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Google「マイマップ」の哲学は、ユーザー投稿情報を共有すること

「役立つ世界地図をユーザーとともに作る」

 グーグルは2日、報道関係者向けの定例会見において、「Google マップ」に比較的最近追加したユーザーコンテンツとの連携機能を紹介するとともに、同社の地図プロダクトにおけるユーザーコンテンツの重要性を説明した。


世界の情報をカバーするために、ユーザーコンテンツが必要

地図製品プロダクトマネージャーの河合敬一氏
 グーグルで地図製品のプロダクトマネージャーを務める河合敬一氏はまず、Googleのおなじみの社是を引き合いに出しながら、特に地図プロダクトの役割について「『地理的に』世界中の情報を整理して、世界中の人がアクセスできて、使えるようにすること」と説明。また、同社が地図に注力する理由としては、台風情報や旅行記などはもちろんのこと、ユーザーが撮影した写真や動画に至るまで、世の中にある情報の多くは特定の場所に関連付けられるとし、それらを収集・整理するのに地図が重要だとした。

 現在、Googleが用意している地図は、詳細な街路地図が世界150カ国、高精細の衛星・航空画像が陸地の30%、人口の50%をカバーしているという。このほか、「Google マップ」の「ストリートビュー」による路上視点での360度パノラマ写真や、地球だけでなく宇宙の画像も整備・公開している。

 しかし、こうした地図プロダクトを通じて提供するコンテンツや情報をGoogleだけで集めることは不可能だとして、「最も広範囲で役に立つ世界地図を提供するために、ユーザーとともに作っていきたい」とした。

 同社ソフトウェア・エンジニアの南野朋之氏は、ユーザーによる情報の力がいかに重要であるかを示す世界地図を紹介した。

 まず、サービス開始当初の「Google マップ」にマッピングされていた情報の分布を、黒地に緑色の点でプロットした世界地図を示したが、北米や欧州、日本、アジアの一部、オーストラリアの一部などは陸地の形が浮かび上がるほどに点があるものの、南米やアフリカなどはほとんど情報がない状態だったという。これは、電話帳などからの情報しかなかったためだが、その数年後、「Google マップ」の「マイマップ」にプロットされた情報や、「Google Earth」用のKMLファイルなど、場所に関するユーザーによる情報が増えた。それらをマッピングすると、世界中の陸地の形が浮かび上がるほどになったのはもちろん、船や航空機の経路のGPS情報も現れ、現在では海の上にも情報がマッピングされているという。


ソフトウェア・エンジニアの南野朋之氏。サービス開始当初の「Google マップ」にマッピングされていた情報の分布 現在、Googleが提供している情報と、ユーザーによる情報を合わせた分布状況。これらのほとんどが「Google マップ」で検索できるという

「ストリートビュー」に「Panoramio」との連携機能を追加

「ストリートビュー」によるノートルダム大聖堂の写真

「Panoramio」からピックアップしたノートルダム大聖堂の写真
 こうしたユーザーによるコンテンツをGoogleの地図プロダクトから利用できるようにしている事例として、河合氏は、「Google マップ」の「ストリートビュー」に最近追加した「Panoramio」との連携機能を上げた。

 「Panoramio」は、Googleが運営する風景専門の写真共有サイト。アマチュアやプロが撮影した世界の観光地や風光明媚な場所の風景が多数アップロードされている。投稿された写真は、画像データに付加されたGPS情報や、ユーザーが画像をアップロードする際に地図上でプロットした位置情報を持っている。なお、投稿された画像に対しては公開する前に目視によるチェックを行っているとしており、風景写真の趣旨に合致しないものや、プロットした位置と明らかに異なる場所と思われるものは公開しないという。

 さらに「Panoramio」ではコメント数や閲覧数などにより評価される仕組みをがあり、一定の評価が付くと「Google Earth」や「Google マップ」のレイヤーで作品が紹介されるようになっている。「それが励みになり、さまざまな方からすばらしい作品が寄せられ、質の高いコンテンツがどんどん生まれるサイクルになっている」(河合氏)。

 2月27日から、「Panoramio」の写真が「ストリートビュー」と連動して表示されるようになった。「ストリートビュー」で表示した場所と同じ場所の写真を自動的に抽出し、「みんなの写真」(英語版では「User Photos」)としてリストアップする。同一の場所でも、視点の方向に応じて、画像解析により建物などの角度の異なる写真のマッチングも行っているという。

 「ストリートビュー」で公開されているパノラマ写真は撮影時期を選ぶことはできないが、「Panoramio」の写真も参照できるようにしたことで、季節や時刻、天候が異なる写真や過去の風景もあわせて閲覧できるようになり、「そこにいる経験がより豊かになる」(河合氏)。

 なお、「Panoramio」の写真が表示されるのは、「ストリートビュー」の対応エリアで、該当する場所の写真が「Panoramio」でも公開されている場合に限る。「Panoramio」には、やはり観光地などの写真が多いという。また、「ストリートビュー」の画像が削除されている場所に対しては、「Panoramio」の写真も表示されないとしている。

