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iBurstの公開実験が実施。ユーザー平均で約1Mbpsのスループットを実測


 iBurstフォーラムは2日、国内で実証実験を行なっているiBurstの公開実験を行なった。公開実験ではiBusrtのスループットやVoIP、ハンドオーバー性能などのデモが示された。


1ユーザーにつき下り最大1Mbpsの無線通信が可能な技術

iBurst実証実験のエリア
 iBurstは、米Arraycommが提供する無線システムを採用したワイヤレスブロードバンド技術。1基地局で下り24Mbps、上り8Mbpsでの通信が可能で、1ユーザーでは下り最大1Mbps、上り最大333kbpsでの通信が可能。すでにオーストラリアではPBA(Personal Broadband Australia)が2004年から、南アフリカ共和国ではWBS(Wireless Business Solutions)が2005年4月1日から、それぞれ商用サービスを開始している。

 日本国内では、iBurstシステムの基地局やクライアント端末などを手がける京セラが総務省から実験局免許を取得、同社の横浜事業所エリアで実証実験を行なっている。実証実験は2GHz帯を使って行なわれ、2006年の商用化を目標に実験が進められている。

 今回iBusrtの公開実験を行なったiBurstフォーラムは、米国Arraycomm、韓国Dewell、日本の京セラ、豪州のPBAによって発足された組織。iBurstを世界に普及するためのサポート活動を目的として創設され、この中で京セラはフォーラムのコアメンバーとしてiBurstの技術的展開とマーケティングを担当する。


iBurstのデスクトップ用モデム イーサネットあるいはUSBでPCと接続する

ノートPC用のモデムカード VoIPのデモ環境

21台のPCによる同時利用で約1Mbpsの平均スループットを実現

京セラ 通信システム機器統括事業部 ワイヤレスブロードバンド事業部の小山克志氏

公開実験の概要
 iBurstの公開実験は、高負荷時のスループット、VoIP、高速移動時のスループットとハンドオーバーという3つの観点から行なわれた。スループットのデモは、会場にある21台のPCで同時に1Mbpsの動画をストリーミングで再生したほか、同様に21台のPCでファイルのダウンロードを行ない、パフォーマンス測定ツール「Chariot」で測定した端末および基地局のスループットが示された。

 基地局のスループットは20.74Mbpsで、21台のPCのスループット平均は約987kbps。公開実験の説明を行なった京セラ 通信システム機器統括事業部 ワイヤレスブロードバンド事業部の小山克志氏は「ほぼ理論値通りの結果が得られた。iBurstシステムは多くのユーザーが同時にアクセスしてもスループットが落ちないシステム」と自信を示した。

 iBurstとCDMA2000 1xEV-DO、PHSのスループット比較も行なわれた。このスループット計測は、iBurstの実証実験エリアである横浜事業所で行なわれたもので、3MBのファイルを同時にダウンロードした結果が比較された。iBurstがほぼ理論値の1Mbpsに近い数値を実現したのに対して、CDMA2000 1xEV-DOは約400kbps、PHSは約90kbpsという結果になった。小山氏は「EV-DOは仕様上では最大2.4Mbpsのシステムだが、実際にはスループットが落ちてしまう。実使用上ではiBurstはEV-DOを上回るパフォーマンス」と補足した。


ストリーミング実証実験の概要 会場内の合計21台のPCで同時に1Mbpsの動画を再生

1ユーザーごとの平均スループットは約1Mbps iBurstとCDMA2000 1xEV-DO、PHSのスループット比較

VoIPプロトコルは最適化を行なっている最中
 VoIPの実験は、現行のiBurstの音声プロトコルと、音声に最適化されたプロトコルでの音声を比較。現行プロトコルでは時おり遅延や瞬断が発生したものの、iBurstではほとんど発生しなかった。また、PC21台でFTPダウンロードを実施、擬似的に作り出した電波が混み合った状態での音声は、現行プロトコルでは遅延や瞬断が大きくなったものの、iBurstでは大きな変化はなく安定した通話が可能だった。


