非営利の出版社を含む国際的業界団体The Association of Learned and Professional Society Publishers(ALPSP)は11日、図書館全体をデジタル化する目的で現在遂行中の「Google Print for Libraries」プロジェクトについて、正式な手続きを踏んで著作権者から許可を得ていない出版物のデジタル化作業を直ちに中止するよう求める抗議文を発表し、サイト上で公開した。
ALPSPは大学の出版局などを含む非営利の出版社、また学術団体、アカデミアなどと協力する出版業界に属する企業から成り立っている国際的な業界団体で、現在会員は30カ国、340社にのぼる。ALPSPに所属してる出版社は世界中の査読論文誌の3分の1から半分を占めており、そのほかにも多くの書籍を出版している。
Google Print for LibrariesはGoogleが2004年12月に発表した大規模プロジェクトで、米ハーバード大学、英オックスフォード大学、米ニューヨーク公立図書館などにある数百万冊の蔵書を全てデジタル化し、検索できるようにするというものだ。
ALPSPはGoogleの2つのプロジェクト「Google Print for Publishers」と「Google Print for Libraries」を明確に区分して論議を展開している。
出版社向けに行なわれている全文デジタル化検索サービスの「Google Print for Publishers」に関しては、ALPSP自体が会員企業に対して参加を呼びかけている。これは、サービスに参加するか否かは各出版社が自由に決めることができ、出版社の確実な許可のもとにデジタル化作業がなされ、著作権侵害がなされていないことからだという。
一方、図書館を丸ごとデジタル化してGoogleから検索できるようにするという「Google Print for Libraries」では、デジタル化する前に各著作権者から十分な許可を得ていないことをALPSPは問題視している。
Google Print for Librariesでは、デジタル化されることを拒否する出版社は自らGoogleに対して申し出なくてはならず、全ての出版物がデジタル化されることがまず前提となっている。「著作権保持者にとってその結果が破壊的なものであろうが有益なものであろうが、そのような規模でコピーを行なうことは明確に著作権法に違反する」とALPSPは指摘する。
ALPSPはこの件に関してGoogleと話し合いを持ったようだが、著作権が未だ効力を持っている出版物のデジタル化作業については、実際的な方法で合意を得るに至っていない。ALPSP側では出版社それぞれと交渉することは実質的に不可能であるにせよ、ALPSPなどの業界団体とまとめてライセンスをするなどの方法は可能だと主張している。
こうした議論の結果として、ALPSPはGoogleに対して許可を得ていない著作物のデジタル化作業を即座に中止し、交渉の席につくよう求めている。
Google Print for Librariesプロジェクトに関しては、これまでにもThe Association of American University PressesやAssociation of American Publishersなど複数の出版団体がGoogleに対して苦情を申し立てている経緯がある。
関連情報
■URL
ALPSPによるニュースリリース(PDF、英文)
http://www.alpsp.org/2005pdfs/Googlestatement.pdf
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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2005/07/12 13:17
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