 ここで使われている画像マッチングの要素技術はすでに「Panoramio」で公開されており、今回、それを「ストリートビュー」の画像にも適用したかたちになる。「Panoramio」にある「周辺を見回す」(英語版では「Look around」)という機能として実装されていたもので、ユーザーが撮影した写真同士を比較し、建物などの対象物に対していろいろな角度の写真を見られるようになっている。写真の緯度・経度情報に加えて、画像解析により、同一の対象物が写真のどこに写っているかを解析することでマッチングさせているという。


地図をなんとなく見ながら情報と出会う機能、東京オフィス発で開発

ガイドブックをめくるような感覚で情報を探せる「このエリアを散策」機能
 定例会見ではもう1つ、Googleの東京オフィスで開発したというユーザーコンテンツ関連の機能を紹介した。これは、「Google マップ」で検索した際にページ左側に表示される「このエリアを散策」(英語版では「Explore this area」)というリンクだ。

 これをクリックすることで、そのエリアに関連する「Panoramio」の「写真」や「YouTube」の「動画」、人気の観光スポットの情報を表示する「スポット」、ユーザーがお気に入りの店舗などを登録した「マイマップ」への各リンクを表示してくれる。地図をスクロールさせると、その範囲に応じて表示される項目もダイナミックに変わる。

 河合氏は、この機能を東京オフィスで開発した背景について「日本らしいものを作りたいといつも思っていた」と振り返る。「アクティブに情報を探すことももちろんあるが、実はコンテンツや情報に出会うことや気付くことが大事なのではないか。特定の知りたいことがなくても、なんとなくガイドブックや写真集をめくるような感覚で、街の情報との出会いをどうするか考えていた」という。

 「このエリアを散策」機能でリストアップされる「スポット」は、2月11日から追加表示したものだ。例えば日本語表示であれば「ウィキペディア」日本語版に項目のあるスポットをベースに、その地域についてユーザーがどれだけコンテンツを作っているかという尺度により上位の項目を抽出・表示している。具体的には、投稿写真や動画の件数、「マイマップ」に立てられたピンの件数、「Google Earth」用に公開されているKMLファイルの件数など、さまざまなソースに基づき自動算出しているという。そのため、東京オフィスの機能ではあるが、同様のアルゴリズムで他言語のサービスでも適用されている。

 このほか、2008年12月18日から表示していた項目として「街の達人」がある。これは、「人」を切り口にして、その地域について詳しい情報を作り出している人を表示するもの。具体的には、「Google マップ」のレビューや「マイマップ」への投稿数の多いユーザーを4人表示している。ここに表示されることが、そうした情報を投稿する励みにもなっているとしている。

 これら東京オフィス発の機能は、南野氏が手がけたものだという。「これまでの『Google マップ』はサーチ機能に重きを置いていたが、もう少しブラウズできるものを作りたかった。アジアのユーザーは、サーチするよりもブラウスすることの方が好きだという調査結果もある。『マイマップ』には面白い情報があるが、うまく見つける方法がなかったため、それを改善するために開発した」と述べた。


Googleの地図プロダクトは脇役、ユーザーコンテンツで世界地図を

Googleにおける地図プロダクトとユーザーコンテンツの位置付け
 河合氏は、Googleの地図プロダクトにおけるユーザーコンテンツの位置付けとして、まず同社が「マイマップ」や「Panoramio」、3Dモデル作成ソフト「SketchUp」といったツールを提供することで、ユーザーがコンテンツを作成して簡単に公開できるよう支援。その上で、「ユーザーに公開してもらったコンテンツや情報を収集・整理し、写真などを関連付けて検索できるようにし、コンテンツを発見するお手伝いすることがGoogleの得意なところ。Googleはあくまでも情報を整理してお見せする立場であり、ツールを提供するという脇役。ユーザーがコンテンツを作ることが、最終的に世界の地図を作ることにつながる」とした。

 会見では、Googleの各サービスで「公開」のレベルを統一したほうがいいのではないかとの質問も挙がった。これについて河合氏は、「サービスによって、根本となる哲学が異なるところがあるのかもしれない」と回答した。

 すなわち、メールなどは個人の情報ということで、そもそも外部と共有することを前提にしていないが、「『マイマップ』は、まさに地図に情報を書き込んでもらって共有するためのサービスですよ、というのが根本から存在している。基本的にサービス開始からの思いは変わらない」とし、そのようなサービスであることを伝えてきてはいるとした。ただし、意図しない情報が公開されるトラブルが発生していることについては、「ちょうどいいバランスを見つけなければいけないと思っている。デフォルト設定を変えることなのか、わかりやすい説明を作ることなのか、やり方はたくさんあると思う。今がベストだとは思わないし、常に議論している」と述べた。


関連情報

URL
  Google マップ
  http://maps.google.co.jp/

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( 永沢 茂 )
2009/03/02 20:36

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