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TBSがイー・モバイルに100億円の出資。通信と放送の融合を目指す


会見の出席者。左からイー・アクセスの種野晴夫代表取締役社長兼COO、千本倖生代表取締役会長兼CEO、TBSの城所賢一郎専務取締役、原田俊明執行役員
 イー・アクセスの子会社であるイー・モバイルは31日、東京放送(TBS)を割当先とする総額100億円の第三者割当増資による資本提携を行なうと発表した。

 イー・モバイルは、イー・アクセスが総務省に対して割り当てを希望している1.7GHz帯を利用したモバイルブロードバンド事業を企画・運営するための会社。8月15日には、親会社であるイー・アクセスを割当先とする約300億円の第三者割当増資を行なっており、今回はさらに100億円の第三者割当増資をTBSに対して実施する。

 イー・アクセスの千本倖生代表取締役会長兼CEOは、「通信の世界では固定から無線へという流れと、ナローバンドからブロードバンドへという流れが大きく2つあり、この流れがクロスしたモバイルブロードバンドこそ、今後の通信における最大の成長領域だ」とコメント。「さらに放送と通信が相互に連携・補完・統合するという現象が生まれつつあり、通信と放送の統合サービスの期待が大きく高まっている」との考えを示した。

 今回の提携を受けて、イー・モバイルとTBSでは共同で「モバイルブロードバンド・コンテンツ戦略推進委員会(仮)」を設置、放送と通信の統合サービス実現に向けて検討を進める。具体的には1セグメント放送の対応や、モバイルブロードバンド対応コンテンツサービス、放送とデータ通信を連携した番組連動型サービスなどを検討していくという。


放送と通信業界の動向 放送のデジタル化により、これまで別々だった放送と通信の融合が可能に

通信と放送の融合は「ラジオからテレビへの進出以上に大きな変化」

両社で「モバイルブロードバンド・コンテンツ戦略推進委員会(仮)」を設置、放送と通信の統合サービスを検討する
 イー・アクセスの第三者割当増資を引き受けた理由について、TBSの城所賢一郎専務取締役は「TBSもかつてラジオからテレビへ進出したという歴史があるが、(通信と放送の融合という)今回の変化はそれよりも大きいと認識している」とコメント。「携帯電話としてスタートしたモバイルは、将来有力な個人向け携帯情報端末となるだろう。そういうところに映像コンテンツを提供するだけでなく、もう少しデータ的な情報でも関わっていきたい」との考えを示した上で、「モバイル以外に固定のネットにも進出しておきたい」と付け加えた。

 城所氏によれば、イー・アクセスが2000年に事業を立ち上げた際にも、TBSに対して投資の話ががあったものの、「当時は放送局がADSLに直接関わるのは時期尚早との判断でお断りさせていただいた」のだという。城所氏は、「その後もイー・アクセスがどのように発展していくかを陰ながら見させていただいた。今回また声をかけていただき、イー・モバイルとして開始する新事業に最初から関わっておくことで、TBSとしても面白いことができる余地があるのでは」と、第三者割当の理由を説明した。

 千本氏は、「今回の提携はライブドアの堀江社長がきっかけではないか、と言われるが」と前置いた上で、「その影響はゼロではないが、イー・アクセス立ち上げ当初から人的交流をTBSとは築いており、ずっと話を進めていた」とコメント。「TBSは放送事業者の中ではかなりユニークで尊敬できる存在。経営陣との人的なつながりもそうだが、意志決定も他の事業者であればもう少し時間がかかったのではないか」との考えを示し、「新しいことに対して戦略的にリスクを取れるという点で、一緒に働きたいと思わせる存在」とTBSを評した。


イー・モバイルとTBSの資本提携は「放送事業者と通信事業者による日本で初の本格的アライアンス」と自信を示す イー・モバイルが考える3つの事業戦略

TBSは2005年内にVODサービスを予定

イー・モバイルの展開スケジュール
 ブロードバンドモバイル事業の今後の予定も示された。すでに8月22日より1.7GHz帯の新規参入申請受け付けが行なわれており、千本氏は「2005年内には免許が交付されるのではないか」とコメント。2006年度中にデータ通信サービスを開始し、エリア拡大が進んだ上で音声通信サービスを投入。また、TBSとイー・モバイルによる放送と通信の統合サービスも「できるだけ早く具体化したい(千本氏)」としている。

 今回の提携は独占的なものではなく、イー・モバイルは今後もさらに戦略パートナーとのアライアンスを進めていく方針であるほか、TBSでもイー・モバイル以外のキャリアともビジネスを展開していく。今回の第三者割当増資でイー・モバイルは400億円規模の会社となったが、千本氏は資本金1,000億円を今後の目標として掲げた。

 会見に出席したTBSの原田俊明執行役員は、TBSがフジテレビ、テレビ朝日と共同で設立したトレソーラの代表取締役社長も務めているが、トレソーラに関しては「2回の配信実験を終え、引き続き事業性などを含めて検討を進めているが、権利処理の問題などがあり、右から左へリッチコンテンツを出す状況ではない」とコメント。「トレソーラのメンバーではないが、日本テレビもVODサービスを予定している。しばらくの間はどのような事業の進め方が効果があるのかを各社が模索していくことになるのではないか」との考えを示した。

 TBSではモバイル事業以外に、固定向けのサービスも積極的に展開していく方針。原田氏は「固定とモバイルを分けて考えてはいない」という点を強調した上で、「遅れるかもしれないが、2005年内には我々もVODサービスを予定している」と語った。


イー・アクセスとTBSによる提携後のビジネス方針

関連情報

URL
  ニュースリリース(PDF)
  http://www.eaccess.net/press_img/3056_pdf.pdf
  関連記事:トレソーラ、女子アナを迎えたテレビ番組再配信サービスの発表会[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/4093.html

関連記事
イー・モバイル、第3世代携帯電話事業向けのコンセプトモデルを公開(2005/07/13)
イー・アクセス種野社長兼COO、携帯新規参入に向けた事業展開を説明(2005/07/13)


( 甲斐祐樹 )
2005/08/31 19:49

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