動画共有サイト「YouTube」上に、テレビ番組などの映像作品が権利者に無断で掲載されている件について、米YouTubeの幹部と日本音楽著作権協会(JASRAC)など23団体が6日、都内で会談を行なった。著作権侵害防止について協議した結果、YouTubeは、動画のアップロード画面において、日本語で違法なコンテンツのアップロードを警告する文章を近日中に表記することを約束した。
協議には、YouTube側からChad Hurley CEOとSteven Chen CTO、および同社の親会社である米GoogleのDavid Eum VicePresidentが出席。今後はYouTubeとGoogleが協力して、技術的に著作権問題を解決する考えも示された。
これまでJASRACやNHKをはじめとする国内の著作権団体やテレビ局ら23団体は、YouTubeに対して、技術的手段や工夫により著作権侵害行為を未然に防ぐシステムを実現するように求める要請文を12月4日付で送付。YouTubeは、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき、権利者などの指摘により違法投稿を削除する、いわゆる“Notice & Take Down”の仕組みを採用しているが、23団体が送付した要請文では、この仕組みが大量の違法アップロードにより機能していないと指摘していた。
要請文ではさらに、暫定措置として、1)YouTubeのトップページに、日本語で「投稿者本人が著作権を有せず、権利者の許諾も得ないまま映像作品を投稿またはアップロードする行為は違法であり、民事・刑事上の責任を問われる場合があること」と表示すること、2)今後アップロードするユーザーに対して、氏名・住所などを登録させること、3)JASRACらの要請により6月以降に削除した動画をアップロードしたユーザーのアカウントを無効化し、今後投稿できないようにすること──を求めていた。
● 著作権侵害行為の抜本的な防止には至らず
|
左から日本音楽著作権協会 常任理事 菅原瑞夫氏、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター 広報委員 山崎博司氏と同センター運営委員 松武秀樹氏、日本民間放送連盟 IPR専門部会委員 植井理行氏
|
6日の協議後に開催された記者会見では、23団体側の担当者から、暫定措置の1)に相当する、日本語による違法アップロードへの警告が早期に実現されることが発表された。ただし、違法アップロードを未然に防ぐシステムについては開発段階で、当面は「権利者側が人海戦術で違法アップロードをチェックしてYouTube側に通報する“Notice & Take Down”を継続せざるを得ない」(会見に出席した日本民間放送連盟 IPR専門部会委員 植井理行氏)ため、抜本的な対策が実現されるまでには、まだ時間がかかる見込みだ。
23団体がYouTubeに送付した要請文における暫定措置の2)についてはYouTube側が難色を示しているほか、3)に関しては、現状のYouTubeの仕組みとして、違法アップロードを3回まで実行したユーザーに対して、以後動画をアップロードできないようにユーザーアカウントを無効とすることで対策しているという。
今回の協議についてJASRAC常任理事の菅原瑞夫氏は、「今日、初めてYouTubeの幹部と話した。最初はそれこそ“殴り合い”のようになるかと思ったが、お互い前向きな議論をする第一歩として良い感触を得た」と評価したが、「中身については今後さらに詰める必要がある」として、今後の協議の必要性を訴えた。
また、YouTubeと23団体など国内の著作権団体やテレビ局などが、ビジネスとしてYouTubeを発展させる可能性については、「YouTubeに違法アップロードが存在する段階では、ビジネスを展開することはない」(菅原氏)という。さらに、協議を重ねても著作権侵害の状況が改善しない場合には、法的措置も検討するとしている。今後の協議のスケジュールは未定だが、Googleの日本法人を窓口としてYouTube側と連絡をとり続ける予定だ。
関連情報
■URL
YouTube(英文)
http://www.youtube.com/
■関連記事
・ YouTubeの統合でGoogleのランキングが上昇、ネットレイティングス調査(2006/12/18)
・ JASRACら23法人、YouTubeトップページに日本語による注意文の掲載など要請(2006/12/05)
・ JASRACやテレビ局などが共同でYouTubeに削除要請、約3万ファイルを削除(2006/10/20)
( 増田 覚 )
2007/02/06 21:29
- ページの先頭へ-
|