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「Googleブック検索」和解案リストに、まだ売ってる本が大量に?

日本の中小出版社団体が反対表明

 中小出版社98社で構成する出版流通対策協議会(流対協)は18日、「Googleブック検索」の和解案から離脱することを表明した文書を、米Googleおよび同社日本法人と、ニューヨーク地裁連邦判事宛てに送付したと発表した。絶版本をデジタル化して公開するといううたい文句とは異なり、和解案のリストには、まだ市販されている書籍が大量に含まれていると指摘している。

 この和解案は、米Googleと米国の作家・出版社団体などの間で合意されたもの。米国の「Googleブック検索」において、図書館との提携でスキャンした書籍については、まだ著作権の保護期間内であっても、絶版または市販されていない書籍であれば閲覧できるようにする。一方で、これにより得られた収益の63%を権利者に支払うこととしている。

 さらに「ベルヌ条約」の加盟国で出版された書籍も米国で著作権が発生するため、各国の著作権者にも影響し、著作権者らは9月4日までに和解への参加・不参加の意志表示をするよう求められている。特に申請がなければ参加するものとみなされ、「Googleブック検索」に含まれることになる。


出版流通対策協議会会長の高須次郎氏(向かって右)
 18日に会見した流対協会長の高須次郎氏によると、同団体の会員出版社にアンケート調査したところ、約5000点の刊行物のうち約90%が市販されていない書籍として和解案でリスト化されており、また、10%以上はすでにデジタル化されていたことがわかったという。高須氏は、図書館の蔵書をデジタル化して公開するGoogleのプロジェクトの対象は絶版本だったはずだとして、これら市販されている書籍は和解案でも対象外であると指摘。「市販中の本の権利は出版社が守る責任がある」として、広く出版社に対して、和解リストの確認と市販中の書籍の削除要請を行うよう呼び掛けた。

 市販されている書籍が絶版とみなされているのは、和解案においては、米国の伝統的なルートで販売されているかどうかを判断基準としているためだという。つまり、書店で販売されていないとGoogleが判断したものが絶版扱いとなり、米国外の書籍が不当に差別されるとしている。

 ただし、流対協や著作権者がこれまでに和解管理人とのやりとりの中で、市販されているという基準について、米国の書店ルートだけでなく、Amazon.comや日本のAmazon.co.jpも含めるよう拡大するとの回答を得ているという。

 流対協では、和解案からの離脱を表明するとともに、連邦地裁に対しては和解案を認めないよう要請している。また、日本における「Googleブック検索」の提携図書館である慶應義塾大学に対して、Googleに提出した蔵書リストと、今後の提供予定について開示するよう求める質問状を送り、市販されている書籍がデジタル化されることがないかチェックする考えだ。

 なお、流対協では、絶版かどうかの判断を行うのは、日本では出版社だと説明しているが、日本ではその基準はうやむやになっているのが実情のようだ。はっきりと「絶版」という出版社はほとんどなく、「品切れ」として扱うのが慣行だという。昨今の出版不況の中では、重刷の見込みがないまま「品切れ」扱いとされる書籍も多数出てくるものと思われ、「Googleブック検索」で公開される方を望む作者も出てきてもおかしくはない。この和解案への対応をきっかけに、日本の出版社では今後、こうした慣行から見直す動きに発展することも考えられる。


関連情報

URL
  出版流通対策協議会
  http://ryuutai.com/
  Googleブック検索訴訟の和解管理サイト
  http://www.googlebooksettlement.com/

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( 永沢 茂 )
2009/05/18 20:40

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