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ドルチェ&ガッバーナがNFT活用の限定コミュニティを設立、入会権にNFTを使用

ウクライナDAOが発足

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

ドルチェ&ガッバーナ、限定NFTコミュニティ「DGFamily」設立へ

 イタリアの人気ファッションブランドDolce&Gabbanaが、独自のNFTを活用した限定コミュニティ「DGFamily」を設立した。コミュニティには、特定のNFTを購入することで入会できる。

 DGFamilyは、メタバース上の新たなファッション体験をユーザーへ提供することを目的に設立された。入会することで、限定NFTだけでなく現実世界のファッションアイテムをもらうこともできるという。

 入会するには、DGFamily Boxesという特定のNFTを購入する必要がある。DGFamily Boxesは、3種類のレアリティに分類されており、それぞれ提供されるグッズに違いがあるようだ。

 最もレアリティの高いNFTを購入したユーザーには、リアルイベントへの招待券が送られてくるという。NFT・メタバースと現実世界を融合した最先端の取り組みであると言えるだろう。

 昨年からのNFTの盛り上がりを受け、最近は単なる売買にとどまらず、NFTを会員権として利用するなどの取り組みが増えてきた。今週は、NFTとコミュニティの関係性について考察したい。

参照ソース

ウクライナDAOが発足

 ロシアによるウクライナへの侵攻を受けて、支援金を集めるために自律分散型組織(DAO)が発足した。「ウクライナDAO」と呼ばれ、すでに3億円近い支援金が集められている。

 ウクライナDAOは、プーチン大統領に批判的な見解を示す政治活動家のNadya Tolokonnikova氏が主導。Trippy LabsとPleasrDAOのメンバーと共に設立した。PleasrDAOは、特定のNFTを購入するために組成された投資型DAOだ。

 ウクライナDAOでは、イーサリアム(ETH)で資金を調達し、資金提供者にはウクライナの国旗をNFT化したデジタルデータが付与される。NFTは計1万枚が生成される予定であり、現在までに1800名以上が参加している。

 昨今は、特定の目的を果たすためにDAOが設立されるケースが増えている。PleasrDAOのように、特定のNFTを購入するためのDAOも一般的となっており、合衆国憲法の原画を競り落とすために設立されたConstitutionDAOも有名だ。

 スマートコントラクトによって契約や実行が全て制御されるため、いちいち法人設立せずとも資金や人材を集めることができる。

参照ソース


    Pussy Riot Founder, Trippy Labs, PleasrDAO Members Launch 'Ukraine DAO'
    [Decrypt

今週の「なぜ」コミュニティにとってNFTはなぜ重要か

 今週はDolce&Gabbanaの限定コミュニティやウクライナDAOに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

NFTを単なる売買対象にとどめず、デジタル上の権利として使用するケースが増加
NFTを使えば煩雑な本人確認プロセスを省くことができる
NFTを使ってリアルとバーチャルの融合が可能

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

NFTはデジタル上の権利として使用される

 NFTと言えば高値で売れるというイメージが先行し、単なる売買ばかりが目立ってしまっている。もちろん、コピーできない(厳密にはコピーしたことが容易に検証できる)デジタルデータにアート的な価値を見出す側面も理解できる。

 一方で、昨今はNFTをデジタル上の権利として認識し、会員権のような使い方をする取り組みが増えてきた。今回のDolce&Gabbanaの例がまさに該当する。

 一般的な事例としては、特定のNFTを持っているユーザーだけが参加できるコミュニティ、ウェビナー、イベントなどが挙げられる。それらに参加するにはNFTを購入し、主催者側はウォレットアドレスを検証することで本当にNFTを持っているかどうかを簡単に確認可能だ。

Web3.0時代の検証方法

 「NFTを持っている人」というステータスを確認するのは、ブロックチェーンの仕組み上非常に簡単に行うことができる。ウォレットアドレスとNFTのIDを検証するだけで済むからだ。

 従来の方法でユーザーのステータスを確認する場合、例えばメールアドレスとパスワードを登録させて、メールアドレスが本人のものかどうか確認するために認証メールを送る必要があった。NFTを使えば、煩雑なプロセスを省略できるだけでなく、身元が特定されうる情報(メールアドレスなど)を不必要に提供しなくてよくなる。

 今回のDolce&Gabbanaの取り組みは詳細が明らかにされていないものの、コミュニティへの入会時に個人情報を取得せず、ウォレットアドレスだけで入会が完結することになるだろう。

リアルとバーチャルの融合

 今回のDolce&Gabbanaの例で秀逸だったのは、リアルとバーチャルをうまく融合させている点にある。用意された3つのレアリティを持つNFTでは、それぞれ特典が異なっており、高いレアリティを持つNFTほどリアルでの体験が重視されているように感じる。それぞれの特定は以下の通りだ。

1.The Black Box

  • 現物とNFTなどのデジタル上の特典
  • デジタル上のイベントへの参加券
  • 限定スワッグパック

2.The Gold Box

  • The Black Boxの特典
  • より希少性が高い現物とNFTなどのデジタル上の特典
  • リアルイベントへの参加券
  • プレミアム商品と限定スニーカー

3.The Platinum Box

  • The Gold Boxの特典
  • 最も希少性が高い現物とNFTなどのデジタル上の特典
  • 特別なリアルイベントへの参加券

 この点からは、どこまでメタバースが普及しようとも、現時点で人間が最も価値を感じるのはリアルでの体験だと、Dolce&Gabbanaは考えていると言えるだろう。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami