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総務省で「.日本」の検討開始、レジストリを2009年8月に決定


「インターネット基盤委員会」第11回会合
 総務省は10日、情報通信審議会の情報通信政策部会に設置した「インターネット基盤委員会」の第11回会合を開催した。国別トップレベルドメイン名(ccTLD)に日本語を用いる「.日本」あるいは「.日本国」の導入に向けて、その文字列やレジストリの選定方法、運用の基本ルールなどについて検討し、2009年6月に答申としてとりまとめる。

 インターネット基盤委員会は、インターネットの今後の発展や高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する政策について検討する場。日本語ccTLDの導入に向けた検討もこれに該当するとして、2002年7月以来、久しぶりの開催となった。

 アルファベットや英数字以外の文字(非ASCII文字)によるドメイン名(国際化ドメイン名:IDN)をccTLDでも利用できるようにすること(IDN-ccTLD)については、2008年6月からICANNにおいて検討を開始。早ければ2009年第2四半期にも導入可能になる見込みだという。「.日本」の検討は、これを見据えたものとなる。


「.日本」を担うレジストリの条件や選定方法を検討

 第11回会合ではまず、事務局である総務省のデータ通信課から検討の方向性について説明があった。1)新ドメインの名称、2)新ドメインの管理運営者(レジストリ)の定め方、3)管理運営業務の適性さの確保の方法――の3点が検討項目だ。

 1)については、漢字のほか、ひらがなやカタカタによる表記も合わせると、形式上は10種類程度の候補があるが、「.日本」または「.日本国」になる見込みだ。これは、ccTLDに使う文字列は、国連の「地理学的名称の標準化のための技術参照マニュアル」の国名リストに基づくという原則があるためだ。同リストによれば、日本のFormal Nameが「日本国」、Short Nameが「日本」となっている。

 2)ではまず、技術的能力や経営基盤など、レジストリに求められる条件をまとめる。これについては、ICANNの政府諮問委員会(GAC)がccTLDの条件として定めている原則(GAC原則)に変更はないとしており、それを満たした上でさらにどこまで精査あるいは条件を追加するのかということになる。また、条件に合致するレジストリ候補が複数ある場合、どのような手法で比較審査するか、条件の重み付けや選定は誰が行うかなども考える。

 さらに、例えば「soumu.日本」と「soumu.jp」の関係についてのルールも検討する。これは、「soumu.jp」の登録者だけが「soumu.日本」を登録できるのか、もしくは一定期間内は優先して登録できるのか、それとも全く別のccTLDとして完全に先願主義をとるのかということだ。

 3)については、選定したレジストリが、定めた条件と異なる方向で提供するサービスを展開してしまった場合、どう対処するのかということだ。


2009年8月に「.日本」のレジストリを決定

 インターネット基盤委員会は今後、おおむね月1回のペースで会合を開き、2009年4月に委員会としての報告をとりまとる。その後、パブリックコメントを経て、6月に情報通信審議会の答申として決定する。

 一方、ICANNではIDN-ccTLDの実装計画を進めており、2009年3月にメキシコで開催する会議でとりまとめる予定。それを受けて4月以降、IDN-ccTLDのレジストリの受け付けを開始する見込みだ。

 なお、現行の「.jp」では、日本レジストリサービス(JPRS)を、総務省が日本政府としてICANNに推薦する関係となっている。「.jp」のレジストリ業務を委任するのに適した業者だとして推薦するとともに、業務の適切性について監視している。裏返せば、日本のccTLDのレジストリになるには総務省の推薦が必要になるわけであり、これは「.日本」でも同様だ。

 総務省が示したスケジュール案によると、2009年6月の答申とりまとめを受けて「.日本」のレジストリについての審査を開始。8月にレジストリを決定し、それをICANNに対して推薦する流れになる。


少なくとも32カ国がIDN-ccTLDの導入を予定

 インターネット基盤委員会の会合では、同委員会のオブザーバーとして参加しているJPRSの堀田博文氏から、ICANNにおける議論の進捗状況についても報告があった。堀田氏は、11月2日から7日までカイロで開かれていたICANNの会議に出席してきたばかりだという。

 堀田氏によると、このカイロ会議では特に大きな進展や決定があったわけではないが、新たなgTLDの導入とIDN-ccTLDの導入という2つのテーマに話題が集中したという。

 また、IDN-ccTLDの導入に関してICANNが各国に対して調査した結果も報告されたとして、その結果を紹介した。現在252種類あるccTLDのうち、58カ国から回答があり、32カ国がここ1年でのIDN-ccTLD導入を検討しているとの回答だったという。

 このほか、ICANNで議論されているgTLD導入との関連でも、地理的名称の扱いも話題に上ったとしている。これは、例えば日本の地名が新gTLDとして申請された際の対応ポリシーについての問題だ。日本を表すような他の言語の言葉がgTLDとして申請された場合など、すべて把握して対処するのが難しいのではないかという問題もあるという。

 インターネット基盤委員会の検討事項としては、前述の3項目のほか、ICANNで並行して行われているgTLDの議論の進展も踏まえ、上記のような問題についても必要性が生じた場合は議論していく。


検討はあくまで民間主導でとの声も

 インターネット基盤委員会の主査を務める慶應義塾大学の村井純氏は会合の冒頭、あいさつを述べた。現行の「.jp」について、ccTLDの管理体制の正式な枠組みの中でICANNと契約を締結したのはオーストラリアに次いで2番目に早かったことや、運用もスムーズに行われている点を挙げ、日本のccTLDが「いい見本になっており、規模から言っても大きな責任を持っている」と指摘。IDN-ccTLDとなる「.日本」の導入に際しても、「国内のマーケットを考える必要もあるが、世界の中で見本となるよう考えていく必要がある」とコメントした。

 会合ではこのほか、各委員やオブザーバーから、今後検討を進めるにあたっての要望点などが述べられた。インターネットガバナンスがこれまで民間主導で進められてきた経緯を踏まえ、「.日本」の検討についても、とりまとめは総務省が事務局となって行うにしても、議論はあくまでも民間主導で進めるべきとの声もあった。一方、従来の民間主導のやり方が大きな成果を上げてきたことを評価しながらも、現在では社会インフラとしての役割も担っているという観点から、検討プロセスにおける政府と民間のバランスの重要性を指摘する声もあった。

 これに対して主査の村井氏は「総務省の審議会だからといって民間主導の議論が進められないというわけではない」との認識を示し、どのようにしてオープンなプロセスで議論を進めていくかも重要だと説明した。

 この点に関しては総務省自身も留意しているらしく、会合の冒頭であいさつした総務省通信基盤局長の桜井俊氏は「ドメイン名は、ICANNをトップとするプライベートセクターによって管理されてきたのも事実。政府として難しい立ち位置にあると思う」とコメントしていた。


「.日本」レジストリには外資規制も必要?

 このほか、オブザーバーとして参加する読売新聞東京本社の馬野耕至氏からは、レジストリの外資規制の是非についても指摘があった。馬野氏は、米McAfeeによる調査において、トケラウ諸島のccTLDである「.tk」に登録されているドメイン名の10%以上が詐欺に使われているとの結果が出たことを紹介。これは、同国の政府がレジストリ業務を委託した海外の業者が、ビジネス拡大のためにきちんと審査せずにドメイン名の登録を受け付けているためだという。

 JPRSの堀田氏によると、「.jp」については日本国内の業者が運用するとの方針だが、すべてのccTLDが必ずしも同様ではないという。ccTLDの主権はその国に与えられているものの、その国の政府が他国の企業にレジストリ業務を任せるのは可能であり、各国で自主的に決定できるとしている。

 馬野氏は、「.日本」のレジストリの選定基準としては、国内の業者に限定するのか、あるいは平等に機会を与えるという観点から外国企業も対象とするのかなど、国家の安全の視点からも選定基準を設けることも検討課題になるのではないかとした。

 これに対して、総務省データ通信課では、レジストリの選定基準として検討項目に挙げたうちの経営基盤に関する部分に含まれるのではないかとの考えを示した。


関連情報

URL
  インターネット基盤委員会(第11回)開催案内
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/kaisai/081110_1.html

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( 永沢 茂 )
2008/11/11 13:40

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