5分でわかるブロックチェーン講座
中国の国家ブロックチェーン施策が急加速、一方、Facebook主導のLibraには大きな計画変更が…
2020年4月21日 10:31
1. 中国政府のブロックチェーン国家プロジェクトが加速
今週(4月14日から4月20日までの1週間)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、中国の話題が賑わせた。
ブロックチェーンを国家戦略として位置付けている中国政府は4月13日、標準化委員会の設立を発表した。中華人民共和国工業情報化部の副大臣や中央銀行のメンバーを中心に、幹部は全て官僚で構成されるという。委員会には71人のメンバーが在籍しており、テンセントやファーウェイといった民間企業からも選出されている。
この標準化委員会と直接的な関わりは不明確なものの、中国政府は中央銀行の発行するデジタル人民元(DC/EP)の実用化を急速に加速させている。東南部の蘇州市で、DC/EPを使った最初の実用化プロジェクトを5月に開始すると発表したのだ。
まずは、公務員の受け取る交通費手当をDC/EPで支給するという。DC/EPを受け取るには専用のウォレットアプリが必要となり、決済アプリのアリペイを運営するアリババグループも開発に携わっている。利用者は、銀行口座を通してDC/EPを受け取るとしているが、将来的には決済アプリでも使用できるようになるだろう。
中国では、国家運営のブロックチェーンプラットフォーム「Blockchain-based Service Network(BSN)」のローンチも間近に迫っている。BSNの計画は2019年10月に明らかとなったが、半年後の今月25日にはローンチされる予定となっており、プロジェクトの優先度が伺える。
BSN自体はブロックチェーンではなく、様々なブロックチェーンを組み合わせて使用できるプラットフォームだ。従って、イーサリアムやEOSといったパブリックチェーンも統合予定とされている。BSNの存在意義は、ブロックチェーンを使った開発コストを劇的に削減する点にあるという。民間でブロックチェーンが普及することにより、中国政府は国家として次の覇権を取りにいく構えなのだろう。
2. Facebook主導のLibra(リブラ)が大きく計画変更
Libraを運営するLibra協会は、各国の法規制に遵守した形でプロジェクトを進めるべく、2つの大きな計画変更を決断している。1つ目はステーブルコインLibraの担保形式について。2つ目はネットワークの運営方式についてだ。
価格変動の少ない暗号資産であるステーブルコインとして誕生したLibraは、これまで経済の安定している国の通貨(米ドル、ユーロ、ポンド、円)を担保に発行される計画だった。しかし、各国における法規制の影響から担保資産に対して個別にLibraを発行する形式に変更される。
具体的には、米ドルを担保資産とする「LibraUSD 」、ユーロを担保資産とする「LibraEUR」、英ポンドを担保資産とする「LibraGBP」、星(シンガポール)ドルを担保資産とする「LibraSGD」だ。将来的には、これら全てをまとめる形で従来のLibraを発行できるよう進めていくという。
また、Libraネットワークの運営方式に関して、当初採用していたパーミッションレスのオープンな設計では法規制を遵守することができないと指摘されていた。今回の変更に伴い、透明性を維持しつつも完全なパーミッションレスではなくなる可能性を示唆している。
参照ソース
フェイスブック、リブラの新たな計画書を公開
[CoinPost]
FacebookのLibra計画に変更、単一法定通貨のステーブルコイン発行を優先
[CoinChoice]
Facebook's Libra was always destined to fail
[Decrypt]
3. a16zが暗号資産・ブロックチェーン特化の2号ファンドを組成
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、大手ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)が、暗号資産・ブロックチェーン領域に特化した新たなファンドを組成するという。
a16zは2018年にも、「a16z crypto」と呼ばれる3.5億ドルの1号ファンドを組成している。今回の2号ファンドは4.5億ドル規模に達するといい、4月中にはクローズされる予定だ。
1号ファンドでは、CoinbaseやMakerDAO、Dapper、DFINITY、dY/dX、Polychain Capitalといった、現在のフロントリーダーたちが名を連ねる。a16zからの出資を勝ち取ることでその後の成長確度が劇的に上がることは、暗号資産・ブロックチェーン領域に限らず周知の事実だろう。
今回の2号ファンドにより、累計で7億ドルもの資金を暗号資産・ブロックチェーン領域へ投下することになる。新型コロナウイルスによる昨今の状況においても、新興産業およびスタートアップへの投資を継続する姿勢は、a16zを象徴している。
a16zは、「a16z Crypto Startup School」と称したインキュベーション事業も展開している。無料で参加可能かつ出資を強要しない点が話題となったのは記憶に新しい。
参照ソース
大手VC「a16z」、4.5億ドル規模の仮想通貨関連ファンドを新たに組成へ=FT
[CoinPost]
Andreessen Horowitz Looks to Raise $450M For a Second Crypto Fund
[Finance Magnates]
編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください