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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
2008年11月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。


「ネット依存症」を定義し精神病と認定

 インターネット依存症を定義し、インターネット依存症と認められた場合には精神病と認定されることが決まり、物議を醸した。

 11月8日、北京軍区総医院が、「インターネット依存症臨床診断標準」を作成した。これは、仕事や勉強と関係ないことがために1日6時間以上インターネットを利用し、その生活を3ヶ月以上続けた人をインターネット依存症と定義し、それは精神病のひとつと認定するというもの。

 このニュースが紹介された後、多くの掲示板上で物議を巻き起こし、「インターネット依存症がなぜ精神病になるのか?」「薬を投与すればインターネット依存症は治るというのか?」「インターネット依存症患者が犯罪したときの責任能力は?」などといった反対意見が多数飛び出した。


中国IT長者トップ50の資産、前年比13%減

 11月26日、中国長者番付などを発表する胡潤百富(HURUN REPORT)は、今年の中国IT長者トップ50を記した「2008胡潤IT富豪ランキング」を発表。トップは百度のロビン・リー(李彦宏)氏で135億元(約1900億円)、2位はチャットソフト「QQ」で知られる騰訊(テンセント)の馬化騰氏で125億元(約1750億円)と続いた。資産総額100億元を超えるのは、このトップ2、ロビン・リー氏と馬化騰氏のみだ。

 IT長者ベスト50のうち、半数以上がポータルサイトやオンラインゲームを運営するネット企業のトップが占める。現在の中国のインターネット環境は2000年以降に形成されたことから、ネット企業のトップの年齢も若く、IT長者では30代の占める割合が高い。


百度のオンラインショップサービス、商品総数1000万点を突破

 先月のニュースでも紹介した、百度の近年例にないほど力の入った新サービス「有〓(〓は口へんに阿。“ありますよ!”の意)」< http://youa.baidu.com/ >の商品総数が1000万点、売り主は10万人を突破した(つまり売り主1人あたり、平均で100点前後の商品を出品していることになる)。現在も毎日10万点のスピードで、出品総数は増えているという。この「有〓」の勢いの背景には、現在の百度のブランド力と、経済危機によってますます加速する中国でのオンラインショッピング人気がある。

 また11月、百度は個人間取引(C2C)の「有〓」を開始して1カ月も経たぬうちに、百度の次なる一手となるB2Bサービスの投入があることを複数のメディアが報じた。C2Cでアリババ配下の「淘宝網」の競合サービスを立ち上げた百度だが、次はB2Bサービスへの参入でアリババと競合することになりそうだ。


経済危機でオンラインショッピングやオンラインクーポンの利用が加速

 経済危機や不動産・株バブル崩壊で、オンラインショッピングへの利用者が増え、安く買おう、副業で稼ごう、とする動きが加速している。中国最大の個人間取引のオンラインショッピングサイト「淘宝網」は、10月中旬から下旬にかけての1日あたりの取引総額は5億5000万元(約77億円)に達したことを発表。

 今年5月6日時点の3億5000万元(約49億円)や、8月末時点の4億5000万元(約63億円)という数字と比較して、オンラインショッピング市場が急激に普及拡大していることが伺える。特に、地方都市で急速に普及しているという。

 また、ベンチャー企業が比較的に多いことで知られる浙江省杭州市の市政府と、企業間取引のオンラインショッピングサイトの「慧聡網」はネット取引による経済活性化策を発表。金融危機下での中小企業への活性策として、杭州市の企業は慧聡網の1年間高級会員になれば、慧聡網上の商品を3分の2の価格で購入できるという対策を発表した。「慧聡網」では、これにより、3000~4000社の新規利用を見込んでいる。

 中国では、危機時にオンラインショッピング市場が急拡大するのは今回が初めてではない。遡ること外出を誰もがしたくなかったSARS蔓延の時期もまた、オンラインショッピング市場が急拡大している。

 また北京と上海でのオンラインクーポンの閲覧数がはじめて1000万を突破(1008万)、ダウンロード数は123万となった。上海での閲覧数は前期比11.7%増の714万、ダウンロード数は同19.2増の90万、北京での閲覧数は同16%増の294万、ダウンロード数は同21.4%増の33万となった。両都市とも、特にレストランのクーポンが人気。この統計を紹介した中国メディアは、「経済危機下でクーポン券が人気となっている」と分析している。


動画共有サイトは「YOUKU」「TUDOU」「KU6」の3強状態

 金融危機で中国動画共有サイトの米国資本がどうなるかが注目される中、「YOUKU(優酷網)」「TUDOU(土豆網)」「KU6(酷6網)」の3社が「我こそが1番」と健全ぶりをアピールした。

 中国のリサーチ会社「易観国際」による、2008年第3四半期の各中国動画共有サイトの売上高についての調査結果では、KU6(1014万元:14億円強)がYOUKU(936万元:13億円強)やTUDOU(546万元:7500万円強)を押えるという発表をしたが、TUDOUは「今年上半期の広告収入は、ライバルのYOUKUの548万元(約7600万円)の倍となる1129万元(1億6000万円弱)」とアピール。YOUKUは「同四半期において総視聴時間は中国の動画視聴サイト全体の55%を占める」発表し自信を見せた。また発表の中でYOUKUはドラマや映画などの制作会社と提携を結び、さらに合法なコンテンツを拡大していくことを示した。

 ちなみに金融危機以前は「YOUKU」「TUDOU」「KU6」に加え、「六間房」という動画共有サイトも人気で4強状態であったが、六間房は金融危機の煽りを受け、200人のスタッフを60人まで減らしている。


百度の広告掲載で違法業者をトップ掲載し大パッシング

 11月後半、IT系ニュースサイトは百度パッシングで盛り上がった。このきっかけとなったのが、国営放送CCTV(中国中央テレビ)で2日間にわたって放送した、百度の問題を取り上げた番組だ。

