Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

「携帯電話とWi-Fiの融合を目指す」Wi-Fiアライアンスが語る今後の展開


 Wi-Fiアライアンスは26日、メディアブリーフィングを開催した。Wi-Fiアライアンスでマネージングディレクターを務めるフランク・ハンズリック氏らが出席、Wi-Fiの現状や今後の取り組みについて説明した。


11n策定と同時期に認定プログラムを実施。無線LAN設定にも取り組み

Wi-Fiアライアンスでマネージングディレクターを務めるフランク・ハンズリック氏
 ハンズリック氏は初めにWi-Fiアライアンスの組織概要について説明。世界各国270の参加企業からなる非営利組織であり、すでに世界各国で2,500の製品をWi-Fiプログラムで認定したとし、中でも日本は44社がアライアンスに参加、357の認定製品があるなど強力な存在感を持っているとした。

 こうしたWi-Fiプログラムの認定製品はこれまでPC市場が中核をなしていたが、ハンズリック氏は「これからはWi-FiがPC分野から家電分野、電話分野へと飛躍する段階にある」と指摘。2005年度末には1億2,500万の無線LANチップセットが出荷されているが、ホームネットワークの年間出荷実績が2011年には8億6,100万以上に達し、その大部分がWi-Fiであるという米ABI Researchの調査を引用し、「ホームネットワーク市場は大きな成長が見込まれる分野だ」と期待を示した。

 ホームネットワークにおけるWi-Fiの優位性としてハンズリック氏は、数百Mbpsのデータレートで複数のHD(HighDefinision)ストリームも伝送できるIEEE 802.11n規格、QoSのWMM(Wi-Fi Multi Media)、電力管理のWMM Power Saveといった技術を紹介。また、ホームネットワークの相互接続プログラムであるDLNAでも、QoSの分野でWMMが含まれているなど、家電との密接ぶりをアピールした。

 Wi-Fiアライアンスの今後の展開としては、IEEE 802.11n規格の策定と同時期にWi-Fiの認定プログラムを開始する。開始時期は2007年秋を見込んでおり、2006年夏には相互接続性に関する最初のイベントを実施する予定。なお、現在出荷が始まっているIEEE 802.11nドラフトに準拠した製品に関しては、「ドラフトに準拠したという表現は間違いではなく正確な表現」とした上で、「まだ11nの規格が確定していない段階では正式規格の準拠とは言えず、相互接続性も確認できていない」と指摘。「個人的には、ドラフトの意味が一般に理解されず、正式版へアップグレードできると期待する人もいるのではないか」との懸念を示した。

 2006年第3四半期には、無線LANネットワークの設定方法をサポートする「Simple Config(コードネーム)」を発表予定。機器の物理ボタンやソフトウェアからの設定など複数の設定方法を用意し、Wi-Fiプログラムとして認定していく。さらにWi-Fiと携帯電話ネットワークの間でシームレスな環境を構築する「Wi-Fi Mobile Convergence(WMC)」にも積極的に取り組んでいくとした。


Wi-FiはPC市場から家電・携帯電話市場へ IEEE 802.11n向け認定プログラムは2007年秋を予定。「新幹線並みのスピードで作業を進めている」とハンズリック氏

無線LANの簡単設定を実現するための「Simple Config」 Wi-Fiと携帯電話を融合する「Wi-Fi Mobile Convergence(WMC)」

携帯電話とWi-Fiの融合を目指す「WMC」認定プログラムも策定中

NECの伊藤正史氏
 ハンズリック氏が触れたWMCに関して、NEC モバイルターミナル事業部の伊藤正史氏は詳細を説明。これまでWi-Fiの中核であったPCは省電力性や大きさなどで移動時の利用は敷居が高かったが、携帯電話と無線LANが融合することでいつでもどこでもネットワークに接続できる環境を実現できるとし、「ローカル環境ではWi-Fi、公衆網は携帯電話と好きな回線が使える利便性の高さを提供できる」とのメリットを示した。

 現状ではWMCの市場はさほど大きくはないが、伊藤氏は2010年に北米における収益が16億ドル市場へと成長し、WMCのサービス加入者も2,900万人に達するという米国の調査データを披露。全世界でも5,500万人の加入者が見込まれているとし、「携帯電話メーカーとしてもこの市場には期待している」と語った。

 無線LAN機能を搭載したNECの携帯電話「N900iL」など、FMCを実現するための端末はすでに市場に投入されているが、伊藤氏は「これらの製品で相互接続性が保たれているかというとそうではない」と指摘。Wi-Fiとして相互接続プログラムを進めていくとともに、携帯電話というこれまで無線LANと関わりの薄かった業界に対しての働きかけも積極的に進めていくとした。

 すでにWi-FiアライアンスではWMCのタスクグループを設立、WMCの認定プログラムを開始するとのアナウンスを発表済み。また、WMCでは家庭内や企業などで利用形態が異なることが予想されるため、さまざまな利用シーンを想定した上で認定プログラムの策定を進める。さらにこれまで無線LANのみだったネットワークに対し、携帯電話という異なるネットワークも考慮すべく、無線特性の確認や携帯電話と無線LANの干渉などを確認する活動も進めていくとした。

 モバイル環境ではWiMAXや4Gといった高速な通信技術も登場しているが、伊藤氏は「設置が容易である、導入コストが安価、事業者免許の必要ない周波数帯で利用できるなど他にはない特性を持っている」とWi-Fiのメリットを主張。「WMCは今後発展しているワイヤレス社会のファーストステップになると確信している」と語った。


WMCの市場予測 WMC端末は相互接続性が課題

WMCタスクグループの活動 タスクグループ活動の軌跡

WMCはFMCを経てIPですべてが統合される時代へ WMC端末の方向性

関連情報

URL
  Wi-Fi Alliance(英文)
  http://www.wi-fi.org/

関連記事
DLNAの認証プログラムがスタート。無線LAN機器はWi-Fi認証も必要に(2005/09/28)
「IEEE 802.11nはなぜ速い?」アセロスが技術説明会を開催(2006/03/27)


( 甲斐祐樹 )
2006/04/26 15:27

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.