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慶應大学など、43Gbpsの通信回線を利用した実証実験を開始


慶應義塾大学環境情報学部教授(兼政策・メディア研究科委員長)の徳田英幸氏
 慶應義塾大学、NTT(持ち株)、NTT東日本は、43Gbpsの通信回線を利用した広帯域ネットワークの共同実験を10月24日より開始すると発表した。

 この共同実験は、「21世紀知的社会基盤の実現に向けた広帯域ネットワークの共同実験について -映画一本を1秒で送受信できるようにする世界最高速43Gbps実験回線の運用を開始-」という正式名称となる。

 共同実験では、慶應大学の矢上キャンパスと湘南藤沢キャンパスにNTT未来ねっと研究所が開発した「43Gbit/sOTN多重化装置」を設置し、キャンパス間を43Gbps光信号が伝送可能な光中継伝送路で結び、実験が行なわれる。

 実験では、慶應大学が保有するデジタルシネマなどの大容量コンテンツや次世代アプリケーションを利用したデータ伝送を行ない、ネットワークの接続信頼性の検証をはじめ、マルチプロトコルの伝送、ネットワークの監視・制御や長期運用における安定性の評価などが実施されるという。

 実験期間は大きく2期間に分かれており、10月24日から2004年11月まではアプリケーションの開発をはじめ、各種データ収集や検証・評価作業が行なわれる。その後、2005年3月までは得られたデータの解析、取りまとめが行なわれるという。

 今回、NTT未来ねっと研究所が開発した43Gbit/sOTN多重化伝送実験システムは、NTTが提案し標準化された波長多重を用いた光ネットワークの国際標準規格「OTN(Optical Transport Network)」を世界で初めて実装したシステムとなる。OTNでは、43Gbpsシリアル光信号を高品質で伝送するための誤り訂正符号が用いられているのをはじめ、32チャンネルのGbE(ギガビットイーサネット)信号をそのまま収容できる大容量ペイロード部が用意される。また、波長多重光ネットワークの高信頼性を確保するためのオーバーヘッド部分の機能が強化されている。

 このほか、本システムでは長距離高密度波長多重伝送符号となる「CS-RZ符号」、データ伝送時に発生する光波長の歪みを自動補償する独自の分散等化方式、データの入出力時に安定して通信が行なわれる高品質ネットワーク監視制御機能がサポートされる。


NTT未来ねっと研究所長の市川晴久氏
 今回の実験開始に伴い、慶應大学、NTT(持ち株)、NTT東日本の3社は共同で会見を行なった。会見の席上で、慶應義塾大学環境情報学部教授(兼政策・メディア研究科委員長)の徳田英幸氏は、「43Gbpsという高度なネットワークリソースを使いこなすアプリケーション技術の創出を行なっていく」とした上で「従来の情報ネットワークだけではなく、様々な生活を支援してくる社会基盤としてのアーキテクチャを考えていきたい」と語った。

 具体的な例として、徳田氏は慶應大学の湘南藤沢キャンパスを中心に取り組んでいる、文部科学省が進める「21世紀COFプログラム」の「次世代メディア・知的社会基盤プロジェクト」について説明した。ネットワークを利用したe-Learningやe-Governance、e-Spaceといった先端的な実証実験を通じて、単に情報の通信をするネットワークなのではなく、知的社会的基盤アーキテクチャの確立を目指していきたいとしている。

 また今回、43Gbpsという通信速度で実験が行なわれる理由について、NTT未来ねっと研究所長の市川晴久氏は「バックボーンのニーズが年率で2倍、3倍の伸びを示しており、ある意味でムーアの法則を超えた速度」のため、そのニーズに応えるため「技術を極めた数字」である43Gbpsという通信速度で実験を行なうこととなったと説明した。このほか、伝送可能な距離については光を増幅して通信を行なうことで約500kmの距離で通信が可能とした。


共同実験システム構成図 43Gbit/sOTN多重化伝送実験システムについて

共同実験で行なわれる検証作業など

関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.ntt.co.jp/news/news03/0310/031023.html


( 村松健至 )
2003/10/23 21:35

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