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「DTIは“ユビキタスハブ”になる」フリービット石田社長が戦略語る


 フリービットが7日に開催した決算説明会において、TOBにより子会社化したドリーム・トレイン・インターネット(DTI)について、石田宏樹代表取締役社長が今後の戦略を語った。DTIをインターネット接続のための単純なISPではなく、“ユビキタスハブ”と再定義し、全く新しいサービスを展開していくという。


ISPとは何なのか、ビジョンを再定義

フリービットの石田宏樹代表取締役社長

フリービットとDTIが進める「Phoenix One Project」のロードマップ

PCの“デジタルハブ”構想と、DTIによるISPの“ユビキタスハブ”構想
 石田社長はまず、8月23日にDTIのTOBが完了した時点で、フリービットとDTIによるシナジー戦略を進めるための「Phoenix One Project」を開始したとし、1)9月からの3カ月間で行なう「応急処置フェーズ」、2)10月頃から2008年3月頃までの「戦略的変革フェーズ」、3)2008年4月以降の「成長と新生フェーズ」──という3段階のフェーズによるロードマップを紹介した。

 最初の「応急処置フェーズ」では、DTIのサービスを「いかにシンプルにしていくか」がキーワードになるという。石田社長は、現在各社が提供しているISPのサービスについて、光ファイバやADSLのプランが複雑さを増している点を挙げ、家庭においてどれを選べばいいかわからなくなっていると指摘。応急処置フェーズでは、「まずプロバイダーとは何なのか、ISPとは何なのかというビジョンを再定義し、サービスプランをシンプル化、価格競争力のあるプランを導入する」。

 このビジョンとは、ISPを“ユビキタスハブ”として再定義しようという構想に基づくものだ。既存の接続サービスなく、あらゆる機器や場所からアクセスできる環境を、フリービットが開発したオーバーレイネットワーク技術「Emotion Link」を使って実現していくと説明する。

 これは、Appleのスティーブ・ジョブズ氏が2001年に、PCを“デジタルハブ”と再定義したことになぞらえたものだ。デジタルハブとは、デジタルカメラや携帯音楽プレーヤーなど、さまざまなデジタルデバイスを結ぶハブの役割をPCに設定したものだが、フリービットではこれをネットワーク空間にまで拡張していくという。

 「例えば、DTIのアカウントがあれば、デジタルカメラで撮影した画像を自分の家のPCで取り込んで、おばあちゃんの家のプリンタで印刷する。あるいはホームセキュリティ機器で映した映像を、外から携帯電話でチェックするなど、どんな機器でも自分の環境にアクセスしてシームレスに使えるようになる。ブログの容量が足りなければ、自分のPCのHDD容量をサーバー容量に足して拡張できる。みなさんの考えている環境を拡張していくのが、DTIの新しい役割になる」。

 なお、これらを実現する新サービスは、既存ユーザーの料金を変えることなく、提供できるよう考えているという。


接続サービスと、メールなどの付加サービスを分離へ

2008年3月までのフェーズで実施する、サービスの分離案
 続く「戦略的変革フェーズ」での最大のポイントは、「ISPの約款を切り離す」ことだ。石田社長は、現在ISPの成長が鈍化していることについて、「ダイヤルアップの時代は1人1アカウント購入してもらえた。しかしブロードバンドになると、ファミリーに1回線・1アカウントでいい」という、非常に単純な理由だと説明する。

 そこでDTIでは、1世帯に1回線だけしか見込めないインターネット接続の部分と、その上で提供する1人1アカウント必要なサービスの約款を切り離していく。「そこで接続サービスに依存しない新しいサービスを展開していく。例えばユビキタスのメールの部分を切り離す」。石田社長は、接続サービスは日本の世帯数しかマーケットが見込めないが、ユビキタスのサービスは1人1アカウント以上契約してもらえる可能性もあるため、非常に大きなマーケットに成長する見込みがあるとした。

 具体的な新サービスについては10月に発表する予定だが、あらゆる機器でいつでもどこからでも使えるユビキタスなメールサービス「Semantiq Mail」、トリプルプレイに続く、ブロードバンド回線の第4の用途としての「ホームセキュリティサービス」、Emotion Linkを使い、サーバーとクライアントの違いをなくした全く新しい個人向けサービス「Semantiq Node」などを挙げ、これらを統合したものを“ドリームハブ”と表現した。なお、これらの新サービスも既存の料金で使えるようになるという。

 最後の「成長と新生フェーズ」では、買収したISPをDTIに統合するとともに、「全く新しいユビキタスプロダクトも出す」。これについては「単純なサービスではない」と述べるにとどまり、詳しい説明はなかったが、「フリービットの取締役に、なぜ出井伸之氏に入っていただいたのか」ということへの回答になるもののようだ。

 さらに、DTIにもあと1名か2名の社外取締役を招聘する準備を進めているという。その名前を見れば「DTIが本当にユビキタスの方向に向かうという強い意志を感じてもらえるのではないか」とした。


関連情報

URL
  決算説明会資料(PDF)
  http://www.freebit.com/ir/pdf/2007-09-07_5.pdf

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( 永沢 茂 )
2007/09/07 20:20

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