 CCTVの番組初日(15日)は、「百度が医療詐欺を行っているサイトのリンクを、1クリックあたりの広告料金が最も高いからという理由で、不良情報にも関わらず検索広告で一番上に載せ、百度はのうのうと広告料金で飯を食っている」と報道、百度の企業倫理について疑問を呈した。

 引き続き2日目(16日)の番組ではCCTV社員が広告依頼主に扮し、百度に広告出稿を電話で打診。百度が必要以上に高い広告出稿料を請求している実態を報道した。ポータルサイトの一部では、関連ニュースをまとめた特設サイトも開設した。

 バッシングが盛り上がる背景として、もともと百度の検索広告システムには広告主からの根強い批判や非難があった状況がある。グーグルのアドワーズ広告と違い、検索結果画面での広告表示と、検索結果の表示スタイルがよく似ていることから、意図せず広告リンクをクリックしやすい。

 また、日本人と比べて中国人は、ライバルがいた場合に、自分を伸ばして相手を上回るというよりも、相手をたたき落として相対的に相手よりも上に立とうとする傾向がある。これが、百度の検索広告においては、企業は自身の企業の1クリックあたりの広告料金を上げると同時に、ライバル企業のリンクを大量クリックして、負担をかけることに専念するという現象につながる。

 そうした行為が常態化し、結果的に百度が一人勝ちしているという現状に対して多くの不満の声がくすぶっていた。そんな中、医療詐欺を行っているサイトのリンクをトップに出し、それを国営テレビがクローズアップして報じたのだから、一気に問題がブレイクしたというわけだ。

 この問題に対して百度は、医療詐欺のサイトの出稿を外した上で謝罪。今回問題となった事件の担当社員を解雇し、事なきを得ようとした。しかし、CEOのロビン・リー(李彦宏)氏が「自身には責任はない」とも取れる対応をしていることから、12月に入ってもまだまだ良くない意味で話題となっている。株価への影響も大きく、CCTVの報道一週間後には株価は報道前の26%下落した。


キラーソフト「QQ」10周年突破

 11月11日、中国のインターネット普及を牽引した立役者であるチャットソフトの「QQ」が、誕生してからまる10年を迎えた。QQを運営する騰訊(テンセント)が10周年記念の特設ページを開設したほか、一部のポータルサイトも同サービスの10周年を祝った。中国では区画整理やオーナーの心境の変化などでショップやレストランで10年以上営業する店は極めて少なく、インターネットにしても中国では21世紀になってから本格普及したことから、中国人にとってQQの10周年は日本人が想像する以上にかなりの偉業に感じていることだろう。

 ところが、QQにとって記念すべき月のはずが、同じQQでも別の話題で盛り上がってしまった。QQはその人気から、多数の互換クライアントソフトが騰訊の公認なしにリリースされているのだが、その中でも、チャット相手のIPアドレスをはじめとしたプライベートな情報を表示してくれる有力な非公認クライアントソフト「彩虹QQ」を、騰訊がサーバー側で排除する対処を施したのだ。

 これに対して、彩虹QQ開発者もその対処をかいくぐる最新版をリリースし徹底抗戦。しかもその開発は、中国大手SNSサイト「51.com」によるもので、開発メンバーは騰訊が強引に免職したばかりのメンバーが集まって作ったものと判明し、さらに話をややこしくした。ネット世論では「彩虹QQは海賊版で非合法。道徳的に良くない」という意見が多数派で、そのせいか否か、彩虹QQの広告主が撤退している。


Firefox中国版がリリース~中国向けの機能追加も

 Firefox中国版がリリースされた。単にメニューその他の表記が中国語化されたFirefoxではなく、中国版ならではの改良が加えられており、最大の特徴は「火狐魔鏡(live margins)」というプラグイン機能だ。Webブラウザを左右に2分割し、右側の幅の広いサイドバーのような画面で、音楽や映像を見たり、株価や天気を調べたりすることができる。

 今回記事を書くにあたって調べてみたが、残念ながら中国のブラウザシェアについての統計調査は確認できなかったのだが、筆者の感覚でいえば、素のままのIEをそのまま利用する人も少なくないが、騰訊社製の人気のチャットソフトQQと同時にインストールされる、同じく騰訊社製のタブブラウザー「TT(テンセントトラベラー)」の利用率が非常に高いように思える。Firefoxは積極的なローカライズで、中国人インターネット利用者の心をつかみ、利用者を大量に増やすことができるか。


ネットカフェで蔓延する海賊版動画コンテンツの現状が明るみに

 リサーチ会社の大度咨詢と中国国内の主要メディアは共同で、「中国インターネットカフェでの動画コンテンツ著作権状況」という調査結果を発表した。

 現在のインターネットカフェ利用者は約1億人弱の9918万人、インターネットカフェのPC端末は1200万台弱。利用者は18~25歳が大部分を占める。利用目的は95.09%がゲーム、79.02%がチャット、75.39%が動画閲覧であり、インターネットカフェが安価な価格で利用できる娯楽場となっていることがわかる。

 動画配信に関しては、インターネットカフェでの動画配信ビジネスに絞ったコンテンツベンダーが数社あるにも関わらず、中国国内外の海賊版映画コンテンツを独自配信するネットカフェが多数を占め、コンテンツベンダーに多大な被害を与えている現状が明るみになった。

 海賊版映画コンテンツの独自配信による著作権ホルダーの被害総額は、8億元(約112億円)と試算している。調査では「ネットカフェ管理人の著作権への意識が希薄」とし、また「著作権違反に対する刑が軽すぎる」という現状を指摘している。


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(2008/12/08)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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