VoIP実証実験の概要 2台のPCで音質を比較

高速移動とハンドオーバーの実証実験
 高速移動の実験は、時速60km、時速100kmでの移動実験に加えて、異なる基地局へ接続を切り替える際のハンドオーバー実験も行なわれた。時速60kmでは、若干の変動はあるが1Mbpsのスループットを維持。時速100kmでは、60kmと比較してスループットの劣化や音声のノイズや音切れが発生したものの、小山氏は「電波状況が悪化してもセッションが切れることなく通話が確立されており、電波状況が改善されたときの再接続が不要」とのメリットを指摘。「今後さらに改善していく必要があり、高速移動に耐えうるシステムの開発に向かって研究開発を実施していく」と付け加えた。

 ハンドオーバーは切り替えの際に一瞬だけ音声が途切れるが、音声通話自体は継続して可能であり、小山氏は「実用上問題のないレベル」とコメント。データレートについても「一瞬の劣化が見られるが、セッションが切れることなくハンドオーバーが実行できている」と説明した。

 公開実験の基地局が利用する帯域幅は5MHzで、基地局は京セラの横浜事業所を中心として約4~5km程度の間隔で4カ所に設置されている。すでに商用サービスを行なっているオーストラリアや南アフリカ共和国でもこの帯域幅や距離はほぼ同じで、商用サービスでもユーザーごと1Mbpsのスループットが実現できているという。


左が60km走行時、右が100km走行時のスループット。100km走行時のほうが劣化が激しい


ハンドオーバーでは一瞬スループットが低下するがすぐに回復


今後1年以内にスループットを2~4Mbpsへ向上

iBurstフォーラムのチェアマンを務めるPBAのジム・クーニーCEO

京セラ 通信システム機器統括事業部 ワイヤレスブロードバンド事業部長の五十里誠氏
 iBurstフォーラムのチェアマンを務めるPBAのジム・クーニー(Jim Cooney)CEOは、「携帯電話の主なアプリケーションが音声通信であり、データは固定網を使うという現在の状況が大きく変わろうとしている」とコメント。「iBurstは他のモバイル技術と比較して、ユーザーが利用できる周波数帯が広い、基地局の数が少なくて済むといった面からコスト効率が高く、シングルセクタの構成で30Mbpsのスループットが実現できる」とした上で、「2005年中にはiBurstでVoIPを完全にサポートする。また、今後1年間でユーザーのスループットを2~4Mbpsへ向上させる」との見通しを示した。

 京セラ 通信システム機器統括事業部 ワイヤレスブロードバンド事業部長の五十里誠氏は、「日本では11月に総務省からiBurstの試験電波発射が認可され、iBurstのパフォーマンスを日本でご確認いただけるようになった」とコメント。総務省が開催するワイヤレスブロードバンド推進研究会にも、京セラがiBurstの技術提案を行なっており、「京セラはiBurstフォーラムのコアメンバーとして、日本のワイヤレスブロードバンドの普及に積極的に取り組み、貢献していきたい」との意欲を示した。

 携帯電話とiBurstの違いについては「データと音声を両方サポートしているという点では、使われ方は似ているとも言える」とした上で、「携帯電話は音声中心のコンセプトで、ネットワーク構成もそれに準じており、データ通信は追加的にサポートしている。iBurstはデータ通信を全面的にサポートしているという点でコンセプトが違う」との違いを示した。

 国内の商用サービスについては「どのような周波数帯が割り当てられるかによる」と明言を避けたが、「すでに利用可能な商用サービスを提供しているため、基地局などは速やかに提供できる」と説明。サービス形態については「我々はiBurstに関してはメーカーである」と断った上で、「回線のホールセールや直接のサービス提供などさまざまな形があるため、一概に申し上げることはできない。料金も定額か従量かはサービスによって異なるだろう」とした。


クーニー氏は「iBurstは効率が高い」と主張 周波数利用効率の高さによるメリット

周波数利用効率のための仕組み WLLと呼ばれるIPベースのネットワークを構築

関連情報

URL
  京セラ
  http://www.kyocera.co.jp/
  iBusrt案内ページ
  http://www.kyocera.co.jp/prdct/telecom/office/iburst/

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( 甲斐祐樹 )
2005/06/02 19:51

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