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金融庁がDeFiに関する活動報告書を公開、民間との連携不足を課題視

Uniswapがガス代削減へOptimismに対応

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

金融庁がDeFiに関する活動報告書を公開

 金融庁がDeFiに関するこれまでの活動をまとめた報告書を公開した。2019年9月に公表された初版に続く第二版となっており、特に業界団体との取り組みを積極的に行なってきたことを強調している。

 金融庁はDeFiに対して、「仲介者がいないP2P型の金融取引を実現する可能性があり、様々な機会や便益をもたらし得る一方で、既存規制の執行力が失われるリスクも考えられる」との見解を示した。

 その上で、従来型の規制アプローチではもはやDeFiには適用できないとの認識も持っているとし、このままでは規制目標の達成は困難であるとの考えを明確にしている。現状の課題としては、民間部門との連携が不足している点をあげており、各ステークホルダーが各自の役割と責務を認識することでイノベーティブな環境整備を行なっていくという。

 民間部門との連携することの重要性については、先週紹介した各国DeFi団体による連合「国際分散型金融連盟(Global DeFi Coalition、GDC)」からも説かれている。ブロックチェーン領域の中でもDeFiは特に専門性が高く、当局だけでは取り組みに限界があるのだ。

 今週は金融庁がDeFiをどのように捉えているのかについて、報告書の内容から考察していきたい。

参照ソース


    イノベーション促進に向けた金融庁の取組み
    [金融庁]

UniswapがOptimismへ対応

 DEX最大手Uniswapが、最新版となるv3でイーサリアムのセカンドレイヤーOptimismへ対応した。現時点ではアルファ版での実装となっており、今後予定されている正式版の公開を待って対応を完了させる計画だという。

 イーサリアムは、トランザクションの処理性能に限界があることを意味するスケーラビリティ問題を抱えている。この問題を解決するのがセカンドレイヤーと呼ばれるプロジェクトだ。その最有力がOptimismであり、今回、イーサリアム上で最も多くのトランザクションを発生させているUniswapがこれに対応した形だ。

 Uniswapは、v3がローンチされた5月時点でOptimismへの対応計画を明らかにしていた。イーサリアムネットワークを混雑させているUniswapがセカンドレイヤーに対応したことで、ほかのDeFiサービスやNFTプロジェクトも少なからずポジティブな影響を受けることになるだろう。

参照ソース


    Uniswap on Optimism (Alpha launch)!
    [Uniswap]

今週の「なぜ」金融庁のDeFi活動報告書はなぜ重要か

 今週は金融庁の活動報告書やUniswapのOptimism対応に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

DeFi規制を整備するには民間との連携が不可欠
DeFi規制の対象は「何に」なるのか
ワイオミング州では人ではなくプログラム(コード)に規制をかけている

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

業界団体との取り組み

 金融庁は、FinTechなどの金融領域に関わる最新のビジネス動向キャッチアップするために、2018年7月にFinTech Innovation Hubを設置している。今回の報告書は、本グループにおける活動を紹介するものであり、DeFiのほかにもFinTechやブロックチェーンに関する取り組みが掲載されている。

 DeFiに関しては、主に「Blockchain Governance Initiative Network(BGIN)」「 Blockchain Global Governance Conference(BG2C)」「ブロックチェーン国際共同研究」の3団体との取り組みが紹介された。

 いずれも国際的な活動に重きを置く業界団体であり、金融庁としてはこれらの団体の活動に相乗りした形となっており、やはりDeFiを当局主導で整備することは困難だと言えるだろう。

DeFiガバナンスへの見解

 今回の報告書を含め、DeFiに対する金融庁の見解の中で特に意識されているのがガバナンスだ。DeFiのように管理者不在の場合、規制を整備したところでルールを適用させる対象になるはずの管理者(企業や個人)が存在しない。

 この点については、クリプトママこと米国証券取引委員会(SEC)理事のHester Peirce氏も言及しており、これまでの規制を180度変える必要があるかもしれないとの見解を示していた。

 一方でPeirce氏は、「管理者を排除することは、ユーザーのデータが乱用されたり独禁法に抵触するTechGiantへの依存を解消することに繋がります。DeFiはユーザーヘ安全な代替手段を提供することができるでしょう。」との見解を示している。

ワイオミング州のDAO法案

 少し毛色は変わるが、今週は米ワイオミング州で法案可決後初となるDAO法人の設立が発表された。ワイオミング州では、4月にDAOを法人として認める法案が可決されている。

 ワイオミング州の考え方としては、DeFiのような管理者が存在しない分散型組織(DAO)に既存規制を適用することはもはや不可能であり、そうであるならば新たな法律を作るべきだといったところだ。

 DAO法案の特徴は、DAOを制御するためのスマートコントラクトと定款を一致させる点にある。つまり、スマートコントラクトの開発者を規制するのではなく、スマートコントラクトをDAOのルールと定義することで定款と連動させているのだ。

 これは管理者不在の分散型組織におけるガバナンスとしては理に適っていると感じている。日本におけるDeFi規制の整備の際にも、こういった時代に即した考え方がある程度必要になってくるのではないだろうか。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami