見し、猟人のデジカメに収めたとして写真を公開した。華南虎は1983年を最後にその存在は確認されていない、今では幻の動物だ。本物ならばスクープ写真だ。しかし、写真公開から3日後、あるネットユーザーが虎の写真を風景に貼り付けたものではないかという分析を発表。偽造写真ではないかという推測がネットユーザーの間で一気に広まった。

 「華南虎事件」と名づけられ有名になったこのニュースに対して、中国メディアは独自の検証記事を大きく掲載した。政府見解としては「本物とも偽物とも判断できない」というコメントを報じたが、ネットのアンケートでは、大多数のユーザーが「偽物でコラージュされたもの」と考えていることが明らかになった。この事件をきっかけに、華南虎のパロディといえるコラージュ写真がさまざまなところで投稿された。

 ちなみに、中国初の月周回衛星「嫦娥(じょうが)1号」によって撮影された月の画像にニセモノという疑惑がかけられた。これには、華南虎事件の影響もあると思われる。


B2BのAlibaba.com上場。中国IT企業最大規模のIPOに【11月】

 中国の富裕層の間では、株式取引がブームとなっている。2007年は、例年以上に多くの企業が、香港やニューヨーク、上海などの株式市場に上場した年でもあった。

 中でも、最も話題になったのが、B2Bサイトの「Alibaba.com」の香港証券取引所への上場だ。中国の他サイトの上場と比べ、著名なサイトとなってからもなかなか上場しなかったために、結果として百度の上場を越える、中国IT企業では最大規模のIPOとなった。

 ちなみに、Alibaba.comなどを束ねるAlibaba Holdingsには、日本のソフトバンクが出資しており、創設者の馬云氏はソフトバンクの社外取締役に就任しているなど、ソフトバンクとAlibabaは密接な関係を持つ。Alibabaの日本向けサイトはこの12月にリニューアルされたが、これにもソフトバンクが一部携わっているとのことだ。


略奪婚カップル、妻が前妻の悪口を書いたブログが大炎上【12月】

 日本でも個人ブログやmixi日記が炎上する例が相次いでいるが、中国でも、1つのブログに4~5万のコメントがつくという大炎上がこの12月に起きた。

 このブログ炎上事件は、「3377事件」と呼ばれている。妻子持ちの男性(ハンドルネーム「77」)と不倫の関係になり、その後その男性と結婚した女性(ハンドルネーム「33」)がいた。この「33」という女性が、77氏の前妻の罵詈雑言や、現在の生活がどれだけ豊かかということや、自身の金銭獲得に関する腐敗の実態を33氏自身のブログに多数書き込んだ。

 ところが、実はこの「33」による生活の自慢話は、他人のブログの丸写しだった。このブログを、前妻の友人が発見し、33氏と77氏の実態を自身のブログで暴露。これが広まり、33氏のブログが2007年最大の炎上事件となるに至った。

 日本国内でも2ちゃんねるでお馴染みの流れだが、中国でもネチズンが一体となって33氏と77氏の住所や現職を暴き、77氏の父親が地方のテレビ局の上層部の人間であることまで明らかになった。一部のネチズンは、そのテレビ局にまで抗議電話をかけるなどして、関係者の現実生活にまで影響を及ぼす騒ぎとなった。

 中国メディアも、この3377事件について報道。しかし、テレビ局上層部の人間である77氏の父親の存在が影響しているのか、湾曲的な表現の報道となっていたりしたことがネチズンの反感を買い、炎上に油を注ぐ結果になった。

 こうしてエスカレートした騒動の一方で、今回のネチズンの行動はやりすぎと批判するブロガーも現われ、この3377事件については、ブログのあり方、メディアのあり方、ネチズンの行動のあり方が問われる事件となった。


明暗を分けたmp3検索サービス裁判~百度は無罪、ヤフー中国は有罪【12月】

 2005年より、ワーナーミュージック、ユニバーサル、EMIなど大手レーベル会社の連合が、百度と雅虎中国(ヤフー中国)それぞれに対して損害賠償を求めて提訴していた。

 この訴訟では、レーベル企業連合が、「百度とヤフー中国が提供するmp3検索サービスは海賊版コンテンツダウンロードをほう助している」として、両社それぞれを相手取って損害賠償請求およびサービスの停止を訴えていた。

 裁判所は、4月にヤフー中国の裁判に対して有罪の判決を下し、ヤフー中国は控訴したが、この12月に控訴が棄却された。一方、同じこの12月、百度の裁判では無罪の判決が下された。

 百度が無罪、ヤフー中国が有罪となった相違点としては、こうしたサービスの違法性について定めた「信息網絡伝播権保護条例」は2006年7月に施行されたが、百度を提訴したのはその条例の前の話であり、ヤフー中国を提訴したのはその条例の施行後であるため、と中国メディアでは分析している。



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  山谷剛史の海外レポート
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
  中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
  ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html

(2007/12/27)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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