TTC(社団法人情報通信技術委員会)・DSL専門委員会スペクトル管理サブワーキンググループ(SWG)は4日、東京都内で第8回会合を開催した。同会合では、スペクトル管理基準を定める文書である「TTC JJ100.01(第2版)」の改版に向けた新たな提案や検討作業が行なわれた。これは、1月29日に開催された前回会合の後に開かれた事業者間協議の席上において、上り帯域拡張方式(以下、EU方式)を含めた新たな方式の導入に関しては同文書を早期に改版し、その新しい文書に従ってクラス分けを行なうことで合意したことを受けたもの。
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TTCスペクトル管理SWG、第8回会合の会場風景
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EU方式の導入に向けた具体的な検討については、事業者間協議の結果JJ100.01の改版作業が完了するまで一時的に棚上げされた形となった。このことから、今回の会合では前回までのようなEU方式の導入に関する具体的な議論は鳴りを潜め、現在のJJ100.01(第2版)に存在する問題点の指摘と、それに対する改善策の提案といった話が議論の中心となった。
改善点としては大きく分けて「ADSL回線によって提供するサービスモデル」「保護判定基準値を定める際に与干渉源として使われる方式」「被干渉源として保護されるべきシステムとその基準値」「他の回線に影響を与えるDSL方式の利用制限方法」などが挙げられた。
具体的な提案の中では、前回会合においてソフトバンクBB(SBB)とアッカ・ネットワークスの2社が主張した「ISDNを保護判定基準値を定める際の与干渉源から除く」という提案について、長野県協同電算(JANIS)やGloveSpanVirataなどが賛同を表明。
特にJANISは「ISDNはダイオキシンのようなものであり、ISDN相当の汚染源は総量規制すべきだ。他の業界では、環境汚染物質や毒性の強い物質は総量規制される場合がある。農薬でさえ、総量規制される場合がある」と主張した。
利用制限の方法においても、従来行なわれてきた収容制限と線路長制限の2つについて、JANISが「線路長制限は、実際の局面での運用が困難だとの声が事業者間協議の席で出ており、線路長制限は廃止すべき」と主張。代わりに同社は、他回線への干渉の度合いが大きい方式について、事業者ごとの回線数を制限する「総量規制」の導入を提案した。
これ以外にも、保護判定基準値を算出する際に使用されるメタルケーブルのモデルや各DMTトーンのビットローディングなどのパラメータの変更、従来は線路長制限などの設定の際に伝送損失を0.4mmポリ絶縁ケーブルでのケーブル長に換算した距離を使用していたのを改め、伝送損失のdB値そのものを使用するようにすべきではないか、などといった提案が出され、次回以降の会合で詳細な検討が行なわれることとなった。特にケーブルモデルなどのデータに関しては、SWGに参加する各社が持つデータの共有や、ケーブルモデルの見直しなどを目的としたアドホックな検討グループを新たに設置することをNTTが提案、特に反対も無かったことから検討グループの設置が決まった。
今後、同SWGでは、事業者間協議での合意事項である「6月10日頃を目処にJJ100.01の改版作業を完了する」という目標に向けて具体的な作業を行なっていくことになるが、保護判定基準値の設定や保護対象とするシステムの選定を巡っては今回の会合でもすでに激しい議論が見られ、順調に改版作業が進むかは微妙。
また、万が一6月10日までに改版作業が完了しなかった場合の取り扱いについては、イー・アクセスが「その場合は現行のJJ100.01(第2版)に基づき、EU方式等のクラス分けを行なうことを希望する」との提案を行なった。これに対し、SBBが反対の意見を述べるなど、火種は依然くすぶっており、今後の展開については引き続き予断を許さない。
関連情報
■URL
TTC「DSL専門委員会スペクトル管理SWGに関する情報」
http://www.ttc.or.jp/j/info/dsl/dsl.html
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( 松林庵洋風 )
2004/03/05 12:22
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