TTC(社団法人情報通信技術委員会)・DSL専門委員会スペクトル管理サブワーキンググループ(SWG)は29日、東京都内で第7回会合を開催した。昨年来の懸案となっているADSLの上り帯域拡大方式(以下、EU方式)の取り扱いを巡って激しい議論が繰り広げられたが、結局結論は出ず、議論は再びDSL事業者による事業者間協議に差し戻される結果となった。
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第7回会合の会場風景
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EU方式の取り扱いに関しては前回会合において、DSL事業者によるアドホックな検討グループにおいて検討されることを決定しており、同検討グループでは前回のSWG会合以降3回の会合を開催し、EU方式を利用した回線の距離制限や収容制限などに関する検討を行なった。今回の会合では、その検討グループの議論の結果がまず披露されたが、事業者が3つのグループに分かれ、結局合意には至らなかったことが報告された。
まず最初のグループが「JJ100.01・第2版で示された手続きには何の問題もなく、その手続きに従ってスペクトル適合性を確認すればよい」とするNTT東西、イー・アクセス、TOKAIの4社。
2つ目のグループはアッカ・ネットワークス(ACCA)、ソフトバンクBB(SBB)の2社で、両社はJJ100.01・第2版の手続きには従うものの「現行の手続きだとISDNと同程度の干渉を与える方式のスペクトル適合性が無条件に認められてしまうため、EU方式が既存のADSLユーザーに大きな速度低下をもたらす可能性がある」として、「ISDNを除いた方式間の干渉を計算し、そこから10%程度をマイナスした値を第2の保護判定基準値として定め、EU方式の利用制限はその第2の基準値に従って判定すべき」と主張したという。
さらに第3の意見を主張したのが長野県協同電算(JANIS)。同社も基本的にはJJ100.01・第2版に従うとの意向を示したものの、一方で、「弊社ではADSLを利用したテレビ配信事業を計画しており、そのためには下り帯域で4Mbps程度は必要」と主張し、同社のユーザーの多くを占める線路長3.5kmまでのユーザーがその速度を確保するための前提として、「EU方式を許容できるのは線路長で1.5km程度までだ」と訴えたという。
今回のSWG会合では、この3つのグループの案をもとに激しい議論が繰り広げられ、ACCA、SBBの2社はJANIS案に歩み寄り「とりあえずEU方式については暫定的に線路長1.5kmまでという自主規制を設けてサービスを開始し、それ以上の線路長のユーザーへのサービス提供や保護判定基準値の算出などに関しては引き続きSWGもしくはアドホックな事業者間協議の場において検討を続ける」との妥協案を提出。
しかしNTT東日本、イー・アクセス、TOKAIの3社は、1.5kmという基準に技術的な根拠がないこと、また自主規制という形では同SWGに参加していないDSL事業者に対して決定が拘束力を持たないため、実質的に既存ユーザーの保護が図れない可能性が高いことなどを理由に、JJ100.01・第2版にもとづかない新たな制限事項を設けることに反対し、議論は平行線をたどった。
午前10時に開始した同会合は、途中休憩を挟みつつ最終的に午後9時頃まで続くロングラン会議となったが、最終的な結論は出ず、結局EU方式の取り扱いは再びDSL事業者による協議に差し戻すことが決定。結果として、今回の会議でEU方式の取り扱いに関しては何ら進展がなく、EU方式を利用したADSLサービスの提供開始はさらに大きく遅れる可能性が濃厚となった。
今回の会合の結果を受けて再開される事業者間協議では、ACCA、SBBの2社が提出した妥協案をベースに暫定的な合意を図る可能性が有力と見られるが、早期に結論が出るかどうかはSWG会合においても悲観的な意見が複数社から出ており、状況は引き続き予断を許さないといえるだろう。
関連情報
■URL
TTC「DSL専門委員会スペクトル管理SWGに関する情報」
http://www.ttc.or.jp/j/info/dsl/dsl.html
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( 松林庵洋風 )
2004/01/29 22:08
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