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IIJのソリューション本部プロダクト推進部課長を務める近藤学氏
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インターネットイニシアティブ(以下IIJ)は28日、迷惑メール対策の現状とIIJの取り組みに関して記者説明会を開催した。
説明を行なったIIJのソリューション本部プロダクト推進部課長を務める近藤学氏は、現在では北米地域のISPにとってスパムは死活問題となっており、大量のスパム送信によりISP側の対応コストは増大する一方であるという状況を紹介した。現状、ISPやキャリア側はスパム問題に対しては「ほとんど負け」ており、対策が後手後手に回っている状態で、今後はスパムを「出されてしまった側」と「送りつけられた側」の両方で取り組まなければならないとした。
一方、日本ではそれほど深刻な状況ではなかったものの、2004年夏から急激にスパムが増加し、IIJでも処理するスパムやエラーメールの量が一気に10倍に跳ね上がったという。この原因は、ウイルスなどに感染した結果スパム送信のための踏み台とされてしまった、いわゆる「Zombie(ゾンビ)」と呼ばれるマシンが急増していることや、業者のメールアドレス収集が活発になってきていることなどを挙げ、日本でも対策が急務であると述べた。
こうした状況への対策としては、Sender-IDなどメールの送信者を認証する技術スキームの開発や、ISPや通信キャリアによる迷惑メール対策のワーキンググループであるMAAWG(Messaging AntiAbuse WG)などの立ち上げ、米国で成立した迷惑メール対策法であるCAN-SPAM法などがあり、日本でもMAAWG-Jとして10数社のISPやベンダーで活動を開始していることを紹介した。
迷惑メールの送信側の技術は巧妙化しており、大量メール送信型のウイルスの蔓延や、Zombieを踏み台にした迷惑メールの大量送信などのほか、メールを使って口座番号やカード番号などを盗み出そうとする、いわゆるフィッシング(Phising)詐欺も急増しており、こうした問題に対しては業界全体で取り組むとともに、送信者認証技術の導入、アンチスパムフィルターの導入、エンドユーザーへの教育といった点が重要になると語った。
今後のIIJの迷惑メール対策については、米MX Logicの技術を採用した迷惑メール対策サービスの提供を開始するほか、MAAWG-Jなどで国内のISPの連携を強化していく方針だという。迷惑メールの新サービスでは、複数の迷惑メール対策技術によりメールの「スパム度」を判定し、メールのヘッダー部に「X-MX-Spam: final=0.98」(スパム度98%)といったメッセージを追加、ユーザーはその数値をもとに振り分けが可能となるとしている。
また、ISP間の連携については、「どのISPもスパム業者の情報などは共有したいと考えている」(近藤氏)ものの、憲法に明記されている「通信の秘密」を守った上でどのような対策が可能であるのかが難しく、現在は各社でアイディアを出し合っている状態だということで、今後は行政なども含めた業界全体での取り組みが必要だと述べた。
関連情報
■URL
インターネットイニシアティブ
http://www.iij.ad.jp/
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( 三柳英樹 )
2004/09/28 17:53
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