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JST、湯川秀樹のノーベル賞受賞論文などを電子アーカイブ化して無料公開


 科学技術振興機構(JST)は、電子アーカイブ化した過去の日本の学術雑誌52誌を27日からサイト「Journal@rchive」で公開する。これまで学術論文は、国会図書館など限られた場所でしか閲覧できなかったが、電子アーカイブ化によりこれらの論文をインターネットで閲覧することが可能となる。利用は無料。


全文をPDFで表示、プリントアウトや全文検索も可能

 学術雑誌52誌に掲載される約30,000件の論文が対象で、1880年発行の東京化学会誌の創刊号や、明治期創刊の5誌など戦前に発行された13誌が今回初めて公開される。また、湯川秀樹や朝永振一郎のノーベル賞受賞論文なども閲覧できる。英文誌が中心だが、日本語で読める文献も公開する。JSTでは、これらの文献の複製と公衆送信について、発行元の各学会から許諾を受けている。

 論文は全文がPDFファイルで表示され、これらをプリントアウトしたりダウンロードすることが可能だ。記事標題や掲載誌名、著者名から論文を検索できるほか、全文検索や引用文献の検索にも対応する。

 公開される雑誌は、日本学術会議の協力を得て組織した電子アーカイブ対象誌選定委員会が選定した。2005年度の対象誌としては74誌が選定されており、3月27日に公開する52誌以外は2006年度末までにアーカイブ化する。2006年度以降も新たに雑誌を選定する考えだ。電子アーカイブ化の予算については、2005年度が6億6,000万円、2006年度が11億円という。

 JSTの沖村憲樹理事長は、電子アーカイブ化を開始した背景について次のように説明する。「海外では学術雑誌を電子化する動きが急速に進み、過去に遡って電子化されていない学術雑誌は国際競争力を失う可能性が高まってきた。こうした情勢を受けて、日本の研究成果をインターネットで世界に公開したいという学会の要望が強かった」。さらに、日本の知的財産を集積・保存するためにも電子アーカイブ化が必要であると訴えた。


【お詫びと訂正】
 記事初出時、「Journal@rchive」で公開する文献の著作権について、「これらの文献の著作権は、発行元の各学会がJSTに譲渡している」と記載しておりましたが、正しくは「JSTでは、これらの文献の複製と公衆送信について、発行元の各学会から許諾を受けている」です。お詫びして訂正いたします。


電子アーカイブの作成方法 JSTの沖村憲樹理事長

Googleが導入している自動スキャンロボットを5月に導入

自動ページめくり機能を搭載する米Kirtas社製のスキャナロボット
 論文のデータ作成については、自動ページめくり機能を搭載する米Kirtas社製のスキャナロボットを5月に導入する予定だ。このロボットは、真空を使ってページを吸い寄せることでダメージを与えずにページをめくり、3枚の鏡の反射を利用してページ表面をデジタルカメラで撮影するという仕組みだ。ハーバード大学などの大規模図書館の蔵書をアーカイブ化して検索可能にするプロジェクトを進める米Googleでも、同じロボットを導入している。

 1時間あたり1,000枚の画像を取り込むことが可能で、1ページあたり300~600dpiの画像解像度を持つという。読み取った画像データは、ロボットに接続されるPCのHDDに保存され、バッチ処理として歪取り、斑点除去、枠取り、コントラスト調整など各種補正を行なう。補正後の画像はTIFF、JPEG、PDF形式に変換できる。編集ソフト上でページのめくり忘れをチェックすることも可能だ。価格は、スキャンロボットとPC、編集ソフトがセットで2,500万円。JSTではこれまで、スタッフが雑誌を裁断してページをスキャンしていた。


ページをめくっているところ 掃除機の原理でページを吸い込むよう。吸い込み口が複数設置されたことで、ページにかかる付加を分散する

撮影面を平らにするため、ページ表面を押さえる機能も搭載 ページの表面を撮影するデジタルカメラがマシンの上部に備わっている

ページを読み込んだ画面。この時点ではページの周りの枠もスキャンされている 編集ソフトのバッチ処理で、歪取り、斑点除去、枠取り、コントラスト調整を実施した後

関連情報

URL
  科学技術振興機構(JST)
  http://www.jst.go.jp/
  ニュースリリース
  http://www.jst.go.jp/pr/info/info271/index.html
  Journal@rchive(3月27日公開)
  http://www.journalarchive.jst.go.jp/

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( 増田 覚 )
2006/03/24 18:59

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