| 米Microsoftは1日、サンフランシスコの自然言語検索ベンチャーであるPowersetを買収することで最終合意に達したと発表した。
 
 Powersetは、自然言語検索技術を使って、キーワードによる検索から脱却し、ユーザーが望む検索結果を表示できるようにすることを目指す野心的なベンチャーだ。同社は、PARC(元Xeroxパロアルト研究所)から自然言語検索に関する技術のライセンスを受け、多くの科学者やサーチエンジンエンジニアを雇用し、注目を集めている。
 
 MicrosoftはPowersetを買収した理由が、その人材にあることを指摘している。今回の買収を発表したLive Searchの公式ブログでは、Powersetの共同創業者でCTOであるBarney Pell氏を、「ビジョナリーであり、とてつもないエバンジェリスト」と賞賛した。さらに、Tim Converse、Chad Walters、Scott Prevost、Lorenzo Thione、Ron Kaplanの名前を挙げ、こうした検索技術エンジニアと計算言語学者たちの魅力を挙げた。
 
 Powersetは、買収後も引き続きサンフランシスコにオフィスを置き、組織構造も変更されることはないという。Microsoftでは、すでに自社の研究機関であるMicrosoft Researchで自然言語技術の研究を進めており、Powersetの技術を補い合う関係にあると見ている。また、MicrosoftがサンフランシスコのPowersetチームに優秀なエンジニアを派遣することも検討している。
 
 
Powersetは買収に応じた理由として、現状のままではスケールアップが難しかったことを指摘した。PowersetはWikipediaに限定した検索エンジンのベータ版を公開しており、これは高い評価を受けた。しかし、この技術をWeb全体にまでスケールアップしていくためには、膨大な資本、エンジニアリング、計算リソースを必要とし、単なるスタートアップ企業では間に合わせることができないという。Microsoftが買収したことによって、Web全体にまでスケールアップしたサーチエンジンを、これまででは考えられないスピードで成し遂げることができるとPowersetでは期待している。| 
 |  | Powersetは現在、Wikipediaに限定した検索エンジンのベータ版を公開している |  
 MicrosoftもPowersetも、今後数カ月以内に自然言語検索技術を使ったWeb検索に関して、何らかの発表を行うことを示唆している。Powerset側も、数カ月以内に同社の技術をMicrosoft Live Searchに組み込むことに関して「たくさんの発表を行う」計画について述べている。
 
 Powersetが現在公開しているベータ版では、Wikipediaの検索に関して、GoogleやYahoo!とは全く違った検索体験を提供し、話題を集めた。もしこれらの技術をWeb検索に用いることができるとすれば、それはMicrosoftの最大のライバルであるGoogleにとって大きな脅威となるだろう。
 
 その一方で、Powersetの技術はGoogleと比較して、多大な計算リソースが必要になると推測されている。そのため、どれほどのスピードでWeb検索に利用できるのかが注目されるところだ。また、現在では英語にしか対応していないPowersetが、世界中の多くの言語にどの程度の早さで対応することが可能なのかも注目される。
 関連情報
 
 ■URL
 Microsoft Live Search公式ブログの該当記事(英文)
 http://blogs.msdn.com/livesearch/archive/2008/07/01/powerset-joins-live-search.aspx
 Powerset公式ブログの該当記事(英文)
 http://www.powerset.com/blog/articles/2008/07/01/microsoft-to-acquire-powerset
 Powerset(英文)
 http://www.powerset.com/
 
 ■関連記事
 ・ 人工知能サーチエンジン「Powerset」、一部技術を初めて一般公開(2007/09/18)
 ・ 米Powerset、自然言語処理によるWikipedia検索の公開ベータテスト(2008/05/13)
 
 
 
 
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2008/07/02 12:36
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