社団法人情報通信技術委員会(TTC)DSL専門委員会スペクトル管理サブワーキンググループ(SWG)の第11回会合が14日に都内で開かれた。TTCが定めるスペクトル管理基準「JJ100.01」の改版に関する議論が引き続き行なわれたが、相変わらず妥協点は見出せておらず、議長を務める池田佳和氏が「場合によっては次回会合において改版を巡り採決を行なう可能性もある」と強行突破をちらつかせる場面も見られた。
● 上り帯域のバンドプランは次回会合で一本化へ議論
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会合前の会場の様子
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今回の会合では、前々回から池田氏が提案している「複数の回線間の干渉を最小限に抑えるため、上り信号と下り信号の使用する周波数帯域をあらかじめバンドプランの形で定める」という案に対する検討が行なわれた。このうち3.75MHz以上の帯域については、ITU-Tで定めるVDSL(G.993.1)のBand Plan Aに従うことで大筋で合意に達したが、3.75MHz以下の帯域については大きく分けて、以下の4案が出された。
1. 従来の上り帯域の範囲を25~552kHzに拡張する
2. 従来の上り帯域の範囲を25~276kHzに拡張する
3. 従来の上り帯域は25~138kHzのままとし、その代わり1.1~3.75MHzの部分について上り帯域としての使用を認める
4. 一切のバンドプランの設定を行なわない
このうち有力と見られるのはイー・アクセス、NTT東西、住友電工、NEC、Centilliumらが支持する1.と、ソフトバンクBB、アッカ・ネットワークス、Conexantらが支持するとともに、長野県協同電算(JANIS)も条件付で支持する2.の両案で、次回会合で最終的に一本化に向けた議論を行なうこととなった。
● 長距離向けADSLの干渉基準、新たな計算モデルの必要性について意見対立
また、以前から問題になっている「長距離向けADSLに関し新たな計算モデルによる干渉基準を設けるべきか」という問題に対し、アッカ・ネットワークスがNTTのメタル線アクセス網の設計基準値に基づく計算結果から「0.4mm・ポリ絶縁ケーブル換算で線路長3.2kmの範囲に99%のユーザーが収まると考えられるため、特に長延化した計算モデルを設定する必要はない」との寄書を提出。これに対しては、NTT東日本が「全国の0.1%といっても10万回線は存在することを考えると、パーセントを議論しても意味がない」、JANISが「弊社では現在NTT回線でADSLを利用するユーザの4割がReachDSLを使用しており、過疎地域を多く抱える県では1%という論理は当てはまらない」とそれぞれ反論し、長延化モデルに関する議論も次回に持ち越しとなった。
それ以外には、保護判定基準値の設定を巡って一定のサービスレベルマスクを導入するかどうか、保護判定基準値算出時の干渉源としてISDNを含めるかどうか、シミュレーションモデルとして現在の0.4mm・ポリ絶縁ケーブル以外にマルチゲージモデル(複数の線種のケーブルが混在した回線モデル)を採用するかどうか──などについても議論が行なわれたが、いずれも合意には至らなかった。
● JJ100.01の改版期限を前に全会合意での決定に黄信号
このように一向に議論は収束する気配を見せない一方で、事業者間合意に定められたJJ100.01の改版期限が近づいていること、また議長の池田氏の任期が次回会合(6月11日を予定)で一旦切れることなどの理由から、本会合の最後では池田氏が「本来このSWG会合は全参加者の合意による決定を原則としているが、このような状況が続くようであれば(2003年11月に定められた)TTCの会議運営方法に従い、表決を行なうことも辞さないということを理解して欲しい」と述べ、次回会合で何としても一定の結論を出したいとの強い決意を示した。
一方でソフトバンクBBなどは、「同SWGの上位組織であるDSL専門委員会で『本SWGではコンセンサス以外の手段による決定を認めない』ことに合意している以上、池田氏の発言は同合意に反しており認められない」と反発する姿勢を示している。上り拡張方式の取り扱い等を巡って混迷を続けてきた同SWGは、いよいよ正念場に差し掛かったといえよう。
関連情報
■URL
TTC DSL専門委員会スペクトル管理SWGに関する情報
http://www.ttc.or.jp/j/info/dsl/dsl.html
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( 松林庵洋風 )
2004/05/17 13:14
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