社団法人情報通信技術委員会(TTC)DSL専門委員会スペクトル管理サブワーキンググループ(SWG)は、4月15日に第10回会合を開催した。スペクトル管理基準を定めた「JJ100.01」の改定については、同SWGに参加するDSL事業者により2月16日に実施された事業者間協議において、今回の会合までに「重要な改定項目について合意する」ことになっていたが、結局、改定項目に関する合意には至らなかった。
● 「上り拡張方式」の判断をめぐって議論が紛糾
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スペクトル適合性確認結果報告書に記載する文面について激しく議論する参加者
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今回の会合では、前回Conexant Systems(旧GlobeSpanVirata)が提案した「SUQ」方式をベースに、上り信号の周波数帯域として25~138kHz、4~5.2MHzの両方を使用するように仕様を改めた「SUQ2」方式をソフトバンクBB(SBB)とConexantが共同で提案。両社はSUQ方式ならびにSUQ2方式の2方式について、「既存のADSLの下り信号には大きな干渉を与えないため、現在、同SWGにおいて取り扱いが問題となっている『上り拡張方式』には該当しない」として、スペクトル適合性確認手続き終了後はすぐに同方式を使用したサービスを行なえるようにすべきだと主張した。
これに対しイー・アクセスは「SUQ、SUQ2の2方式は上りの伝送速度が向上しており、広い意味での『上り拡張方式』に該当する」「どの方式が『上り拡張方式』に該当するかは、事業者間協議の議事録でも『SWG参加企業の主観的判断でオブジェクションを出すことになる』と記載されており、少なくとも我々は両方式を『上り拡張方式』だと判断せざるを得ない」として、この2方式を他の上り拡張方式と同様に扱うべきだと主張。SBBやConexantと真っ向から対立した。
その一方で住友電工、イー・アクセスらは「上り拡張方式の導入にあたって問題になるような『重要な改定項目』は今日までの議論では提案されなかったと判断する」として、「上り拡張システムのスペクトル適合性は現行のJJ100.01第2版に基づき評価を行ない、現在スペクトル適合性確認結果報告書(以下、報告書)に記載されている『上り拡張システムに関して新たな運用制限を設けるか否かについて、DSL事業者会員間で協議中である』という文章を削除し、上り拡張方式を使用したサービスを行なえるようにすべき」との文書を提出した。この文書には他にNTT(持株、東西)やTOKAIらに加え、NEC、Centillium、Broadcomも共同提案者として名前を連ねた。
これにはSBB、Conexant、アッカ・ネットワークス、長野県協同電算(JANIS)らが一斉に反発し、議論は紛糾。結果的に、「すでに事業者間協議は終了しており、報告書の『DSL事業者会員間で協議中』という表現は事実に反するので、事実に合った形に表現を改める」ということで合意した。しかし、今後の新規システムの導入にあたっては「どの方式を『上り拡張方式』と判断するかで見解が分かれている現状では、現在すでにサービスで使用されている方式を除いて、JJ100.01第2版成立以降にスペクトル適合性のクラス分けが行なわれた方式については、サービスへの導入を完全にストップすべき」との意見が出された。これにより、当面の間、上り拡張方式以外も含めた新たなADSL方式によるサービス開始は、完全にストップする可能性が高くなった。
● 上り・下り帯域のバンドプランを定める案は一定の進展
JJ100.01の改定については、今回の会合で参加者からの提案がほぼひと通り出揃ったことから、それらの意見の集約と会員間で意見の分かれる点を表にまとめる作業が行なわれた。そのほか、前回の会合で議長の池田佳和氏が提案した、上り・下りの周波数帯域をあらかじめバンドプランのような形で定める案について、より具体的な検討作業が行なわれるなど一定の進展が見られたが、スペクトル適合性の計算に使用するモデルや干渉源となる方式(特にISDNの取り扱い)などの争点について検討・合意を図る作業は次回以降に持ち越された。
今後は、事業者間協議でJJ100.01改定の期限として合意している6月10日に向けて、今回まとめられた争点ひとつひとつについて具体的な議論を進めることになる。しかし、参加者の中には「拙速的に規格をまとめるよりは、期限を外して納得のいく議論を行なったほうがよい」(Conexant)などという意見を持つ企業もあり、果たして6月10日までに改定作業が完了するかどうかは微妙になってきた。
関連情報
■URL
TTC DSL専門委員会スペクトル管理SWGに関する情報
http://www.ttc.or.jp/j/info/dsl/dsl.html
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( 松林庵洋風 )
2004/04/16 15:26
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