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総務省、免許不要局の利用料徴収案について「無線LANからは非徴収」


 総務省は、7月22日に意見募集を実施した「電波有効利用政策研究会 最終報告書(案)」に関する説明会を開催した。説明会では総合通信基盤局電波部電波政策課の炭田寛祈企画官が、免許不要局への利用料徴収案に重点を置いて説明を行なった。


無線LANやETCへの利用料徴収案は「事実無根」

総合通信基盤局電波部電波政策課の炭田寛祈企画官
 炭田氏は説明会の冒頭、「本件を総務省の意見募集で公開する前に、一部全国紙の社説などで“無線LANやETCにまで電波利用料を検討している”という記事が掲載された」という経緯を説明。「この報道が産業界に大きなインパクトを与えたが、まったく事実無根の誤報に基づくものだということをきちんと説明したい」と語った。

 電波利用料制度の見直し案に至った背景として、炭田氏は電波開放戦略について説明を行なった。炭田氏は携帯電話の加入者数が2004年6月末現在で8,000万台に達し、うち86%がインターネット接続できるというデータを示した上で「カメラ付き携帯電話も全体の61%まで普及しており、今後は静止画や動画、準動画といったトラフィックが急増するだろう」という予測を示し、いっそうの電波開放が重要になってくると語った。

 携帯電話事業では電子マネーや鍵、コンサートチケットといった新たなサービスが展開されており、総務省でも積極的に伸ばしていきたい分野だという。ただし通信速度の面では未だ光ファイバなどの有線との差は大きく、「高速通信という面では無線LANも重要になってくる」と炭田氏は指摘。携帯電話や無線LANを含めた電波利用関連分野の市場規模は、2013年に約92兆円に達するという予測を示した。


携帯電話の加入者数は8,000万を突破 電波利用関連分野は2013年に約92兆円市場に

電波の利用拡大とブロードバンド化に伴う周波数の確保が急務

周波数確保の必要性
 こうした電波利用の急速な拡大とブロードバンド化により、より大量な周波数を迅速に確保する必要があると炭田氏は説明。音声やメール、静止画の利用が中心である現在の移動体通信速度を384kbps程度とした場合、必要な帯域幅は270MHz程度だが、10年後に動画送信が可能な50Mbpsを実現するためには、約4~5倍の帯域となる1,060MHz~1,380MHzの帯域幅を確保する必要があるという。

 こういった事態を踏まえ、「周波数帯域の抜本的見直しを図るとともに、研究開発によって周波数を倍増していく必要がある」と炭田氏はコメント。移動体通信は前述の通り約270MHz幅を10年後に1,060MHz~1,380MHzまで拡大するとともに、5GHzを中心とした無線LANも現状の160MHz~200MHz幅から10年後には最大740MHzまで拡大していく方針を示した。また、新たな情報家電分野で高品質な映像を安定して伝送することを目的として、30MHz程度の帯域を情報家電用に占有して確保するという方針が、2003年に片山総務大臣から明らかにされているという。

 ただし、電波は有限かつ公共の財産であり、「周波数帯の見直しや技術力だけでは必要な周波数帯を確保できない」と炭田氏は説明。「電波を使っている方々に、ある意味で電波の経済的価値についてコスト的感覚を持ってもらう」ことを目的として電波利用料の見直しが図られているとの経緯を説明した。

 電波の歴史について炭田氏は「戦前は国や地方自治体のものだったが、50年前に民間にも開放された」と説明。また、1985年を境に進み始めた電気通信の自由化を受けて民間の電波利用が促進するにつれ、「有限な国民の電波資源を使っているのであれば、無線局の免許人には費用を負担してもらうべき」との考えにより、日本では1995年から電波利用料制度が導入されたという。

 現行の電波利用料は電波環境の構築・整備を図るための行政経費に充てられており、炭田氏は「マンションに例えるならば、借り賃は無料だが管理費用だけはいただくという位置付け」と説明。具体的には安定な電波利用確保を目的とした電波監視や無線局データベースの運用、地上デジタル放送化に際したアナアナ変換や技術開発費用などに用いられているとした。


IEEE 802.11a/b/gやETC、Bluetoothは徴収案の非対象

電波利用料制度の概要

電波利用料制度の見直し方針案
 現在検討が進められている電波利用料見直しの方針案は、「現行の電波行政費用を効率化する努力」を前提とした上で、「共益費用以外にも研究開発や電波のカバー率向上といった面でも使用すべき」「電波の逼迫の程度や帯域幅なども勘案して算定方針を見直すべき」といった意見が盛り込まれている。また、従来まで電波利用料が不要だった国・地方公共団体や免許不要局についても見直しが図られている。

 免許不要局からの徴収案について炭田氏は「さまざまな報道もあって注目度が高く、この点についてはじっくりと説明したい」とコメント。「免許不要局は一定の帯域を占有する帯域占有型と帯域非占有型の2形態があり、帯域非占有型については徴収の対象になっていない」と語った。

 徴収の非対象となる帯域非占有型の例として炭田氏は、IEEE 802.11b/g、Bluetooth、電子レンジ、ETCなどを例示。さらに5.15~5.25GHzの帯域を占有するIEEE 802.11aについても「衛星やレーダーといった免許局に迷惑をかけず、かつ屋内のみに限定された“すきま利用”のため、徴収案の非対象となる」と語った。

 逆に徴収案の対象となる帯域占有型とは「次世代の情報家電」だという。炭田氏は「次世代情報家電で安定かつ高速な帯域を利用したいというメーカーの要望に応えるもの」と説明。「現行の免許不要局については徴収の非対象と考えてもらってよい」との考えを示した。

 なお、電波料見直しの方針案のうち、免許不要局と国・地方公共団体からの徴収案は肯定論と否定論の両論併記であり、総務省としては中立の立場にあるという。炭田氏は「徴収するとしても共益費用としてではなく、電波の逼迫状況解消のための研究開発や、電波の地域格差を解消するための費用として徴収する案が出されている」と補足した。

 次世代情報家電用として考えられている周波数帯は「中継系の固定マイクロを2010年までに移動してもらい、その帯域で第4世代通信や次世代情報家電に割り当てていく」もの。炭田氏は「最初に情報家電には30MHzを割り当てる予定だったが、メーカーからは『30MHzでは足りない。200MHzくらいあれば端末コストも削減できて品質も向上できる』との要望がある。一方で携帯電話事業者もこの帯域の利用を希望しており、周波数利用の要望が排他的に競合している」とコメント。「免許不要局からの利用料徴収は単にお金が欲しいわけではなく、周波数の取り合いが起こっている現状で独占的に帯域を利用するためにはコスト感覚を持っていただきたいためだ」と語った。

 説明会では「情報家電も占有ではなく共有で電波を利用すればいいのでは」との質問も投げかけられた。炭田氏は「メーカーがそれでいいといってくれれば悩みはなくなるのだが」と前置いた上で、「メーカーでは『IEEE 801.11aではハイビジョンクラスの映像を2チャンネル伝送することは難しく、占有でなければ高画質製品を売り出す場合に品質が確保されないため、クレームがきて製品にならない』という声がある」と説明、帯域占有はあくまでメーカーの希望によるものだとした。


免許不要局の電波利用料徴収に関する扱いについて IEEE 802.11a/b/gなどは徴収案の対象になっていない

電波利用料の構造。共益費用は従来通りで、見直しを図った利用料は研究開発やデジタルデバイド解消が使途として考えられている 国・地方公共団体への利用料徴収案

関連情報

URL
  総務省
  http://www.soumu.go.jp/

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( 甲斐祐樹 )
2004/07/30 20:05

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